第7話 4期コスモツアー

クミン指導者は完全に乗り気だ。

接渉係だった書記長のリアンダーさんも面白がっている。


第3種知性体ともなるとコンプレックや羞恥心、さらに権威主義的なヒエラルキーのようなものはない。


役職が単に役割を示しているだけと言う事や「種」全体に奉仕する為のものと理解しているからだ。


今回は完全に面白がって、楽しもうとしている。


あらゆる意味でムダなことはしないのが高度知性体の傾向だ。


「すっごい表現力の声なのね。」


クミンはリアリエの歌声に圧倒される。


リアリエは第3種知性体バッキュル星人だ。


この惑星は恒星に対して地軸の傾斜が大きいので夜だけの期間が非常に長かったり、その逆だったりする。


生活の上では視覚センサーだけに依存する事は出来ずに音声をセンサーとして活用する必要があった。


見た目はエデン人と変わらないが3つの声帯があって右肺と左肺を個別に動かすことができる。


それは明るすぎたり暗すぎたりする生活空間を音声で認識するためにソナーとして使用される。


当然耳の認識機能も現在のペコ人から考えるとはるかに良い。


元々歌を歌うと言う文化はバッキュル星人がエデンを知るまではなかった。


エデンの文化にインスパイアされて優秀な歌い手を輩出するようになったのはここ四百年ほど前からでまだ歴史は浅い。


近年は楽器も進歩していて4分の1音や8分の1音などの表現も出来る。


それにしたがって楽譜も5線符から10線符になっている。


複雑化が進歩ってわけじゃないのだけれど表現するために必要なのだからしょうがない。


ただし、第4種知性体にとってはどうという事はない。


ユキルがアコースティックの24弦ギターを爪弾く。


第4種知性体チヒノピ星人のユキルの手には指が6本ある。


楽器の演奏などにはとても便利だ。


高度知性体には6本指の種族が意外と多い。


エデンの開星の一躍を担った第2種知性体ヴァイ星人のピータンも6本指だった。


かつての辺境惑星ペコは種族としては5本指なのだが時間や暦については12進数が使われている。


これは古代に6本指の高度知性体が干渉した文明の名残りではないかと考える者もいる。


ユキルはデータの打ち込みの前にアナログなアコースティックの楽器を使ってメロディラインを作ったりする。


頭だけで考えていないで指を動かす事でなんとなくいいメロディが降って来る事があるらしい。


クリエイティブにはオートマチズムを利用する事が多い。


楽器にはシャーマニズム的な意味合いがある。


生体をトランス状態にしてアカシックレコードとの接続を強化して膨大な情報の中からイメージを形成してクリエイティブにつなげていく。


まあ、AIも同様のことをするんだけどね。







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