仕事中に
次回以降は9時のみの更新です!( ̄^ ̄ゞ
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簡単に言うと、リゼ様の一日体験傍付きをすることになった。
何故かアリスまで一緒になったが、なんでも「お、お風呂とかさ! 同性の方がいいじゃん!? べ、別にサクくんが取られそうだから警戒しておこうとかそういうんじゃないからね!?」とのこと。確かに、頼まれれば積極的にしたいお風呂の世話も悲しいことに男性ではできないから仕方ないだろう。
それより、先輩風を吹かせていたけど後輩の身の回りの世話をするのはいいのだろうか? まぁ、爵位的には敵わないから少なからずその部分だろうけど。
この話はもちろんあっという間に王城へ広がり、今の僕は一発屋大道芸人のように注目されていた。
その証拠に、リゼ様から解放されたあとの仕事中もずっと視線を感じ、噂されるのが聞こえてくる───
「なぁ、聞いたかよあの話」
「あぁ、リゼ様の身の回りの世話をするらしいぜ」
明日の朝を快適に過ごしてもらえるよう、夜の王城の廊下を拭き掃除していたところに、同僚からのそんな声が聞こえてくる。
「クソ……羨ましい。どうやってリゼ様に近づいたんだよ」
「平民のクセに生意気な」
平民云々で見下されるのはいつものことだ。
王城での仕事は貴族のご子息ご令嬢が社会勉強で足を運ぶほど格式ある場所。
しっかりと若者の平民枠が用意されているとはいえ、そんな場所に自分よりも下にいる平民がいれば気に食わないのも仕方ない。
ここでの生活も三年ぐらいになるけど、やっぱりアリスやリゼ様みたいな分け隔てなく接してくれるタイプの方が珍しいみたいだ。
(んー……まぁ、確かにそんな平民が更に王女様直々指名だったらいい気はしないよね。王女の傍付きって貴族であっても名誉あることだし)
アリスと一緒に過ごし始めた時も同じような感じだったなぁ。
とりあえず、気にしないようさっさと窓を拭き終わって部屋に戻ろう。
「うぅ……眠い、アリスちゃん羊数えたい……」
早くしないと、美少女が廊下で羊を数え始めそうだから。
「……ハネムーンはサクくんの実家のお花畑で」
いや、羊を通り越して結婚後を考え始めてしまっている辺り、もうかなりの手遅れなのかもしれない。
「おい、平民。俺達は戻るから終わらせとけよ」
そう言って、いつの間にか近づいてきていた同い歳ぐらいの使用人が雑巾を投げてくる。
さっきから話してばっかりで全然やってもいなかったのに、もう戻るのか。
いつものことだけど、本当にこの人達は「やった」っていう体裁だけだなぁ。
「……でも、羊数える前にあいつらを氷のオブジェにしたい」
「どうどう」
僕の背中にもたれかかっているアリスが物騒なことを言い始めてしまった。
なだめておかないと、本当にこの人達が氷のオブジェにされちゃう。
(でも命令……命令かぁ)
なんてやる気が出ないワードなんだろうか。
気を抜くと露骨にため息が出てしまいそうだ。
しっかり気を引き締めておかないと───
「なんだ、お前その顔は?」
しまった、ため息の前に顔に出てしまっていたみたいだ。
「リゼ様に目をかけてもらったからって調子乗ってんじゃねぇぞ?」
使用人の男の一人が、僕に眼を飛ばしてくる。
いけない、結構ご立腹でいらっしゃる。
「どうせあの噂もデマなんだろ?」
「自分から流した噂だったりしてな!」
「いや、別にそんなんじゃ───」
「あ? 何平民が口答えしてんだよ!」
どないせぇっちゅうねん。
「前から本当にお前は気に食わなかったんだよ。何故かアリス様にも気に入られているしよぉ!」
男の一人が僕から少しだけ距離を取る。
すると、何故か唐突に僕に向けて指を突き付けてきた。
「お、おい! 流石にここで魔法はマズイって!」
「いいだろ、別に! どうせこんな王城の端っこにこの時間は誰も来ねぇよ! お前も気に食わなかっただろ? やるなら今のうちだぜ!?」
「そ、そうだな……それもそうだな!」
加えて、もう一人の男も同じように離れていく。
王城で魔法なんか撃ったらかなり問題になりそうな気がするけど、二人は自分で言う通り気にしないらしい。
「魔法が使えるんだよな!? なら撃ってみろよ、平民に撃てるんならなァ!?」
二人の指先から生まれてきたのは、小さな火の玉。
威力は見た目初級魔法ぐらいなんだろうけど、火は間違いなくどこかに当たればかなり目立つ被害になるだろう。
(……さて、どうしようかなぁ)
ここで僕まで撃ったらこいつらと同じになるし、あとからアリスに怒られそうだし……いや、でももうすでに噂になっているんだったら撃ってもいいのでは? 撃ってみろって言ってるし、流石の彼らもある程度防御する手段は持っているだろう。
(まぁ、軽く懲らしめるぐらいなら……こっちもこっちで鬱憤溜まってたし、たまにはいいよ……ね?)
僕は指を振って指先から小さな水の糸を伸ばした。
それを、二人の使用人の服へと付着させる。
蜘蛛の尻から放たれるような糸が唐突に伸びてきたからか、二人は怪訝そうな顔をした。
「あ゛?」
そして───
「
───二人の全身が氷で包まれた。
「へ?」
そのことに、男達───ではなく、僕は思わず驚いてしまう。
だって……えー……。
「い、今の防げないの……?」
割ってくる気配もないし、動く気配もない。
あんな簡単な魔法、アリスだったらすぐ出てくるのに……マジで?
と、とりあえず───
「アリスちゃんアリスちゃん、起きて」
「んむぅ……? どったのサクくん……私今、子供が二人できたところ……」
「なんか氷のオブジェができたんだけど、こちらどうすればいい?」
「……ほぇ? アリスちゃん、まだ何もしてないんだけど何事?」
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