第26話 晴人、無事に凱旋する

 ソフィーナとセオドア上皇とエリス上皇后と防衛軍事省副長官兼軍師のボレロは、国王会議室に残り、晴人と晴人タイガーと晴人フェンリルの帰りを待ち続けていた。


「遅い!帰還するのが遅い!晴人国王の身に何かあったのではないか!」


「あなた、不吉なことを言うものではありません。ソフィーナの不安な気持ちを推し量ってくださいませ!」


「おお、そうじゃったのお、ソフィーナ、申し訳ない。すまぬことを申した。許しておくれ。」


「お父様、お母様、ソフィーナは地球で晴人さんと晴人さんのお父様と侵略国へのスパイ活動をして参りました。スパイ活動でさえ、とても長い時間がかかるのです。ましてや、晴人さんと晴人タイガーと晴人フェンリルは、フリースランド大陸西側のアルメディア帝国軍とベラルシ帝国軍とイスラルド帝国軍を全滅させた上に、敵国の城と街を半壊させるのです。相応の時間がかかると存じます。お飲み物をお作りしますので、ソファーにかけて今しばらくお待ちくださいませ。ボレロもさぞや心配でしょうが、あなたもソファーに座って待っていてくださいね。お父様とお母様は紅茶でよろしいですね?ボレロはキリマンジャロでよろしいですね?」


「ありがとうね、ソフィーナ。あなた、ずいぶんとたくましくなったわね。」


「そうじゃのお、晴人さんが戦争に出陣すると泣いておったからのお。」


「ソフィーナ女王様、必ず、晴人国王は無事に帰って参ります。信じて帰りを待ちましょう。」


「はい。ありがとうございます。では、紅茶とコーヒーをつくりますね。」


 ソフィーナは、紅茶とコーヒーをれるとセオドア上皇とエリス上皇后に紅茶カップをテーブルの前に置き、ボレロのテーブルの上にコーヒーを置いた。


「カチャ、カチャ、カチャ、カチャ。」


 紅茶のカップと皿はかすかに揺れて音を立てていた。また、コーヒーカップも同じであった。


「ソフィーナ、そなた、」


 とセオドア上皇が言いかけると、エリス上皇后がセオドア上皇の口をとっさにフサいだ。エリス上皇后はとても小さな声でセオドア上皇に言い聞かせた。

「あなた、それ以上、言ってはなりません。ソフィーナは必死に耐えているのですから見守ってあげてください。」

「エリス、申し訳なかった。許しておくれ。」


 セオドア上皇もエリス上皇后もボレロも一見すると気丈夫に振舞っているソフィーナだったが、胸の内は不安な気持ちに押し潰されそうになっていることを察した。


 待つこと8時間、時刻は午後7時になろうとしていた。そのとき、晴人と獣人化したままの晴人タイガーと晴人フェンリルが突然、その姿を現した。


「パッ。」

「パッ。」

「パッ。」


 晴人の姿を見るや否や、ソフィーナが泣きながら晴人にしがみついてきた。

「晴人さーん!ウエエエエーン!ウエエエエーン!ウエエエエーン!」


「晴人国王、無事で何よりじゃ!」


「晴人ちゃん、お帰りなさい!」


「晴人国王陛下、ご無事の帰還、何よりでございます!」


「お父上様、お母上様、ボレロ、ご心配をおかけいたしました。ただ今、凱旋いたしました。」


「ソフィーナ、心配かけてごめんよ。本当にごめんよ。死なずに戻ったからね。」


「ウエエエエーン!ウエエエエーン!ウエエエエーン!ウエエエエーン!」


「よし、よし、いい子だから、もう泣かないで、ソフィーナ。」


「晴人さん、ご無事で何よりです。一分、一秒がとても長かったです。」


「ソフィーナ、待たせ過ぎちゃってごめんね。だからもう泣かないで。」


「はい。」


「晴人国王、そなたの両脇にいるのは、もしや、晴人タイガーと晴人フェンリルなのか?」


「はい、その通りです。『天』より頂いたユニバースソードを用いるために、獣人化になってもらいました。晴人タイガーは、アルメディア帝国軍を全滅させ、その城と街を半壊してくれました。また、晴人フェンリルは、イスラルド帝国軍を全滅させ、その城と街を半壊してくれました。2名とも大活躍です。」


 すると、セオドア上皇は、獣人化した晴人タイガーと晴人フェンリルに抱き着き、


「晴人タイガー、晴人フェンリル、ありがとう。ありがとう。さすが聖獣じゃ。そなたらの大活躍で西の帝国軍の脅威が無くなったぞ。本当にありがとう。」

 とお礼の言葉を贈った。


「ハハーッ。」


「ハハーッ。」


「さ、さ、勝利の凱旋じゃ!勝利を信じて、コック長にはディナーの席を設けさせておる。皆で夕食会じゃ。晴人タイガーも晴人フェンリルも同席するのじゃぞ。」


「ハハーッ。」


「ハハーッ。」




 パルナ・パーニャ共和国の国王の間で夕食のディナーパーティーが開かれていたちょうどその頃、南方諸国連合国のコアベイル連邦国とアルゴン連邦国とアレクサンデル連邦国では、3か国の国王と首脳陣がアルゴン連邦国の国王の間に集合し、緊急の軍事会議が行われていた。


「我々、南方諸国連合と東方諸国連合は、数百年に渡る友好国じゃ。人間至上主義を否定し、多民族国家として成立してきた国家じゃ。しかし、南方諸国連合は、あまりにも軍事力が弱すぎる。まさか聖バルト公国連合が1日も経たずに、西側の帝国連合軍に負けるなどとゆめゆめ思いもしなかった。そこで、東方諸国連合と軍事同盟を結ぶのはどうじゃろうか?」


「コアベイル国王、私もコアベイル国王の考えに賛同いたしますぞ。」


「アルゴン国王、私もコアベイル国王とアルゴン国王の考えに賛同いたします。我が国、アレクサンデル連邦国の諜報部隊の者たち全員が、パルナ・パーニャ共和国である大和晴人国王とその配下である聖獣のゴールデンサーベルタイガーと聖獣のイエローフェンリルが獣人化し、アルメディア帝国軍とイスラルド帝国軍を全滅させ、国の城と街を半壊させているのを確認しております。この情報は、コアベイル国とアルゴン国の諜報部隊の者たち全員が目撃していることと完全に一致いたします。これまで東方諸国連合とは、たんに友好国であり、貿易相手国でしたが、後、2、3年もすれば、アルメディア帝国軍とベラルシ帝国軍とイスラルド帝国軍が復活するばかりか、パルナ・パーニャ共和国の大和晴人国王が国力を半減させたヂャイナ帝国まで復活する恐れがあります。そうなれば、真っ先に潰される国は、南方諸国連合です。ここはぜひ、東方諸国連合にオモムき、軍事同盟を締結する必要があります。」


「アレクサンデル国王の言う通りじゃ。大賛成いたす。東方諸国連合の4か国と軍事同盟を結ぶいちばんの強みは、『天』の使徒であるパルナ・パーニャ共和国の大和晴人国王を味方につけることにある。全宇宙を司る『天』を敵に回して勝てる国や惑星など存在せぬ。我々が同盟を持ち掛ける立場である。しからば、我々全員が東方諸国連合の4か国に親書を早馬で送り、2か月後の6月14日に、パルナ・パーニャ共和国で7か国の軍事同盟を結ぶように致そう。」


「異議なし!」


「異議なし!」


「それでは、我々は国に戻り、親書を作成いたします。これにて失礼いたします。」

 




 夕食のディナーパーティーが終わると、獣人化した晴人タイガーと晴人フェンリルには、城にそれぞれに部屋が与えられた。2名とも大喜びであった。


 晴人とソフィーナは、食後、ゆっくりした後、お風呂に入った。晴人は相も変わらず湯船につかったまま体を洗うソフィーナの体をガンミしていた。それに気付いたソフィーナは、


「晴人さ~ん、いつもそんなに見つめて、あきませんか?」


「いや、あきないよ。」


「私、だんだん慣れて来て、恥ずかしくなくなりましたわ。」


「俺は、ずっと裸のソフィーナを見ていたいんだ。」


「晴人さん、地球の男性って、みんな奥さんの裸を見続けるのが趣味なんですか?」


「いや、俺だけ。」


「晴人さん、私の裸のどこが好きなのですか?」


「胸と背中と腰のラインとヒップと脚かな?」


「晴人さん、それって全部じゃないですか?」


「うん、全部。」


「はあ~。私は小さい頃からフェンシングを習っていたので、お尻と太ももとふくらはぎと足首が太くなっているのがいやです。」


「いや、お尻と太ももとふくらはぎと足首が太くなっているのが最高です。」


「キャハハ!晴人さんって、本当に面白い人ですね。わたしの嫌な部分も綺麗に見えちゃうのですね?」


「うん、全部美しいよ。綺麗だよ。じっと見ているから早く体を洗いなさい。シャンプーとリンスは俺がしてあげるから。」


「は~い。」

 シャンプーとリンスが終わると、晴人は風魔法の温風でソフィーナの金髪を乾かしてあげた。するとソフィーナが


「晴人さん、バスローブのままでベッドに行きます。すぐに来てください。話があります。」


「はい、分かりました。」

 晴人が、ベッドに行くとソフィーナは正座をして晴人を待っていた。そして、


「晴人さん、あなたの子供がほしいです。」


「ソフィーナ、それじゃあ、戦争に行けなくなるぞ。」


「晴人さん、よーく考えてみました。私は、人殺しの敵であっても敵を殺す自信がありません。これは、前からずっと悩んでいたことです。私が戦争に行くと、敵を殺すことを躊躇タメラって、その間に敵に殺されると思います。だから、私のような人間は、国を守れることはできません。その代わりに、晴人さんを幸せにすることができます。晴人さんを勇気づける家族をもちたいです。晴人さんと子供をいっぱいつくりたいです。そして、戦争から帰ってきた晴人さんを皆で迎えます。だから、あなたの子供が欲しいです。」


「ソフィーナ、その方が俺も安心だよ。」


「じゃあ、今夜からは、ちゃんと私の体の中にたくさん出してください。」


「分かりました。今夜からは、ちゃんとソフィーナの体の中にたくさん出します。」


「キャハ!嬉しいです!」

 そう言うと、ローブを脱ぎ捨てて晴人に抱き着くソフィーナであった。


 


 ※ その後のことは、皆さんのご想像にお任せいたします。


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