第20話 晴人とソフィーナ、地球へ新婚旅行 Ⅲ

 晴人は、ホテルに着くとロビーの受付に向かった。


「大和晴人と大和ソフィーナです。」


「ご予約は承っております。こちらへサインをお願いします。」

 晴人はサインを済ませると、ホテルのスイートルームへ案内された。


「大和様、こちらです。どうぞごゆっくりなさってください。」

 晴人はお礼を言うと、ボーイへチップを渡した。


「さあ、ソフィーナ、ここのホテルのいちばん豪華な部屋だよ。」


「ウワァァァァー!スゴーイ!とっても広くて美しい部屋ですわね。」


「スイートルームっていう新婚さん用の部屋だよ。」

 晴人とソフィーナは手をつないだままでスイートルームを見て回った。


「晴人さん、このお風呂から外の景色が見えますよ。」


「うん、ここのホテルの夜景は綺麗なんだよ。」


「晴人さん、私が『完全治療魔法』を使って晴人さんの鼻の傷を治しますから一緒にお風呂に入りましょうね。」


「ソフィーナ、ありがとう。そうしてもらえると助かるよ。ソフィーナ、取り敢えず荷物をしまおうか。」


「はい。」

 荷物を整理し終えると、


「晴人さん、ベッドに横になりませんか?」


「うん、いいよ。」


「すごく居心地のいいベッドですね。ダブルベッドだけどもっと広いですよ。」


「本当に広いベッドだね。寝心地も最高だ。」

 あまりの寝心地の良さに、二人は手をつないだまま寝入ってしまった。


「リン、リン、リン。リン、リン、リン。」


 備え付けの電話が鳴った。晴人は急いで電話に出た。

「晴人様、夕食のご用意ができました。いつでもお越しください。」


「はい、ありがとうございます。」


 ソフィーナも電話の音で目を覚ましていた。


「ソフィーナ、ディナーの用意ができたそうだから着替えて行こう。ソフィーナ、ドレスを着ていいよ。ここのディナーはドレスを着るんだ。」


「はい。」


 ソフィーナは、身支度を整え、化粧を済ませるとドレスに着替えた。晴人もスーツに着替え、ソフィーナのドレスの背中のチャックを上げた。


「ソフィーナ、綺麗だよ。ドレスがすごく似合っているよ。」


「晴人さんに褒められると嬉しいです。ありがとうございます。」


 ディナー会場へ行くと、正装した多くの人たちが集まっていた。その中でも、ソフィーナの美しさは際立っており、会場中の注目の的になっていた。


「ソフィーナ、あなたのあまりの美しさに皆、目が釘付けになっているだろう?」


「恥ずかしいですわ。」


 二人は、ピアノの演奏やバイオリンの演奏を聞きながらフランス料理のフルコースを食べた。ソフィーナは全ての料理の美しさと美味しさに感激していた。晴人はそれが嬉しかった。その後、二人はスイートルームに戻り、着替えを済ませると、しばらく時間をおいてから、入浴した。


「晴人さん、鼻血が止まって良かったですわ。」


「ありがとうね、ソフィーナ。それにしても夜景が綺麗だね。」


「はい、空の星より綺麗ですわ。それにこのお風呂はすごいですね。お風呂の中からお湯や泡が出て腰が気持ちいいです。」


「本当だね。」

 ソフィーナは外の夜景の美しさに見とれていたが、晴人はソフィーナの裸の美しさに見とれていた。それにようやく気付いたソフィーナが、


「晴人さん、私の裸をそんなに見つめないで下さい。恥ずかしいですわ。」


「ソフィーナ、前にも言ったじゃないか。ソフィーナは宇宙一綺麗だって。俺はソフィーナの夫なんだから独り占めにしたっていいだろう?」


 体を洗った後、晴人はソフィーナに一つのお願い事を伝えた。


「ソフィーナ、体を拭いたら、バスローブのままでベッドにいってもらえないかな。」


「晴人さん、どうしてですか?」


「もっとソフィーナを見たいから。お願いします。」


「はい。分かりました。」


 二人はスイートルームのダブルベッドに上がると、晴人がバスローブを脱ぐように言った。ソフィーナは顔を真っ赤にしながらバスローブを脱いだ。


「晴人さん、恥ずかしいです。お部屋の電気を消してください。」


「だめだ。それじゃあ、ソフィーナの裸が見えないじゃないか。」

 晴人は高校と大学で美術部に所属していた。様々なものをスケッチしたが、石膏セッコウでできた裸婦像を描くのがいちばん好きだった。無心になってスケッチに没頭できたからだ。晴人は、ソフィーナに様々なポーズを取ってもらった。そして、しばらくの間、声も出さずにずっと見つめ続けるのだ。ポーズを変えるごとに独り言のように、


「ソフィーナ、綺麗です。美しいです。そのまましばらく動かないで下さい。」

 とお願いして、マバタきもせず、裸のソフィーナをじっと見続けるのだ。


「ソフィーナ、ご協力ありがとうございました。やっぱりソフィーナは宇宙でいちばん美しいです。俺はソフィーナの裸をいろいろな角度から見るのが大好きです。本当にありがとうございました。」

 そう言い終えると、裸のままのソフィーナが飛びついて来た。そして、それから夫婦の営みが始まった。夫婦の営みが始まると、晴人は決まっていつも思い出す言葉があった。それは父から教わった言葉だった。


「晴人、お父さんは夫婦の営みの大切さを親友から教わった。それを晴人に伝えておく。○○○は、あなたをどれだけ愛しているかという気持ちを、晴人の体の全部を使って相手に伝える作業なんだ。だから、前技に40分から1時間使いなさい。愛する人を喜ばせてあげるのが愛です。だから、・・・。」


 晴人は、父親の彰の言葉を大切にしようと思い、教わった通りのことを真心を込めて、自分の体の全てを使って表現した。前技を終えて、山場を迎えても、その心構えは変わらなかった。晴人が○○し終えて10分ほど余韻にひたった後は、ティッシュとタオルを使って、ソフィーナの体を綺麗に拭き、ソフィーナに感謝の気持ちを込めて、体の隅々までマッサージするのだった。


 ソフィーナは利発で思考力や相手の気持ちを推し量る能力にけていた。だから、晴人が自分をどれだけ愛しているのかを理解することができた。すると本能的にソフィーナも晴人のように自分が晴人をどれだけ愛しているのかを体全身を使って表現した。山場を迎え終えて、晴人にマッサージをしてもらったら、とても心地よく体のこりがほぐれた。だから、必ず、ソフィーナはお返しとばかりに晴人のお尻に乗り、背中をマッサージするのだった。だから、二人の夫婦の営みはとにかく長かった。長いがゆえに満足感も十分に満たされ、心地よい眠りにつくことができた。

 その日の夜も、ソフィーナは裸のままで晴人にしがみついたままいつものようにすやすやと眠むった。晴人もソフィーナの顔をしばらく見続けるといつの間にか深い眠りにつくのだった。




 翌朝、晴人とソフィーナは奈良と京都へ観光旅行に向かった。晴人は、無限の力を持つ『メビウスの輪』を用いて、晴人の記憶している歴史や地理的な情報をソフィーナにインプットしてあげた。するとソフィーナに変化が起きた。新幹線にも驚かなくなったし、奈良の大仏や金閣寺、銀閣寺、清水寺などの名所旧跡に行くと、案内図や説明掲示板の文字を読みながら、「なるほど、そういうわけですのね。」と興味や関心の方が高くなっていた。


「晴人さん、今の私の住んでいる惑星のように、日本にも戦国時代というすごいイクサがあったのですね。金閣寺ってすごいですね。とても豪華です。感動しましたわ。」


「ソフィーナは、すごいね。とても偉いよ。日本の歴史に興味や関心を持ってくれてありがとうね。」


「はい。晴人さんのおかげです。惑星『フリースランド』も侵略戦争が早く終わって日本のように平和になってほしいです。」


「そうだよね。侵略戦争をなくして、平和な国にしようね。」


「はい。」


 その日、二人は京都に宿泊し、翌朝、新幹線で福岡の博多で降りた。ソフィーナに博多ラーメンを食べてもらうのが目的だった。


「ソフィーナ、着いたよ。このお店が有名な博多ラーメンのお店だよ。さあ、中に入ろう。」


「う~ん、美味し~い!晴人さん、初めての味ですけど、とっても美味しいです。」


「俺も博多ラーメンは久しぶりに食べたけど、やっぱり美味しいね。」


「晴人さん、このスープは何でできているのですか?」


「豚骨だよ。豚骨にたくさんの野菜を入れてスープを作るんだよ。」


「豚骨でこんなに美味しいスープが作れるのですね。すごいですわ。」


 二人は、博多ラーメンを食べ終えると、再び新幹線に乗り、晴人の実家がある鹿児島へ向かった。鹿児島に到着すると電車を乗り継ぎ、晴人の実家のある霧島キリシマ市に向かった。電車の中でもソフィーナの美しさは目立っていた。晴人に声を掛けてくるおばさんもいた。


「おはんの奥やっとけ?」※「あなたの奥さんですか」という意味


「はい、そうです。」


「まっこて、みごてもんじゃ。」 ※「本当に、うつくしいですね」という意味


「どこん、国じゃろか?」 ※「どこの国の出身でしょうか?」という意味


「フランスです。」


「うんにゃ、おったまげた。」※「まあそれは驚きました。」という意味


 晴人とソフィーナは、霧島キリシマ市の隼人ハヤト駅で降りた。


「さあ、ソフィーナ、俺の実家まであと10分だよ。」


 重い荷物を持っていたので、二人はタクシーに乗り込んだ。

「着きましたよ。」

 タクシーの運転手は、トランクから荷物を取り出してくれた。


「あ、おつりは結構ですよ。」


「ありがとうございます。」

 タクシーの運転手はそう言うと、行ってしまった。


「ほら、この家が僕の実家だよ。」


「晴人さん、純和風のおうちですね。綺麗です。」


 そう言うと、二人は手をつないで玄関に向かった。ソフィーナは平然を装っていたが内心はドキドキが止まらなかった。

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