第29話 晴人、「大型貨物列車」の建設を始める
着工してから半年後、ついに「万里の長城」が完成した。「万里の長城」の上には最新鋭の兵器が配置され、帝国軍を一網打尽にする破壊力を秘めていた。「万里の長城」を築いてもらった6か国の国王たちから、パルナ・パーニャ共和国にお礼というかたちで各国から多くの金銀財宝が届いた。次は、いよいよ念願の7か国軍事同盟大型貨物列車の建造に取り掛からなければならなかった。
晴人は、早朝、キリマンジャロを飲みながら、ミニッツに念話を入れた。
「ミニッツ、晴人だ。『万里の長城』が完成したよ。ミニッツのおかげだよ。本当にありがとうね。1年かかると思っていたけど、獣人化した魔獣たちのおかげで約半年で完成したんだ。とっても嬉しいよ。そこで、ミニッツに相談がある。7か国軍事同盟の『大型貨物列車』の開通に、無限の力を持つ『メビウスの輪』をどのように使えばよいのか皆目見当がつかぬのだ。今まで『大型貨物列車』のような大規模な建設をしたことが私にはない。だから、未知の事柄について予測ができないんだ。」
「晴人さん、まずは、『万里の長城』の完成、おめでとうございます。30万の魔獣や魔人たちから慕われる晴人さんだからこそできた偉業だと思います。本当におめでとうございます。『万里の長城』は国境に沿って建築すれば良かったですけど、『大型貨物列車』の建造は、そうはいきません。各国の首都と各都市を結ばなければならないからです。そこで、『拡大魔法地図』に線路を書き込んでおきました。『大型貨物列車』は、晴人さんの次元収納ストレージの中に入っていますよね。だから後は、第一に土魔法を使って、レールを敷く場所の地盤を平地より2mほど高く盛り土をします。第二に盛り土をプレートコンパクターで固めます。プレートコンパクターとガソリンは物体再現魔法を使って増やしてください。複数の獣人に水平器を持たせて水平になっているか確認が必要です。
「ミニッツ、『大型貨物列車』の動力源である電機はどうしたらいいんだ?」
「晴人さん、そこはご心配なく。私に任せて下さい。雷魔法が封じ込められた大きな魔石があります。それを私が『大型貨物列車』に組み込んでおきます。」
「ありがとう。ミニッツ、それからもう一つ質問だあるんだ。橋だよ、橋。どうしたらいいのかなあ。」
「晴人さんが困るだろうと思って、日本から20種類の長さが異なる橋を『物体再現魔法』を使って取ってきましたよ。既に、晴人さんの次元収納ストレージに入っています。それを死の『骸骨の森』の広場に置いておきます。現場監督が必要に応じて、ここの場所に転移し、物体再現魔法を使って使用すると思います。橋の長さや大きさは、『3D拡大縮小魔法』を使って調節するように伝えて下さい。」
「ミニッツ、そこまでしてくれてありがとう。感謝するよ。」
「いいえ、どういたしまして。線路はおそらく万里の長城よりは早く完成すると思いますよ。」
「うん、分かった。今から取り組んでみるよ。」
その後、晴人は直ぐに死の「骸骨の森」へ向かい、30万の魔獣化された部下を招集した。晴人は5km四方もある大広場に、最新式の「大型貨物列車」を出して部下全員に直接見てもらうことにした。
「我が
と晴人タイガーが尋ねた。
「これはね、『大型貨物列車』というんだ。すごいスピードで動くんだよ。大きな武器や食料や人やお前たちが乗って7か国を何度も何度も往復する乗り物なんだよ。この乗り物は、丈夫な
「バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!」
「ヤッタゼー!お待ちかねの最高級の肉と酒だ!」
30万の部下たちは歓喜した。
晴人は、集まった30万人の魔獣たちにミニッツに教えてもらった手順をかみ砕いて分かりやすく伝えた。そして、30万の部下全員に拡大魔法地図を渡した。
「城壁と違って、線路が曲がっているだろう?7か国の国内の全ての都市を線路でつなぐんだ。お前たちのことを怖がらないように7か国の国王に頼んで周知徹底させておくから安心して作業に取り掛かってくれ。現場監督は、城壁をつくったときと同じ者に任命する。」
「7名の現場監督は、前に来て欲しい。」
「イエッ・サー!」
「イエッ・サー!」
「イエッ・サー!」
晴人は、自分の次元収納ストレージから20種類の橋を取り出した。
「ウワァァァァー!デカい!」
「何だ!こりゃあ、小さいぞ。」
「これはモデルになる橋だ。現場監督は、川の幅に応じて、ここで物体再現魔法を使って持って行って使用してくれ。それから、敷石の下の土と敷石を固めるプレートコンパクターとガソリンはここにおいておく。瞬間移動で取りに来て、物体再現魔法を使って増やして使ってくれ。敷石もここに置いておく。必要な量を物体再現魔法を使って増やしてほしい。おそらく、かなりの量を使うからな。それと電車のカーブでは二本のレールに炎魔法のガスバーナーと鉄の器具を使って少しずつ曲げていく必要があるんだ。実際にやって見せるからよく見ておけよ。こうやって少しずつ少しずつ曲げていくんだ。肝心なことは、常にレール幅を143cm5mmにすることだ。これは直線もカーブも変わらない。困ったときは、直ぐに俺に念話を入れてくれ。俺が加勢に駆けつけるからな。」
「イエッ・サー!」
「イエッ・サー!」
「イエッ・サー!」
「では、早速転移して、線路の設置作業に取り掛かってほしい。」
晴人は、城へ戻ると、スクリーン投影画像魔法を使って、「7か国軍事同盟」の会議を開いた。
「皆さん、パルナ・パーニャ共和国の大和晴人です。6人の国王陛下にお伝えしなければならないこととお願いしなければならないことがあります。まずお伝えすることは、遂に『万里の長城』が完成いたしました。最新鋭の武器も設置してございます。敵の各帝国軍が何百万人攻めて来ても一網打尽にすることができます。また、最新鋭の武器を持って7か国軍事同盟が攻め込めば、帝国軍は全て滅び、「フリースランド大陸」は人間と多民族が共存できる理想国家が誕生できます。」
「オオー!素晴らしい!」
「晴人国王陛下、本当にありがとうございました。」
「晴人国王陛下、これで安心して暮らすことができます。」
「実は、皆さんにまだ言っておかなかったことがございます。実は、この『万里の長城』は死の『骸骨の森』と恐れられた魔獣や魔人を私が無限の力を持つ『メビウスの輪』を用いて約30万の魔獣や魔人を部下に致しました。」
「なんと!あの最悪の森の魔獣や魔人全員を部下にしたのですか?」
「はい。したがって、あの者たちも『天』の使徒になります。そこで、現在、『大型貨物列車』を7か国の端から端まで走らせるために、土木作業をしております。『大型貨物列車』といってもピンとこないでしょうから、この映像をご覧ください。」
「オオー!何という大きさじゃ!しかも長いぞ!」
「これが開通すれば、物資や人や武器まで運べるというわけですね。」
「その通りです。商人たちも乗り込んで、各国の特産品や日用品などを持ち運んで商売をすることもできます。そこで、私は、死の『骸骨の森』に棲む魔獣や魔人たちを獣人化して労働をさせています。全国民のために働いておりますので、パルナ・パーニャ共和国の『天』の使徒である大和晴人の部下であると、国民たちに知らせて下さい。それから、ぜひ国王陛下自ら部下たちを連れて挨拶に行っていただけないでしょうか?あの者たちは、新鮮な牛やシカ、豚の肉を好んで食べますので、差し入れをして下されば、きっと喜ぶと存じます。私の部下は、7か国軍事同盟の中でも最大最強の部隊ですので今のうちに交流することをお勧めいたします。」
「オオー!我が国の特産品は、馬の肉じゃ。新鮮な馬の肉を届けましょうぞ。」
「我が国の特産品は、霜降りの牛肉ですぞ。新鮮な牛の肉を届けましょうぞ。」
「ありがとうございます。決して人に危害を加えません。なぜなら彼らも『天』の使徒になったからです。安心してお付き合いください。また、お酒の好きな連中ですので、夕方になったら美味しいお酒を届けて下されば、きっと喜ぶと思います。それからこれは別件になりますが、各国の軍隊から優秀な曹長を50人選んでもらって、パルナ・パーニャ共和国に派遣してください。武器の操作の習得には時間がかかりますので、よろしくお願いします。」
「晴人国王陛下、こちらこそよろしくお願いいたします。」
こうして7か国軍事同盟の会議は閉会した。
一方、その頃、ロジア大帝国にも5か国の帝国軍の国王とその参謀が集結し、軍事会談を開いていた。
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