第16話 晴人VSキムジョン軍10万人 Ⅱ
「晴人さん、どうするおつもりですか。」
「単騎で乗り込んでやる。1VS10万の戦争だ。」
「やめて下さい!危険すぎます!晴人さん、無謀すぎます!やめて下さい!」
「大丈夫だ、心配するな。」
ミニッツとの念話のやり取りを聴いていたソフィーナは、泣いていた。
「晴人さんが、晴人さんが、晴人さんが死んじゃう!イヤダー!ダメ!ダメ!ダメ! 絶対に行っちゃダメー!」
ソフィーナの鳴き声に気付いたメイドが、城内の職員たちにソフィーナの異変を知らせるとともに、セオドア上皇とエリス上皇后を呼びに行った。すぐに、城内の者たちは集まり、セオドア上皇とエリス上皇后も駆け寄ってきた。
晴人は、泣き崩れて芝生の上に腰を抜かして座り込んでしまったソフィーナを抱きしめながら、優しく声をかけた。
「ソフィーナ、必ず生きて帰って来る。俺は約束は守る漢だ。マジに生きて帰って来る。俺のマジは、マジマジだ。だから、大丈夫だ、心配するな。」
「晴人殿、一体何があったのじゃ。」
とセオドア上皇が心配そうに声を掛けた。
「セオドア上皇とエリス上皇后、それから城内のみなさん、キムジョン帝国が北の山脈にトンネルを掘り、10万人の軍隊でロンバルド共和国に侵略戦争を仕掛けている真っ最中です。パルナ・パーニャ共和国の軍隊を向かわせても4日かかります。キムジョン帝国はその後、ローニャ平原を越えてパルナ・パーニャ共和国へ侵略してくる危険性があります。また、ロジア大帝国も襲ってくるかもしれません。パルナ・パーニャ共和国の軍隊はボレロに指揮を執らせ、ローニャ平原に向かうように指示を出しました。みなさんに隠していたことがあります。私は、『骸骨の森』に追放された後に、『骸骨の森』の魔人や魔物の『王』になりました。時間がないので、その経緯は省きますが、パルナ・パーニャ都市の城壁に、私の部下である魔獣や魔人たちを守備に就かせます。また、城内の外門にレッドドラゴンを1匹と城内の中庭にブラックドラゴンを1匹守備に就かせます。万が一、何かが起きたら私の有能で強い部下たちが皆さんを守ってくれます。彼らを私が今から呼び出しますが、怖がって大声を出さないで下さい。みなさんの命を守る味方です。安心してください。では、瞬間魔法で呼び出します。声を出さないでくださいね。」
「晴人ブラックドラゴン、晴人レッドドラゴン、今すぐ城内に転移して来い。理由は後で話す。」
「イエッ・サー!」
「イエッ・サー!」
「パッ。」
「パッ。」
「我が主よ、一体どうなされました。」
「我が主よ、緊急事態なのですね。」
「晴人ブラックドラゴン、晴人レッドドラゴンよく来てくれた。キムジョン帝国が北の山脈にトンネルを掘り、ロンバルド共和国に侵略戦争を仕掛けている。今の状況では、ロンバルド共和国は滅びるだろう。俺が出陣して、キムジョン帝国を勧善懲悪して来る。万が一のことを考え、晴人レッドは、城の外側の守備を頼む。晴人ブラックは、城の中庭で守備を頼む。それから、晴人ブラックに頼みがある。『骸骨の森』の
選りすぐりの猛者たちにこのことを知らせ、パルナ・パーニャ都市の城壁の守備に就くように命じてくれ。」
「我が主よ、ひとりで行くのは危険です。我々ドラゴン一族だけでも連れて行って下さい。」
「ありがとうな。晴人ブラック。だが、そなたたちの存在を見たら、ロンバルド共和国の国民は、大パニック状態になるであろう。もっと早くに国内外の国民たちにそなたらが、俺の部下であり、『天』の使徒であることを伝えておくべきだった。どうか俺の過ちを許してくれ。後のことは頼んだぞ。俺はひとりでも大丈夫だ、安心しろ。
万が一、キムジョン帝国やロジア大帝国が城内に攻撃を仕掛けてきたら、城のみなさんの命を守ってあげてくれ。」
「ハハーッ。」
「ハハーッ。」
「セオドア上皇とエリス上皇后、ソフィーナのことをよろしくお願いいたします。」
「うむ。分かり申した。」
「はい。分かりました。晴人さん、生きて戻って来るのですよ。」
「はい。」
「ソフィーナ、必ず生きて帰って来る。大丈夫だ。心配するな。」
晴人が、ソフィーナに声を掛けると、ソフィーナは立ち上がって、泣きじゃくった。
「ウエエエエーン!ウエエエエーン!ウエエエエーン!ウエエエエーン!」
晴人は、ソフィーナを強く抱きしめながら、ソフィーナの背中と頭を優しく
「ソフィーナ、必ず生きて帰って来るから、大丈夫だ。心配するな。いつまでもソフィーナが泣いていちゃ、城のみんなが不安になるぞ。」
そう声を掛けると、ソフィーナは途端に泣き止んだ。
「我が主、私もお供します。」
と晴人タイガーが声を掛けた。また、晴人フェンリルも
「我が主、私もお供します。」
と晴人に声を掛けた。
「晴人タイガーと晴人フェンリルよ、今回は、後手に回ってしまった。ゆえに、城内に暗殺者が来るかもしれない。セオドア上皇やエリス上皇后、ソフィーナ、赤子の第二王女、城内の皆さんの命を守ってほしい。頼む。」
「イエッ・サー!」
「イエッ・サー!」
すると、城の皆が見ている面前で、ブラックドラゴンの戦闘服に変身し、腰にユニバースソードを携えた。
「では、皆さん、出陣いたします。」
「スッ。」
「ああ~、晴人殿が消えてしもうた。」
「あなた、もう晴人さんは、戦争に行ったのです。皆さんでお祈りをしましょう。」
「パッ。」
「細胞再生魔法、治癒魔法、完全治療魔法、疲労除去魔法、身体強化魔法、超高速攻撃魔法、高速物体スロー再生魔法、無音無臭魔法、超高速移動魔法、空間飛行魔法、防衛用バリア魔法を付与!」
今回の戦争のレベルじゃ防衛用バリア魔法だけで十分だ、透明化になる必要はないと判断した。
「ミニッツ、大砲の設置されている場所へ俺を転移させてくれ。」
「ラジャー!」
「スッ。」
「パッ。」
「貴様、何者だ!」
「キエーイ!」
「グサッ!バタン!」
「貴様、何者だ!」
「キエーイ!」
「グサッ!バタン!」
「ミニッツ、ここにある大砲が全てか?」
「はい、そうです。」
「よし、分かった。」
晴人は、襲い掛かって来るキムジョン帝国の兵士を次から次に薩摩示現流で斬り倒していった。そして、大砲の前に立った。
「これが大砲か。居合斬りの『抜き』技でやるか。」
「スッ。」
「ドドン、ボッカーン!」
「スッ。」
「ドドン、ボッカーン!」
「スッ。」
「ドドン、ボッカーン!」
晴人は、山脈前の平地からロンバルド城とその周囲の街を破壊していた大砲20門を全て真っ二つに斬り、自爆させた。
「ミニッツ、鉄砲隊の陣地へ案内してくれ。」
「晴人様、敵の鉄砲隊は長さ20キロメートルの
「分かった。では、敵の
「ラジャー!」
「スッ。」
「パッ。」
「お前は、何者だ!おい、皆、
「キエーイ!」
「グサッ!バタン!」
「ミニッツ、敵の鉄砲隊は何人いるんだ?」
「はい、5万人です。」
「敵は塹壕の中に3列に並んで交互に射撃しているなあ。5万人もいると、薩摩示現流の居合斬りでは間に合わないなあ。超高速移動魔法を使いながら最も西から最も東の塹壕まで、風魔法の真空エアーカッターで斬り倒していくかなあ?」
「はい。効果的だと思います。」
「よし、それでは参る。」
「ビュン!スパッ!バタン!スパッ!バタン!スパッ!バタン!スパッ!バタン!」
「ビュン!スパッ!バタン!スパッ!バタン!スパッ!バタン!スパッ!バタン!」
「ビュン!スパッ!バタン!スパッ!バタン!スパッ!バタン!スパッ!バタン!」
キムジョン帝国の鉄砲隊の兵士たちは塹壕内で大パニックになっていた。晴人の超高速移動魔法によって、姿が見えないため、「鎌イタチ」の魔物が
すると、
「鉄砲隊長!敵の塹壕で異変が起きています。大声で何かを叫びながら塹壕から逃げ出しています。」
「なに、チャンスではないか!撃て!撃て!撃て!敵を撃ちまくれ!全員、撃て!」
「パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!」
塹壕から逃げ出した鉄砲兵たちは次々にロンバルド共和国軍の鉄砲兵に撃たれていった。
「よし、鉄砲兵、完了。ミニッツ、あと、白兵戦で生き残っている敵の数は何人いるんだ?」
「キムジョン帝国の兵士は残り約3万5千人です。」
「エアーカッターを使うと、ロンバルド共和国軍の兵士を斬る可能性もあるな。他の魔法もそうだ。よし、空中からレーザービーム魔法でピンポイントで狙い撃ちをしたり、集団でまとまっていたら、線を描いたりしながら斬り捨てていくしかないな。」
「はい、私も賛成です。」
「ミニッツ、その前に、ミニッツに尋ねたいことがあるんだ。この惑星『フリースランド』の人間や多民族、魔獣、魔人たちは、『天』の存在を知っているのか?また、『天』の存在をどう思っているんだ?」
「はい、この惑星『フリースランド』の者は、全ての者が『天』の存在を知っています。全宇宙を司っているものとして恐れています。したがって、『天』を敵に回すことは、全宇宙を敵に回すことだということを知っています。宇宙で最強で恐ろしい存在が『天』であると信じています。」
「それを聞いて、安心したよ。敵の兵士たちへ恐怖心を植え付けてやるからな。」
「晴人さん、それはとても効果的な方法です。」
すると晴人は1kmほど上空に上がり、「大拡声器魔法」を使って叫んだ。
「我は、パルナ・パーニャ共和国の国王にして、全宇宙を司る『天』の使徒である。『天』がこの惑星『フリースランド』で起きている侵略戦争をお怒りになっている。
そこで、『天』が我に侵略国家への『勧善懲悪』を命じられた。よって、キムジョン帝国の大砲も全て斬り捨てた。鉄砲隊の兵士たちも全て斬り捨てた。後、残るのは白兵戦をしている兵士だけである。今から『天』の使徒の攻撃をその目で確かめよ。」
「では、参る。」
「ピュ!バタン。ピュ!バタン。ピュ!バタン。ピュ!バタン。ピュ!バタン。ピュ!バタン。ピューウ、ピューウ!バタン。バタン。バタン。バタン。バタン。」
「おい、『流れ星』攻撃で次々に味方が死んでいくぞ!こんな攻撃は初めてだぞ。本当に『天』の使徒だ!『祟りだ!祟りだ!『天』のお怒りだ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!全軍撤退だ!」
「『天』の使徒から逃げられるものか!『必殺!散弾追尾レーザービーム!』を喰らえ!」
「ピ、ピ、ピ、ピ、ピューン!バタン。バタン。バタン。バタン。バタン。」
「オオー!何ということだ!『流れ星』攻撃は、一人ひとりを追いかけて行って、体を貫いているぞ、しかも、一発の攻撃で千人以上倒しておるぞ。」
ロンバルド共和国軍で指揮を執っていたローゼン陸軍総大将が驚いた。
「敵は背中を向けて逃げ出したぞ!騎馬兵団、追いかけて背中を斬り捨てて参れ!」
「ハハーッ。」
晴人はなおも大拡声器魔法で恐怖心を植え付けていった。
「お前らは、何の罪もない善の国に侵略戦争を仕掛けた悪である。よって、『天』の代わりに、『天』の使徒であるパルナ・パーニャ共和国の大和晴人がお前たちを勧善懲悪致す。」
「ピ、ピ、ピ、ピ、ピューン!バタン。バタン。バタン。バタン。バタン。」
「ピ、ピ、ピ、ピ、ピューン!バタン。バタン。バタン。バタン。バタン。」
「見よ!敵兵たちが全員トンネルの中に逃げ込んだぞ!騎馬兵団に追撃を止めるように伝令せよ。」
とローゼン陸軍総大将は指示を出した。
「ミニッツ、トンネルに入り逃げるのに成功したものは何人だ?」
「はい、約3千人です。」
「3千人も入れば、国中に噂が直ぐに広がり、パニックになるだろう。それが、ロジア大帝国やジャイナ帝国に伝わっていく。善い抑止力になると思うが、ミニッツはどう思う。」
「はい、目撃者が3千人ともなれば、キムジョン帝国もロジア大帝国もジャイナ帝国もしばらくは恐怖心でおびえ、手出しできなくなります。しかし、長距離砲が完成すれば、攻撃してくる可能性があります。長距離砲完成まであと1年です。その前に、軍事工場を破壊する必要があります。」
「うむ。よく分かった。」
まだ、戦果を知らぬロンバルド共和国王やセオドア上皇とエリス上皇后、そして、
ソフィーナは両手を合わせて晴人の無事を祈るばかりであった。
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