第34話 プージン皇帝の特別暗殺作戦 Ⅰ

 ヴァイオレットの側室の申出の件から3カ月が経った。その間、争いごとは一切起きていなかった。晴人は、その静けさに違和感を覚えた。そこで、晴人は「地球移動魔法」を用いて、実家に帰り、異世界侵略戦争を殲滅センメツしてきた経験のある父、アキラに助言をもらいに行った。


「晴人、普段何もないときがチャンスでもありピンチなんだぞ。一見、紛争も戦争もないときこそ、積極的に動け!そして、油断するな!敵国も同じことを考えているんだ!俺には『ぼっけもんず』という少年期からの強力な仲間がいたが、お前にはいない。いくら晴人タイガーや晴人フェンリルなどの聖獣が強かろうとも、どんな使い方をするかはお前次第なんだ。お前は、正式にミニッツを軍師に迎え入れろ。俺からも『天』に頼んでおくが、お前も直接、『天』に頼み込め。『天』のことだ、ミニッツを人間の姿にしてお前のもとに馳せ参じさせるはずだ。いいか、何も起きていないときがチャンスでもあり、ピンチでもあることを忘れるな。そして、ソバにミニッツを軍師として正式に迎え入れろ。そして、ミニッツの考えを具現化しろ!」



 それから晴人はミニッツに念話を入れた。


「ミニッツ、久しぶりだな。お前がソフィーナにいらぬアドバイスをしたおかげで、毎晩、励んでいるぞ。おかげで腰の筋肉が鍛えられたぞ。ギャハハハハ!」


「晴人さん、私の予見ではもうすぐですよ。」


「何がだ?」


「決まっているじゃないですか!赤ちゃんですよ。」


「本当か?」


「はい。だからもうしばらく毎晩、励んでくださいね。」


「ミニッツ、お前は俺とソフィーナの夫婦の営みを見ているのか?」


「カラーでも、白黒でもありませんよ。白い輪郭が見えるだけです。」


「お前、それをノゾきっていうんだぞ!」


「父の命令で、知識のない晴人に正しい赤ちゃんのつくり方を教えてやれと命じられました。一番妊娠しやすいのは、生理直後から1週間から2週間の間ですからね。ソフィーナさんにこのことを教えたらとても喜んでいましたよ。」


「だからだ!この週は妊娠がしやすいからと言って、起床後も、昼も、夜も、ソフィーナが求めてくるんだぞ。俺の腰はカクカクなんだぞ。」


「ワハハハハ、ワハハハハ。それは愉快だ!」


「晴人さん、ところで何用ですか?」


「ミニッツ、ちょっと大切な用件があって、『天』と直接話がしたい。取り次いでくれないか?」


「いいですよ。しばらくお待ちください。」


「・・・・・。」


「ほお、晴人か?元気にしとったか?赤ちゃんが楽しみじゃのお。」


「『天』よ、大切なお願いがございます。」


「晴人よ、もうおヌシの父、アキラに依頼を受けておる。わしの息子のミニッツを正式に軍師に迎えたいという話じゃろう?」


「はい、その通りです。私には肩書だけの軍師はいますが、実質的な軍師がおりません。また、私と同じレベルの仲間もおりません。何をどう動けばよいのか分からないのです。『万里の長城』と『大型貨物列車』は無事に完成し、今は各国の優秀な曹長を集めて新型兵器の訓練をさせていますが、父から『このような何もないときが最もチャンスであり、ピンチであることを忘れるな!』と言われました。ですが、私一人では限界です。ミニッツを私の正式な軍師としてお借りすることはできないでしょうか?」


「うむ。お主の言う通りじゃな。わしもその点はずっと前から気にしておった。すべておヌシ一人で帝国軍と戦っておったからのお。よかろう。ミニッツを人間の姿にしてお主の軍師として働かせようではないか。ミニッツを正式な軍師として役立たせてくれ。」


「ハハーッ。」


「今日、午後0時にパルナ・パーニャ共和国の中央広場に姿を現すであろう。迎えてやってくれ。それからミニッツもおヌシと同様の魔法やそれ以上の魔法を使いこなせるゆえ、頼りにしてやってくれ。それと、『天』の息子だけは絶対に公言してはならぬぞ。晴人の地球での同級生というかたちで登場させるからのお。これは、ソフィーナちゃんにも伝えておくのだぞ。」


「ハハーッ。」


 晴人は、すぐさま隣で紅茶を飲んでいるソフィーナにこの話の内容を聞かせ、万が一にも口を滑らせてミニッツのことを『天』の息子だとばらせば、『天』がお怒りになり、この惑星『フリースランド』ごと爆発させることを伝えた。ソフィーナは驚愕のあまりティーカップを床に落としてしまった。「ソフィーナにちょっと言い過ぎたかなあ、ごめんよ、ソフィーナ。」と思う反面、『天』との約束は絶対条件であるため致し方ないと割り切った。


 ソフィーナは、付き人の近衛兵に、午後0時にパルナ・パーニャ共和国城の中央広場に地球から来た晴人国王の無二の親友が姿を現すことを首脳陣たちに伝えるとともにパルナ・パーニャ共和国城の全員に伝えるように命じた。また、コック長のエリックとメイド長のエリスに昼食パーティーの準備に取り掛かるよう命じた。



 そして、全員が見守る中、パルナ・パーニャ共和国城の中央広場に黒いスーツを着た黒髪で目鼻立ちや表情が、シャープで凛々リリしい精悍セイカンな男性が姿を現した。


「パッ。」


「みなさま、はじめまして。大和晴人国王の唯一無二の親友である『ミニッツ』と申します。どうぞよろしくお願いいたします。」


「パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ。」


 晴人とミニッツは、初対面にして互いに固い握手をし、晴人は、ソフィーナを紹介した。

「晴人国王陛下の妻、ソフィーナでございます。どうぞよろしくお願い致します。」


 その後、ミニッツを昼食パーティーの席に招き、最大のおもてなしをした。会食に参加したセオドア上皇やエリス上皇后など国王一族の挨拶が済むと首脳陣の部下たちも挨拶をした。ミニッツは、ジョークが得意で会場を笑わせ、和気あいあいとした雰囲気で会食が進んだ。その後、ミニッツは城の庭園を晴人に案内してほしいと申し出たため、二人で散策することにした。


「晴人さん、いや、ここでは晴人国王ですね。ソフィーナさん美しい方ですね。」


「ミニッツは結婚しているのか?」


「はい、結婚しています。妻の名前は、オリビアと言います。」


「相手は人間の女性なのかい?」


「はい、父が私をこのような姿にして人間の女性と結婚するのです。勿論モチロン、オリビアは私の父が『天』であることを知っています。」


「子どもはいるのかい?」


「生まれたばかりの赤ちゃんがおります。男の子です。」


「それは、おめでとう!『天』も嬉しかっただろうなあ~。」


「実は、先日のアドバイスは、父から教わったのです。私がオリビアと夫婦の営みをしている最中に突然、念話が来て、説明を受けました。その説明と全く同じ説明を晴人さんとソフィーナさんにしたのですよ。人間の姿が白く塗りつぶされている映像が浮かんでくるんです。カラーでも、白黒でもありません。だから、晴人さんとソフィーナさんが何をしているかは見えていませんよ。」


「ギャハハハハ!ギャハハハハ!ミニッツも『天』から習ったのか?ギャハハハハ!

うけるなあ~。それより、ミニッツ、『万里の長城』と『大型貨物列車』は無事に完成し、今は各国の優秀な曹長を集めて新型兵器の訓練をさせているんだが、日本に住む父から『このような何もないときが最もチャンスであり、ピンチであることを忘れるな!』と言われたんだ。俺もこの静けさにどうも違和感があるんだが、俺一人じゃ限界があるようだ。ミニッツ、軍師として知恵を授けてくれないか。」


「分かりました。誠心誠意お仕えします。ところで、晴人さんが、もっとも厄介なプージン皇帝だとしたら、どう動きますか?」


「う~ん。さすがミニッツだな。相手の立場から考えるのか・・・。まず、思いついたのは、俺が長距離大砲製造工場を破壊したんだ。だから、長距離大砲製造工場を造りなおすな。それから、プージン皇帝は武器マニアで開発が好きだから、もっと強力な武器を開発するな。それから、う~ん、6か国帝国軍事同盟会議を開いて、何か作戦を立てるはずなんだけど、それが見通せないなあ~。」


「晴人さん、考え方の筋はいいですね。後は経験値の蓄積かなあ~。今度、晴人さんが長距離大砲製造工場を造るとしたら、どこに造りますか?」


「なるほど、地下だ、地下。新型武器の開発も地下だ。俺がプージン皇帝だったらそうするな。」


「ピンポン!正解です。でもそれには時間がかかりますよね。その間、暇なことをしている連中だと思いますか?」


「あっ、プージン皇帝の必殺技を見落としていたよ、『暗殺部隊の強化』だ!プージン皇帝ほど銃殺と爆破による暗殺が好きな奴はいない。狂気キョウキ沙汰サタだ。今でも平気で反対派のリーダーや大勢の市民を銃殺したり、処刑したりする恐怖政治を行っているもんな。とすると、ミニッツ!もうこの国に暗殺部隊が侵入しているってことか!」


「はい。各国に数え切れないほどの暗殺スパイ集団が紛れ込んでいますよ。恐らく狙いのターゲットは2つです。1つ目は大和晴人国王の暗殺です。ですが、これは完全に無理です。2つ目は国王や女王、王子、王女などの暗殺です。」


「しまった。後手に回った。」


「晴人さん、あなたの私情や後悔の念は後回しにする習慣を身に付けて下さい。今、後悔している暇はありません。国王ならばどんなときでも毅然とすべきです。」


「ミニッツの言う通りだ。まず、死の『骸骨の森』へ向かい、各国に20名の強者ツワモノを派遣し、王族の警備に当たらせよう。それから、いや、違う、その前に、6か国の国王への大念話だ。内容を国王たちへ伝え、警戒態勢を取らせよう。その後、瞬時に、各国に20名の強者ツワモノを派遣し、王族の警備に当たらせよう。ミニッツ、どうだろうか?」


「手順は悪くありませんが、20名は少なすぎます。城に放火されれば、誰がどこに逃げたか分からなくなります。100名は派遣すべきです。それと、晴人さんは、死の『骸骨の森』へ行くのはロスタイムです。この城の中庭に700名の強者ツワモノを召喚した方が早いです。」


「分かった。今すぐに、行動する。」

 晴人は、すぐに大念話を用いて6か国の国王陛下に多くの敵国のスパイ暗殺部隊が侵入している緊急事態であることを伝え、近衛兵だけでなく、軍人も警護に当たらせるように指示するとともに、できるだけ狙撃されないようにガラス窓には近寄らないように伝えた。


 それがすむと晴人は中庭に走りながら、大念話を使い死の『骸骨の森』のモンスターズに念話を入れ趣旨を説明した。加えて、各7班から強者ツワモノを100名ずつ選出して、パルナ・パーニャ共和国城の中央広場に集まるように伝えた。


 百戦錬磨ヒャクセンレンマ猛者モサたちは、直ぐに集まった。

「いいか、みんなレーダー探知機腕時計を使え!黄色と赤色はためらわずに斬り捨ててくれ。魔法を使っても構わない。自分の正体を見抜かれぬためにも透明化スルー魔法を使ってくれ。では、各国へ転移初め!」


「スッ。」

「スッ。」

「スッ。」

「スッ。」

「スッ。」

「スッ。」


 それから、10分後、ロンバルト共和国へ警護に向かった晴人タイガーから悲報が届いた。

「我がアルジ、我々が到着した時には、城は半壊し、ロンバルド国王陛下と女王陛下、第一王子、第二王子が鉄砲で暗殺されていました。また、城に集まっていた公爵たちは全て惨殺されており、第一王女のヴァイオレット第一王女だけが行方不明です。」


「な、何だと!国王陛下と女王陛下のみならず王子たちや王族たちまで殺されていたというのか!」


「はい!今、人間の5万倍鼻が利くゴールデンベアーにヴァイオレット第一王女を捜索させておりますが未だに行方不明のままです。」


「しまった!敵にキョを突かれた!俺は一生、取り返しの付かない見落としをしてしまったんだ!」

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