第12話 アンダーグラウンドマーケット

おおよそ第4種知性体以上になると好戦性自体は失わないものの、そうそう戦闘をすることはない。


戦闘して破壊し合うことの無駄さ加減はよく知っているからだ。


「すっげー、なんでこれがあんの?宇宙中で売り切れていてぜーんぜーん手に入らないんだよ。」


クミンやエアリアや他の歌姫達のフィギュアがたくさんある。


「イミテーション?」


第57星域ラウミ大水星人と第542星域のシヒグズ衛星人だ。


これらの星とは条約が結ばれていない。


実はこの様な密入星人はかなり以前からエデンにいる。


アンダーグラウンドマーケット、AGMとかアグマって呼ばれている。


その名の通りエデンの地面の下にあって非合法地帯だ。


ああ、地下街じゃなくてその下、密入星人が何千年もかけて勝手に掘り返して作った空洞にできた異星人街だ。


連合はAGMにはよほどの事がなければ介入しない。


先に干渉を始めた帝国に任せているところがあり、「水清ければ魚棲まず」と言う事でAGMを無くさなければならないとは考えてはいない。


エデンの治安部隊となるMPO=マッポ(Artificial Human maintaining public order)も同じ考えだ。


まあ法整備に力を入れたのは連合だから法を遵守させることには厳格かもしれない。


派手すぎて眩いぐらいのイルミネーションやサイン。


行き交う異形の異星人達で賑わっている。


異星人によってはエデン人よりも古くからここにいてここが地元って奴もいる。


「異星人種ってだけでいまはもうすっかりエデン人やしのう。」


すずめみたいな羽が生えたミジュグ星人が言う。


「家も店もすぐそこなのに何度も職質されたわ。」


「どこから来たって俺はエデン生まれだっての。あひゃあひゃ。」


上の前歯が全然ない。


ラウミ大水星人は店の奥にあるミラーを開いてシヒグズ衛星人に見せる。


姿見が扉の様になっていてその奥には部屋がありたくさんのフィギュアが並べられている。


「すっげーっ、これ全部コピー品なの?」


「A級のコピー品、ほとんど本物と同じ。ライセンスがないだけだよ。」


「ここになくても、言ってくれれば集めてこれるよ?」


これらは人造人間(Artificial Human)アーフの生成に使用される4Dスキャナーと生成AI 4Dプリンター(組み合わせて生成クリエイターGenerate Creator GCと呼ばれる)の流用で製造されている。


本来はアーフの生成以外での使用は連合法で禁じられている。


オリジナルはそんなに高額ではないのだけれど流通量が少ないのでプレミアがついていい値段になっている。


ここでオリジナルの半分以下の値段なのは買いに来る誰もがコピー品だってわかっているからだ。


店主が小さな箱からスティック状のものを出して口に咥えた。


「ふーん何それ?ハイライト?そんなの今でもあるんだ?買う人いるの?」


「いや、さすがにこれを買って吸おうって奴はもう200年ぐらい見ていない。完全に仕入れを失敗した。仕方がないから自分で吸う事にしたんだ。」


「大丈夫?死なない?」


「死なねーよ。デマだよ、デマ。こんなもんで死ぬ様な奴は何にもしなくても死ぬのさ。」


まあそれでも密閉された地下のAGM で煙を上げて吸うもんじゃないな。


シヒグズ衛星人は肩をすくめて店を出て行く。


「ふん、ひやかしか。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る