第43話 天下無双薩摩示現流で勧善懲悪を成し遂げる

「ミニッツです。晴人さん、それから第一隊から第七隊の部隊長、パルナ・パーニャ共和国の国王の間の会議室に集合してください。」



「全員、お揃いですね。それでは、いよいよ『天下無双薩摩示現流で勧善懲悪を成し遂げる』ときがやってきました。最後の作戦行動です。第1隊の晴人タイガー隊長の部隊は、晴人さんとヴァイオレットさんと行動をともにし、ロジア大帝国軍を一人残らず攻め滅ぼしてください。第2隊の晴人フェンリル隊長の部隊は、ヂャイナ帝国軍を一人残らず攻め滅ぼしてください。第3隊の晴人ブラックドラゴン隊長の部隊は、イスラルド帝国軍を一人残らず攻め滅ぼしてください。第4隊の晴人レッドドラゴン隊長の部隊は、ベラルシ帝国軍を一人残らず攻め滅ぼしてください。第5隊の晴人メタリックドラゴン隊長の部隊は、アルデミア帝国軍を一人残らず攻め滅ぼしてください。第6隊の晴人ゴールデンナイト隊長の部隊は、キムジョン帝国軍を一人残らず攻め滅ぼしてください。第7隊の晴人ゴールデンゴーレム隊長の部隊は、レーダー探知機腕時計を用いて、山や地下に逃げ込んだ軍隊を一人残らず掃討してください。各国の国王の居場所は、『スパイアカダニ』と『スパイカメレオンフライ』から情報を収集してあります。拡大地図に示してありますので、人差し指と親指で拡大して、始末してください。こういう場合、かならず目ざとい兵士が逃げ出します。第7隊だけでは掃討できませんので、必ず、レーダー探知機腕時計を使って、一人残らず始末してください。それでは、最後の仕上げです。健闘を祈ります。」


「イエッ・サー!」

「イエッ・サー!」

「イエッ・サー!」


「パッ。」

「パッ。」

「パッ。」



 いよいよ、「天下無双薩摩示現流で勧善懲悪を成し遂げる」日がやって来た。各部隊の全員が、蜻蛉トンボの構えから素振りをする姿が各地で見られた。


「第1隊、全ての魔法は付与したな?」


「イエッ・サー!」

「イエッ・サー!」

「イエッ・サー!」


「それでは、地上に降りて、白兵戦だ。鉄砲玉も真っ二つに斬ってしまえ。敵を斬って、斬って、斬りまくれ!ノルマは、一人1000人のつもりでいろ!」


「チェストー!キエーイ!」


「ザッ!バタン。」


「キエーイ!」


「ザッ!バタン。」


「キエーイ!」


「ザッ!バタン。」


「パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!」


「鉄砲隊長!鉄砲隊の玉が真っ二つに斬られています!」


「そんなはずがあるか!撃て!撃て!撃て!」


「鉄砲隊長、上を!」


「キエーイ!」


「ザッ!バタン。」


「鉄砲が効かぬ!逃げろ!逃げろ!撤退だ!全軍撤退だ!」


「キエーイ!」


「ザッ!バタン。」



 第1隊から第6隊まで全ての隊がこのような戦況であり、6か国の帝国軍は手も足も出なかった。


 

「第7隊長、晴人ゴールデンゴーレム隊長、この真下の地下50mに1万立法メートルほどの地下室があります。いかがなさいますか?」


「土魔法で、上下左右からハサんでツブしてしまえ。」


「ハハーッ。」




 戦闘が始まって6時間後、


「キムジョン帝国城完全崩壊。生存者なし。周囲への索敵完了。生存者なし。」


「アルメディア帝国城完全崩壊。生存者なし。周囲への索敵完了。生存者なし。」


「ベラルシ帝国城完全崩壊。生存者なし。周囲への索敵完了。生存者なし。」


「イスラルド帝国城完全崩壊。生存者なし。周囲への索敵完了。生存者なし。」


 それから2時間後、


「ヂャイナ帝国城完全崩壊。生存者なし。周囲への索敵完了。生存者なし。」


「こちら第1隊、晴人タイガーです。ロジア大帝国城完全崩壊。生存者なし。周囲への索敵完了。生存者なし。避難場所の穀物倉庫及び地下避難所の軍隊を完全排除。我が主、残るは、プージン皇帝ただ一人です。」


「晴人タイガー、掃討と連絡をありがとう。今からそちらにヴァイオレットを連れて向かう。」


「ハハーッ。」


「スッ。」

「スッ。」


「パッ。」

「パッ。」


「さあ、バイオレット。いよいよ、この戦争の本当の意味での終わりだぞ。いっておいで。」


「はい、お兄さん。」



「おい、お前がプージンか?よくも我が愛する家族を無残に殺してくれたな~。お前をみじん斬りにせねば気が済まぬ。」


「ま、ま、ま、待ってくれ。バイオレットとやら。いくら金が欲しい?いくらでもくれてやるぞ!」


「金で愛と命が買えるものか!この大バカ者が!」


 ヴァイオレットは腰を深くかがめ、刀の柄に手をかけた瞬間、


「スッ。」


「パッ。」


「ゴトン。」



 すると、バイオレットはそばで見ていた晴人のもとに駆け寄り、晴人に飛びついて泣いた。

「ウワァァァーン!ウワァァァーン!ウワァァァーン!ウワァァァーン!」



「ミニッツ、晴人タイガー、片付いたよ。ヴァイオレットが見事にプージン皇帝を斬って捨てた。大泣きしているからしばらく時間をくれ。その代わり、本当に6つの帝国軍全土に潜んでいる軍隊がないか、全部隊で第7隊を支援してあげてくれ。」


「ハハーッ。」



 ヴァイオレットは1時間を過ぎても晴人に抱き着いたまま泣いていた。念願だった愛する家族を皆殺しにされたカタキであるプージン皇帝を斬り捨てても、彼女の胸には塞ぎようのない大きな穴がぽっかりと開いたままだった。これを精神医学や心理学では「対象喪失タイショウソウシツ」という。受けた悲しみがあまりにも大き過ぎると、胸に大きな穴が開くのである。しかも、あまりの悲しみのため、底が抜け落ちていない。だから、何を詰め込んでも埋まることはない。晴人はそれを知っていた。ようやく泣き止んだヴァイオレットは、晴人に向かって意外なことを言った。


「晴人お兄さん、ありがとうございました。お兄さんと出逢わなければ、復讐は果たせませんでした。これからは、「お兄さん」ではなくて、「兄上」をお呼びしてもいいですか?晴人兄上。」


「う、うん。いいよ、ヴァイオレット。俺とお前は血は繋がっていないが、俺はお前を本当の妹だと心の底から想っているからな。」


「兄上にそう思っていただけるだけで、生きていけます。地球のお父様とお母様も私を本当に我が子だと思って接して下さるのが伝わってきます。愛する家族は失ってしまいましたが、兄上のお陰で私に新しい家族ができました。深謝いたします。」


「ヴァイオレット、二人でソフィーナに念話しよう。」


「はい、兄上。」


「もしもし、ソフィーナか?おなかの調子はどうかい?」


「はい、順調ですよ。」


「ヴァイオレットに代わるね。」


「はい。」


「お姉様、やっと復讐ができました。プージン皇帝を見事に斬って捨てました。」


「本当!おめでとう!ヴァイオレットちゃん!じゃあ、もう、全てがすんだのね。」


「はい、全てがすみました。兄上に代わります。」


「ソフィーナ、あなたのおかげで全てすんだよ。もう二度と戦争は起こらないよ。避難民も全て安全な場所に避難させたからね。セオドア上皇とエリス上皇后、お城の皆にも伝えておいてね。今から戻ってきますね。」



 晴人は、ミニッツや全部隊長、30万の部下を集めた。


「勝利の勝ちドキがまだだったな。ミニッツ、頼む。」


「6つの帝国軍への勝利を祝して、勝ちドキを上げる!」


「エイ!エイ!オー!」

「エイ!エイ!オー!」

「エイ!エイ!オー!」

「エイ!エイ!オー!」

「エイ!エイ!オー!」

「エイ!エイ!オー!」


「やっと終わったな。皆のお陰だ。本当にありがとう。今夜は、国民も呼んで『天の使徒の森』で大バーベキュー大会をするぞ!」


「イヤッホー!ヤッター!飲みまくるぞー!食いまくるぞー!」


「パッ。」

「パッ。」


「ただ今、ソフィーナ。」


「晴人さ~ん!ウエエエエーン!ウエエエエーン!ウエエエエーン!」


「お父様、お帰りなちゃい。」


「お父様、お帰りなさいです。」


「ただ今、晶人アキト、フローレンス。今夜は『天の使徒の森』でみんなで大バーベキュー大会をするからな。」


「まあ、晴人さん、本当に?」


「うん、祝勝パーティーだよ。」


「ヤッター!お肉をいっぱい食べて双子ちゃんに栄養を届けますわ。」


「ソフィーナ、やっと笑顔になったね。愛しているよ、ソフィーナ。チュ。」


「ああ、また、チュウをしているのれす。」



 その日の祝勝パーティーは大盛り上がりだった。近隣の国民たちも駆けつけ、大賑オオニギわいだった。


「晴人さん、見て。あっちの方で、国民たちとモンスターズが飲み比べしていますわよ。向こうの方では、食べ比べしていますわ。」


「うん。皆、楽しそうで良かった。戦争がないって本当にいいね。」


「そうですわね。晴人さんのお陰ですわよ。チュ。」


「あ~、またチュウをしているのれす。」


「母上、どうしてチュウをするのですか?」


「母上と父上が愛し合っているからよ。」


「そうですか。では、兄上と私は父上と母上が愛し合っているからできたのですか?」


「そうよ。母上と父上の愛があなたたちをつくったのよ。」


「それは、すごいれす。」


晶人アキト、フローレンス、生まれてきてくれてありがとうな。」


「フローレンス、もっとお肉を食べたいれす。一緒に行くのれす。」


「はい、兄上。」


「ハ、ハ、ハ、ハ、可愛いね。」


「晴人さん、小さな幸せの積み重ねですね。これからも豊かな幸せをいっぱい味わって参りましょうね。」


「うん。そうしようね、ソフィーナ。愛しているよ。」


「私もです。晴人さん、愛しています。」


「チュ。」

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