第19話 晴人とソフィーナ、地球へ新婚旅行 Ⅱ

 翌朝、起床すると晴人とソフィーナは、ミニッツにから地球の東京の座標軸を教えてもらい、「地球移動魔法」を用いて、転移した。


「ウワァァァァー!スッゴーイ!晴人さん、ここが地球の東京ってところですか?」


「うんそうだよ、ソフィーナ、驚いたでしょう?」


「馬のないカラフルな鉄でできた馬車に乗って人が移動しています。」


「あれはね、自動車って言うんだよ。」


「建物が全部大きくて高いですね。空に届きそうです。」


「あれはビルという建物だよ。人が中で働いていたり、物を売ったりしているんだよ。」


「ソフィーナ、朝食を食べに行こう。美味しいハンバーガーが食べられるところへ案内するよ。」


「晴人さん、ハンバーガーってどんな食べ物ですか?」


「ソフィーナ、信号が青だ!横断歩道を渡るよ!晴人はソフィーナの手をつないで信号を渡った。」


「ソフィーナに大切なことを教えておかなきゃね。今、青く光っていたところが信号って言うんだよ。人の歩くマークが青色に光っていただろう?そのときだけ渡ってもいいんだよ。でもね、居眠り運転をして車が突っ込んでくる場合もあるから、青信号でも右、左、右を見ながら、この線の引いてある横断歩道を渡るんだよ。」


「晴人さん、今、横断歩道の信号が赤になりました。すると、自動車が走り出しましたね。横断している人はいません。」


「ソフィーナは賢いね。横断歩道の信号が赤になったら、人は渡っちゃいけない決まりになっているんだ。大切なことだから覚えていてね。」


 晴人はソフィーナと手をつないで歩いていた。ソフィーナには「ソフィーナが迷子にならないように手をつなぐからね。」と説明したが、あれは建前で、ソフィーナと手をつなぎたいという気持ちが本音だった。晴人はソフィーナの手の感触が大好きだった。また、ソフィーナも晴人に手をつないでもらうのが大好きだった。


「ソフィーナ、ハンバーガーの説明をする前に、もうお店の前に着いちゃった。」


「ええーっ、これがハンバーガーのお店ですか?パンにお肉と野菜ははさまっているポスターがたくさんあります。」


「よし、中に入ろう。」


「はい。」


 晴人は速攻で大好きなチーズハンバーガーとコーラを頼んだ。しかし、ソフィーナは、どれを選べばよいか困っていた。

「ソフィーナ、ハンバーガーは僕と同じでいいかい?飲み物は、オレンジジュースにメロンソーダに、」


「晴人さん、私、晴人さんと同じチーズバーガーとメロンソーダに挑戦します。」


 晴人が会計を済ませ、しばらくまっていると、大きめのチーズバーガーとコーラとメロンソーダが運ばれてきた。


「ソフィーナ、ハンバーガーはこうやって食べるんだよ。」


「口を大きく開けてかぶりつくのですね。ウフフ。」


「そうだよ、やってごらんよ。」


「ア~ン。ムム。美味しいです。すごく美味しいです、晴人さん。感動しました。」


「ソフィーナが喜んでくれてよかった。どんどん食べてね。」


「はい。」


「ソフィーナ、のどがカワいたら、メロンソーダを飲むんだよ。メロンの味がして、美味しいよ。」


「あっ、本当だ、美味しい!晴人さん、シュワシュワ泡が出てきています。とっても気に入りました。」


「それは良かった。俺のコーラを飲んでごらん。」


「晴人さん、色が真っ黒ですね。飲んでみます。あっ、これも美味しい!」


「ソフィーナ、もっといろいろ注文していいからね。」


「はい、ありがとうございます。」

 結局、晴人とソフィーナは、チキンバーガーとバニラシェイクとストロベリーシェイクを追加注文した。


「美味し~い!チキンバーガーもストロベリーシェイクも最高です!」

 晴人は、ソフィーナの許しをもらって、スマートフォンでソフィーナの写真をたくさん撮っていた。「あ~、やっぱりソフィーナの笑顔って最高なんだよなあ~。こんなに笑顔が似合う人って他にいないよなあ~。ソフィーナの笑顔って本当に心が温まるんだよなあ~。」と内心、にやけている晴人であった。


「晴人さん、東京っていうところは、パルナ・パーニャ共和国でいうと、首都のパルナ・パーニャと同じだと言いましたよね。でも、住む惑星が違うとこんなにも違うのですね。」


「ここはね、東京の銀座っていう街なんだ。地球は文明が発達しているから、驚くことが多いでしょう?」


「はい、見るもの、食べるもの、住まいも建物も全部違いますね。晴人さん、私は驚きっぱなしです。」


「そうだよね。驚くのが当然だよね。でも音がうるさいでしょう。今度は静かなところに行って映画を見ようよ。」


「映画ですか?映画って何ですか?」


「う~んとね、つくりものの映像っていっても難しいよね。このビルの5階に映画館があるから行ってみようか?」


「はい、行ってみたいです。」



「ソフィーナ、ここが映画館だよ。」


「すごい!いろいろなポスターが貼ってありますよ、晴人さん。」


「ソフィーナ、この中から見たい映画を選んでいいよ。」


「ええっ、私が選んでいいのですか?」


「うん。ソフィーナに任せるよ。」


「じゃあ、これが見たいです。」


「ギョ、ギョッ。ソフィーナ、この映画はホラー映画といってとっても怖い映画なんだよ。」


「晴人さん、私は怖いもの好きなのです。だからこれがいいです。」

 晴人は内心、ソフィーナのことを心配したが、どうしても見たいというので、ホラー映画を見ることにした。


 場内が真っ暗になると、ソフィーナの体はビクッと反応した。そして、映画が始まるにつれて、晴人にしがみついてきたのだ。


「キャー!」


「キャー!」


「ソフィーナ、ねえ、怖いだろう?もう外に出ようか?」


「大丈夫です。私には晴人さんが守ってくれますから。」

 晴人は、思わず吹き出しそうになったが、笑うのをこらえた。


「キャー!ギャー!」

 ソフィーナは思いきり晴人にしがみついてきた。ソフィーナはホラー映画を見ながら叫んでいるのだが、晴人はソフィーナの胸が晴人の腕と胸に当たってくるので、ホラー映画の内容をそっちのけで、ソフィーナの胸の感触を味わっていた。「あ~、天国だ~。なんて張りのある胸をしているんだ。最高だあ~。」とエツヒタり、まさに自己満足の世界にいた。だから、晴人は後半の映画の内容を全く覚えていなかったのだ。



 やがて映画が終わると、城内に電気が付いた。ソフィーナがふと晴人を見ると、鼻血だらけになっていた。ソフィーナはティッシュでは間に合わないと判断し、タオルを晴人の鼻に当てながら映画館から出た。


「晴人さん、大丈夫ですか?」


「うん、ごめんね。このぐらい大丈夫だよ。もう止まったみたいだし。」


「晴人さん、鼻血がでるぐらい怖かったのでしょう。可哀そうに。」

 嘘の着けない晴人は正直にソフィーナに白状した。


「あのね、ソフィーナが叫ぶたびに俺の腕と胸に抱き着いてくるから、ソフィーナの胸の感触で鼻血が出ちゃったんだ。」


「ええーっ、本当ですか?」


「マジです。俺のマジはマジマジです。」


「キャハハハ、キャハハハ、晴人さんっておもしろいですね。私の胸にそんなに興奮するんですか?」


「はい。自分の意思では止められません。本能です。ソフィーナの胸は最高です。」


「キャハハハ、キャハハハ、晴人さんと一緒にお風呂に入ると、お湯が真っ赤になるし、ベッドに入るとシーツも真っ赤になりますものね、キャハハハ、キャハハハ。」


「ソフィーナ、笑い過ぎだ!それより、今度は遊びに行くぞ。」


「どこまで行くのですか?」


「この上だよ。」


「ええーっ、この建物の上で遊べるのですか?」


「ほら、手を貸して、手をつなぐよ。」


 すると、映画館の上は、ボウリング場になっていた。晴人は、ソフィーナに合うシューズとボールを選んだ。そして、投げ方のフォームを何度も教え込んだ。ついでに変化球の投げ方も自分の投げるフォームを説明しながら教えた。すると、天賦テンプの才なのか、ソフィーナののみ込みは早く、連続でストライクを出し始めた。しかも、フォームがプロ並みに美しいのだ。晴人は、自分の投げる分までソフィーナに投げるように伝えた。これには晴人の下心があった。ソフィーナのフォームがあまりにも美しすぎて、こっちを見ている方が楽しみなのだ。


「晴人さん、楽しいです、すっごく楽しいです!」


「ソフィーナ、腕が少し痛くなってきたんじゃないかい?」


「はい。少し痛いです。」


「よし、このゲームで止めにしてお昼ご飯を食べに行こう。」



 晴人が向かったのは、銀座でも外国人観光客が大勢訪れる高級回転寿司屋だった。行列ができていたが、晴人とソフィーナの2人だったため、優先的に早く席に座ることができた。


「晴人さん、お寿司が回っています。これは機械で回っているのですか?」


「そうだよ、機械で回っているんだよ。このメニューから自分の食べたい物を選ぶとね、自動的に自分たちのいる場所に届けてくれるんだ。お寿司には、ワサビといってピリッと辛いものが入っているんだけど、ソフィーナはワサビを抜くかい?」


「いえ、辛いものが好きです。ピリッとくるものも好きです。だからワサビ入りでお願いします。晴人さん、取り敢えず、ここからここまでのお寿司を注文してくださいませんか。口に合わないと思ったら、晴人さんに食べてもらっていいですか。」


「うん、そのアイディアいいね。そうしよう。」


 すると、次から次に来るお寿司を

「美味し~い!お魚も美味しいし、ご飯も美味しい!」

 と言ってソフィーナが全て食べてしまったので、


「ソフィーナ、俺も注文していいかい?」


「あっ、ごめんなさい、晴人さん。私が全部食べるから何も食べていなかったのですよね。本当にごめんなさい。晴人さんの食べたい物を注文してくださいね。私も自分で食べたいお寿司を注文しますから。」


「うん、ありがとう。そうしようか。」

 そう言って、二人は満腹になるまでお寿司を堪能タンノウした後、ブランドのブティックへソフィーナの洋服を買い物に出かけることにした。


「ウワァァァァー!スッゴーイ!綺麗なお洋服ばかりですわ。」

 そこへ店員が現れると、


「お客様は外国の方ですね、お顔もスタイルも金髪もとてもお美しいです。」

 ソフィーナとは地球に来る前に、フランス人と答えるように伝えておいたので、ソフィーナは機転を利かせて、


「フランスにいるより、こちらのお洋服が美しいですね。」

 と応えた。


「そちらは、イタリア製のブランドになります。お好きなお洋服を選んでこの場所でお着換え下さい。」

 ソフィーナは、自分が気に入った洋服を何着も選び、試着したが、どの洋服も気に入ってしまい、選ぶのに困っていた。その様子を見ていた晴人が、


「ソフィーナ、全部買うぞ。」

 と言って、全部買い上げてしまった。


「晴人さん、申し訳ありません。お金は大丈夫ですか?」


「ソフィーナの気に入った服は全部買ってあげたい。お金は大丈夫だ。心配しなくていいよ。」

 晴人は買い上げた洋服をそっと次元収納ストレージの中にしまい込んだ。



 その後、二人はタクシーに乗って、晴人が一度は泊まりたいと思っていた日本でも有数のホテルに向かった。



 

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