第10話 イベントコロニー

シュッツグル星に新造されたイベントコロニー「フヌア」の巨大なホールに歓声が響いている。


「フヌア」はコスモツアーの開催が決定して120日程で建設された。


衛星軌道上では地上と違って整地や基礎工事が要らないし重力が軽微なので資材さえあれば建造物はたちまちのうちに組み立てられる。


さらに資材はシュッツグル星の衛星の一つチュヂェで製造出来る。


チュヂェはエデンで言うところの月に当たる。


チュヂェには大気が無く重力は月の半分程度。


組成は鉄とケイ素と炭素が殆んどだがニッケルや金、ダイヤモンドも産出する。


コロニーはカーボンとセラミックで構成されているのでとても都合がいい。


チュヂェからコロニー設置位置まで移動させることは大気圏が無く重力も弱いのでかなり容易だ。


多くの稼働AI端末とアーフが作ってくれる。


出来上がったコロニーの形状は球体、その完成した姿は4つ目の月の様に見える。


コスモツアーで楽しめるのは音楽だけではない。


映像、スポーツ、絵画や彫刻、工芸、演劇や料理やスイーツなどあらゆるコンテンツが集まる。


この頃は実際はプロって言うか職業って言うのは存在しない。


好きな者が自由に活動しているだけで営利活動ではない。


と言って承認欲求を満たすためって言うわけでもない。


みんながそれぞれ、どこまで何ができるのかを持て余した時間を使って、追求心、好奇心を満たすためにとことん作りこんだ作品がここぞとばかりに披露される。


宇宙中からたくさんのクリエイターやそのファンが集う。


さすがはリアルライブ、配信とはまた違って人々の熱気がステージ上まで上がってくる。


リアリエとクミンが歌い踊る。


2人の声と踊りが奇妙にシンクロしてそれぞれの特徴を相乗効果で面白くしている。


なんだか胸が熱くなって来るだろ?


「シン、泣いているの?」


「アキもね。」


「キミちゃん帝王様も?」


アグウグ星人は殆んどがキミちゃん帝王様が分裂して増殖した種族なので恋とか愛とかは意味がわからないはずなのに。


「遠い古代にはわしの種族も雌雄があって繁殖していたはず。その頃の記憶が遺伝子の奥深くに刻まれておる。エアリアとクミンの歌声はその遠い記憶を揺り動かすのじゃ。」


巨大なホールを取り囲む様にステージを拡大投影するモニターがありその下にはたくさんのブースがあっていろいろな作品の展示や販売がされている。


たくさんの演者のイベントグッズも販売されている。


歌ったり踊ったりする4Dホロフィギュアも結構人気がある。


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