第41話 晴人とソフィーナの幸福 

「ミニッツ、今日一日、瞬間転移魔法を使って、帝国軍の戦闘の状況を確認に行ってみたよ。各国とも未だに血で血を洗う凄惨セイサンな戦争を続けていたよ。いったい、この戦争はいつまで続くのだろうか?」


「晴人さん、以前も晴人さんに報告しましたが、私が考えていた百万倍返しの策の第二弾、第三弾は必要ないです。やはり、開戦当初は、長距離大砲を数百台保有するロジア大帝国が各国の城を破壊し、戦争を有利に進めていましたが、兵站ヘイタンが途絶え、大砲の玉の補充が切れた途端に、敵の突撃部隊に遭って損害を拡大していますね。まだ、キムジョン帝国もヂャイナ帝国も、イスラルド帝国もベラルシ帝国もアルメディア帝国も徹底抗戦の様相です。この戦争で最も戦慄センリツを覚えたのは、ロジア大帝国軍の兵士が自国民の農家を大量斬殺し、食料を奪っていました。

ところが戦争が長期化すると、どの帝国軍も他国民だけでなく、自国民を大量虐殺しながら、食料を奪って敵兵と闘っているのですから、戦争というものが人間を『殺人鬼』に変える『狂気の沙汰サタ』であるのかが火を見るよりも明らかですね。」


「ミニッツ、プージン皇帝は今どこにいるんだ?」


「塹壕を掘り続け、首都のモスクワナから100km北にある地下避難所にいるようです。地下避難所は、第7食料貯蔵庫といって、万が一の困窮に備えていた備蓄庫と繋がっているため、そこで生きながらえています。」


「プージン皇帝もだいぶしぶといな。各国の軍隊の規模は開戦直後からどのように変わったのか?」


「はい、開戦当初、ロジア大帝国は約200万の兵力でしたが、今では半数の100万になっています。ヂャイナ帝国は約180万の兵力が今では60万、イスラルド帝国は約50万から20万、ベラルシ帝国は約40万から15万、アルデミア帝国は約

30万から15万、キムジョン帝国は40万から10万になっていますね。ロジア大帝国は、広い穀倉地帯を有しているため、ヂャイナ帝国より優位に立っています。」


「ミニッツ、俺の軍はいつ出撃すべきなのか?」


「まだ、各国には武器や弾薬や兵力があります。それがある以上、底がつくまで戦わせるつもりです。可能な限り各国の兵力を減らす必要があります。大量に食料を貯蓄しているのは、軍の上層部と大勢の貴族です。彼らは、各国に大勢います。それを晴人さんの部隊に任せようと考えていましたが、各国の農民が蜂起し、奪い合っている状況です。晴人さん、この戦争は、私と晴人さんが推測していたよりもかなり長期化しますよ。とにかく今は、自国民の安全と平和を守ることが先決です。私が出撃のタイミングを注視しますので、それまで、ソフィーナさんと一緒になって双子の長男の

晶人アキトくんと双子の妹のフローレンスちゃんとたくさん遊んであげてください。」


「うん。分かった。ありがとうミニッツ。そうするよ。」



 晴人とソフィーナの子供である、双子の兄妹、長男の晶人アキトと妹のフローレンスは、やがて2歳になろうとしていた。晴人とソフィーナは、城の庭園で鬼ごっこの真似ごとをした後は、本の読み聞かせを続けた。晴人とソフィーナは、互いの目が合うと必ずキスをした。その様子を、晶人アキトもフローレンスは黙ってじっと見ていた。


 晴人もソフィーナも、打ち合わせなどなくとも、心から愛し合っているため自然に

キスをし合う仲だった。晶人アキトもフローレンスも深層心理の中に、父と母が心から愛し合って、自分たちは生まれたのだという感覚を、やがて青年期になって自覚するようになる日がくることは明らかだった。晴人とソフィーナは、晶人アキトとフローレンスを分け隔てなく愛し続けた。


 夕食後は、ベッドの上で飛んだり、跳ねたりする晶人アキトとフローレンスと一緒に楽しく遊んだ。そして、ひとしきり遊ぶと、読み聞かせをして寝かしつけた。晴人の心の中にも、ソフィーナの心の中にも、晴人とソフィーナの愛の結晶が晶人アキトとフローレンスであることを自覚していた。


 また、晶人アキトとフローレンスは、転ばずに歩けるようになると、セオドア上皇とエリス上皇后の部屋に手をつないで、頻繁に遊びに出かけた。セオドア上皇もエリス上皇后も誰にも見せたことのない笑顔で晶人アキトとフローレンスを溺愛デキアイした。また、2か月に1週間程度、地球に戻り、晶人アキトとフローレンスを晴人の父であるアキラと母である百合子の実家へ連れて行った。晴人の父であるアキラと母である百合子もまた晶人アキトとフローレンスを溺愛デキアイした。晴人は、自分の妹になったヴァイオレットも必ず地球に同行させた。


 晴人の父であるアキラと母である百合子は、晶人アキトとフローレンスを連れて、動物園に行ったり、幼児用の人形劇を見せたりして二人の孫の喜ぶ姿を慈しんだ。妹のヴァイオレットは順応性が高く、地球の様々な場所へ出かけ、旅行を満喫マンキツした。

 一方、晴人の両親が双子を遊びに連れて出かけると、晴人とフローレンスは手をツナいで映画を見たり、ショッピングを楽しんだり、おいしいスイーツを食べに行ったりして二人でいる時間を満喫マンキツした。


 二人は美味しいスイーツを食べに行った時のこと、


「晴人さん、あなたと見つめる合う時間が幸せです。あなたに抱かれている時間が幸せです。晶人アキトがニコッと笑いかけてくれる瞬間が幸せです。フローレンスがニコッと笑いかけてくれる瞬間が幸せです。晴人さんが私の手を繋いでくれる時間が幸せです。晴人さんと分け合ってスイーツを食べている瞬間が幸せです。ところで晴人さんは、地球にいるとき、心の学問である心理学を学んでいたのですよね。幸せって言葉にするとどういう意味になるのですか?」


「じゃあ、ソフィーナには、最もスッキリしていて分かりやすい『幸福』の定義を教えるね。」


「はい、ぜひ教えて下さい。知らないよりは知っていた方が得ですからね。」


「心理学では、『幸せ』のことを、『主観的幸福感』と言うんだよ。」


「はい、『主観的幸福感』ですね。」


「『主観的』という言葉が付く以上、その人自身が、これは幸せだ、これは幸福だって感じるのが『主観的』っていう意味になるんだ。ここが特に重要なんだよ。」


「晴人さん、それって、つまり、『客観的』なものじゃないってことですよね。」


「ソフィーナの言う通りだよ。」


「ソフィーナが、『あぁ〜、幸せだなぁ~。』『あぁ〜、幸福だなぁ~。』と感じれば、それが『主観的幸福感』になるのさ。だから、何をもって幸せと感じるかは、人それぞれでいいんだよ。他人から『いいや違う、これが幸せだ!』って、押し付けるものじゃないんだ。ソフィーナは自分の感覚や主観で決めればいいんだよ。」


「あと、ソフィーナに知ってもらいたいのは、もうひとつある。」


「晴人さん、それって、何ですか?」


「それは、主観的幸福感の中身だよ。これが意外に大事なんだよ。」


「ソフィーナ、主観的幸福感はね、2つの要素で構成されているんだ。1つめは、『感情的幸福感』だ。2つめは、『認知的幸福感』だ。もう一度言うよ、1つめは、『感情的幸福感』で、2つめは、『認知的幸福感』です。」


「晴人さん、それって中身が違うんですか?」


「ソフィーナ、あなたの言う通りです。中身が違います。」


「『感情的幸福感』は、瞬間的な 幸福感を意味するんだよ。『嬉しいなぁ』、『楽しいなあ』、『心地よいなぁ』、「ワクワクするなぁ」などの感情からできているんだよ。大まかにいうと、『感情的幸福感』とは、その時その時の『瞬間的な感覚』なんだよ。今、ソフィーナが『幸せだわ』って言った言葉の全てが『瞬間的な感覚』なのさ。」


「じゃあ、晴人さん、2つ目の、『認知的幸福感』っていうのは何ですか?」


「あのね、『認知的幸福感』は、『これまでの人生を、長い期間で総合的に振り返った場合の満足感』を意味するんだよ。ソフィーナ、つまりね、どういうことかというと、瞬間的に『幸せだなぁ』『幸福だなあ』と感じる『感情的幸福感』が多ければ多いほど、『認知的幸福感』は高くなる傾向があるんだよ。だからね、日々の生活の中で、ほんの些細ササイなことに対して、本人が『幸せだなあ』『幸福だなあ』と実感することの積み重ねが最も重要になるんだ。だから、ソフィーナが話した言葉の一つ一つがとても重要なんだよ。」


「へえ~、そうなんですね。なんだか照れちゃうなあ、キャハ。」


「ソフィーナ、大切なことは、日々の暮らし中で、ほんの些細な出来事やほんの小さな喜びに対して、『あぁ〜、なんて幸せなんだろう。』『なんて幸福なんだろう。』と感じる自分の感性を自分で育むことが肝要なんだよ。どんな小さなことでも良い。それ以外にも、自分が心から大切にしている家族や親兄弟などの人々に対して、『今日も元気で生きている。あぁ〜、なんて幸せなんだ。』と感じることの積み重ねが、自分のこれまで生きてきた人生に対して、『幸福な人生を過ごしている。』って実感に結び付いていくんだよ。」


「だからね、ソフィーナが話してくれた、『瞬間的な幸福感』をじっくりと味わうことがとても大切なんだよ。」


「晴人さん、分かりました。実は、ホテルに予約を取っています。最近、晴人さんに抱きしめてもらっていません。晴人さんが欲しいです。また、双子ちゃんをつくりましょう。」


「はあ?ソフィーナはホテルに予約できるようになったの?」


「はい。昨夜、お父さんに晴人さんにしばらく抱いてもらっていないので、抱かれたいと言ったらお父さんが予約してくれました。」


「あちゃ~。でも、ソフィーナらしくて嬉しいよ。その代わり、いつものようにお風呂に入った後は、ソフィーナの裸をじっくり見させてね。」


「晴人さん、そんなに私の裸を見るのが好きなんですか?」


「はい。幸せになります。」


「キャハ。だったらうんと見せてあげますよ。いろいろなポーズで。」


「マ、マ、マジですか?」


「はい。私のマジはマジマジです。うんと私を愛でてください。」


「はい。俺はソフィーナのあえぐ声が好きなので、今日の前技は長いですよ。」


「キャハ。その代わり、たっぷりと私の体の中に出してくださいよ。」


「任せなさい。」


「キャハ。じゃあ、早速行きましょう!」




 晴人とソフィーナの愛の深さの一つの要因は、夫婦の営みの相性が素晴らしく良いのではないかと思う筆者であった。

 














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