聖女様とデート ウィンドウショッピング編

「そ、そろそろ行こっか?/// 私も十分休んだし…」


「そ、そうだな///」


 何とも言えない沈黙の状態から回復した俺と九条さんは気を取り直してデート向かう事にした。九条さんはベンチから立ち上がると俺の隣にピタリと並ぶ。


 …いよいよ九条さんとのデートが始まるんだ。


「それで…えっと、極道君はどこに行きたい? 私としては今日は2人で行きたい所を相談しながらブラブラできたらなぁ~…と思ってたんだけど」


 来た。昨日デートの約束をした時に彼女は特に行き先を指定してこなかったので「そうなるかな」と予想していたのだがドンピシャだ。昨日の夜必死にこの辺りのおススメのデートスポットを調べてプランを練った甲斐があった。


「実はさ、この辺に美味しいって評判のスイーツショップがあるんだ。まずは繁華街でウィンドウショッピング。で、15時ぐらいになって少し小腹が空いたらそのスイーツショップに行かない?」


 現在の時刻が13時なのでおやつを食べるには少し早い時間だ。それ故にまずはウィンドウショッピングで時間を潰した後にそこに向かう事にした。


 この繁華街には大小様々な店があり、見ているだけでも飽きないし話題にも困らないだろう。1、2時間ぐらいはすぐに経過すると思われる。


「…もしかしてそのスイーツショップって『デゼールマルシェ』?」


「うん、そう」


 有名なお店だからか九条さんもその存在は知っていた様だ。彼女は目を輝かせながら俺に詰め寄って来る。


「うん、行こう行こう! 友達から聞いて私も1回行ってみたかったんだけど…あのお店っていつ覗いてもカップルばっかりで入りづらかったの。やっと行けるんだ、やったー! スペシャルパフェ食べるぞー。ふふふ♪」


 九条さんは興奮した様子でとても喜んでいる。その様子を見て俺は胸をなでおろした。彼女は甘い物が好きだろうと思ってチョイスしたのだが、それが大当たりだったようだ。


 …彼女の好きな物もこれから知って行かないとな。付き合っているとはいえ、俺はまだまだ彼女の事を知らない。


 実は今日のデートで最初にウィンドウショッピングを選択したのも彼女の趣味・趣向を詳しく知るためである。彼女の好きな物を知っておけば今後デートの時に役に立つだろうと考えての事だ。


「じゃ、行こうか」


「あっ、待って極道君!」


 俺は早速繁華街の方に向かおうとする。しかし彼女にそれを止められた。


「えっと…せっかくだから手を…繋がないかな?//// ほら、私たちこ、恋人同士なんだし…//// はぐれないように…////」


「えっ、あっ、ウン。イイ…ヨ?///」


 彼女は少し頬を紅潮させ、上目遣いになりながら俺にそう懇願してきた。俺は九条さんがいきなりそんな事を言って来たのでびっくりして少し片言になってしまう。


 …そうだよな。俺たち付き合っているんだから手を握るのぐらい当たり前だよな。


 俺は恐る恐る彼女に自分の手を差し出した。彼女も俺と同じように恥ずかしそうに手をこちらに差し出し…やがて2人の手は結ばれた。


 うわっ…柔らけぇ。これが女の子の…九条さんの手。


 俺が最初に感じた感想はそれだった。彼女の手はとても柔らかくて…そしてほのかに暖かかった。彼女の性格と同じように…その柔らかくて優しい暖かさで俺の手を包み込んでいる。そんな感じだ。


 俺はその手を絶対に離さないようにがっしりと握りしめた。彼女もそれに答えて俺の手をしっかりと握り返してくる。


「極道君の手…硬くて頼りがいのある手だね。そしてその中に優しさもある…」


「ッ/////」


 俺は彼女にそう言われて思わず顔を赤面させてしまう。この人は本当に…。こういう事をさりげなく言ってくるのだから困る。


「あっ、九条さん。あそこでなんかやってるよ」


 俺は恥ずかしさを誤魔化すために話題を反らす事にした。だがそれは彼女に見破られていたようで、彼女は俺の顔を見てクスクスと笑っていた。


 俺たちのデートはこうして始まった。



○○〇



「あっ、見て見て極道君。肉まん売ってるよ。『本格中華肉まん』だって~。おいしそ~」


 それから…俺と九条さんはウィンドウショッピングを楽しんだ。雑貨店に行って小物類を見たり、アパレルショップに行ってこの春流行のファッションを見たり、海外の珍しい物を売っている怪しい露店を見たり…と色々見物した。


 その中で分かったのはやはり九条さんは「食」に最も関心があるという事だった。


 食べ物を売っているお店があるとすぐに反応する。また、彼女の場合は食べる事も好きだが、作る事も好きな様で新作のキッチン用品などにも興味津々のようだった。


 そのはしゃぎ様といえばまるで子供のようで…俺は彼女の新たな一面を知れた嬉しさと満足感を感じていた。


 …今後彼女とデートする際は「食」関連のデート先をピックアップしていると良さそうだ。


 今も肉まんを売っている屋台に飛びついている。彼女は俺の方を見るとチラリと物欲しそうな眼をして「買ってもいい?」と熱願ねつがんしてきた。


「買っていいよ。でもこの後スイーツショップも行くけど大丈夫?」


「大丈夫!大丈夫! これくらいは別腹♪」


 先ほどからすでにタピオカジュースやサーティ〇ンアイスクリームを食べているのだが…女の子は基本少食だと聞いていたので俺は少し驚いていた。


 でもあれくらい食べているからこそ彼女の胸とお尻は人より大きいのだろう。おっと…あまり下品な目で彼女を見るのは失礼か。俺は頭を振って煩悩を吹き飛ばした。


「はい、極道君。半分こ♪」


「あ、ああ。ありがとう」


「美味しい物はね、誰かと一緒に食べるともっと美味しくなるんだよ♪」


 彼女は購入した肉まんを半分に分けて片方を俺にくれた。俺はそれを受け取るとありがたく頂く。


 …確かに彼女の言う通り、好きな人と食べる食事というのはいつもより何倍も美味しく感じられた。


 俺は美味しそうに肉まんを頬張る彼女を優しく見守りながらウィンドウショッピングを楽しんだ。


 

◇◇◇


九条さんは結構食気が強め

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