第9話 晴人、内政と外交を強化する
翌朝、晴人は朝食を済ませ、王の執務室に入ると、キリマンジャロを淹れ、大きなマグカップでキリマンジャロの香りと味を堪能していた。すると、「天」の息子であるとともに、晴人の参謀役であるミニッツから念話が入った。
「おはようございます。ミニッツです。晴人さん、この後、パルナ・パーニャ共和国の国王としてどうなさるおつもりですか?」
「うむ。有能な在野の士は確保できた。そこで、各省庁の長官と副長官を呼び出し、内政会議と外交会議を行おうと考えている。」
「おお、それは善き考えです。ぜひ、そうなされてください。困ったことがあればすぐに念話でご相談ください。」
「うん、ミニッツよ、助かるよ。ありがとう。」
早速、晴人は各省庁の長官へ念話を入れ、内政会議と外交方策会議を行うことにした。
その1時間後には、各省庁の長官と副長官が国王の会議室へ全員が集合した。
「では、改めて各関係省庁の長官は、長官名と副長官名の紹介を頼む。」
「国家警察庁長官、鬼人族のレッドンと鬼人族の副長官のゼドルです。」
「情報戦略省長官、ジェットと副長官、龍人族のドラゴルです。」
「防衛軍事省長官、大和晴人である。副長官兼軍師は、ボレロ執事である。」
「課税徴収省長官、龍人族のゼムトと副長官、鬼人族のダニエルです。」
「財務省長官、ジョンと副長官、マイケルです。」
「教育省長官、メアリーと副長官、パトリシアです。」
「農業振興省長官、ハイオーク族のマークとホブゴブリン族のビリーです。」
「用水路整備省長官、ハイオーク族のジェラルドと副長官、同族のエリックです。」
「道路整備省長官、ハイオーク族のゴルドと副長官、鬼人族のジャックです。」
「上下水道省長官、ドワーフ族のライアンと副長官、同族のガイロです。」
「国家法律整備兼裁判省長官、ロバートと副長官、リチャードです。」
「病院治療省長官、ハイエルフ族のリリアと副長官、エミールです。」
「それでは、進行は、ボノに代わりまして、新しく任命された防衛軍事省副長官兼軍師兼執事であるボレロが進めます。まず、内政面ですが、各関係省庁の長官と副長官のデスクに中に入れていたマニュアルがあると思います。そのマニュアルは全て、各関係省庁別にそれぞれの課題や問題解決策を国王陛下である大和晴人様が記載されたものでございます。それに則り、内政を勧めていただきたいと存じます。質問を受け付けますので、各省庁名と氏名を述べてから、質問をして下さい。」
「はい、用水路整備省長官、ハイオーク族のジェラルドです。工事を進めるときに必要な重機の種類や役割、名前、部品名や各重機の操作マニュアルの冊子を数種類いただいておりますが、マニュアルを一見すると操作の手順に腰が引けてしまいます。例えば、パワーショベルやユンボ、ホイールローダー、各クレーン車、大型ダンプトラック、ダンプトラック、ローダーダンプなど多岐に渡っており、短期間での操縦の習熟に相当の時間がかかりそうであります。どのような手立てや工夫があるのか教えていただきたいと思います。」
「はい!農業振興省長官、ハイオーク族のマークも同意見です。」
「はい!道路整備省長官、ハイオーク族のゴルドも同意見です。」
「はい!上下水道省長官、ドワーフ族のライアンも同意見です。」
「うむ。まず、用水路整備省長官、ハイオーク族のジェラルドや農業振興省長官、ハイオーク族のマーク、道路整備省長官、ハイオーク族のゴルド、上下水道省長官、ドワーフ族のライアンに感謝の意を表したい。短期間でそこまで詳しくマニュアルを呼んでくれたことにレイを言う。ありがとう。そなたらが指摘することは正常な反応である。決して間違ってはおらぬ。さすがであるぞ。この問題を超短期間で解決するには、俺がもっている無限の力をもつ『メビウスの輪』を使って、運転する者、操縦するものすべてにマニュアル通りに適切に操縦できる能力を付与してやる。まだ、各省庁の人員はかなり不足している。そこで、1か月の期間を与える。
「今の国王の回答に質問はございませんか?」
「無いようですので、次の質問に移ります。他にないでしょうか?」
「はい!財務省長官、ジョンです。国王は、各関係省庁からその都度、欲しい予算の申し出があれば、必ず国庫から支出せよとマニュアルに書いたございましたが、この
パルナ・パーニャ共和国にそのような国庫資金はないと考えるのですが、晴人国王陛下のお考えをお聞かせください。」
「うむ。正直に言おう。国庫の財源は、私の持ち金である。そなたらは、俺の物事の事象や出来事の真実を見抜く『天啓の瞳』によって選ばれた者たちである。よって、横領などはせぬ。俺は『天』の使徒である。国庫資金に回す財源は十分にある。俺は自分の身を削って資金をそなたらに渡す覚悟ができている。よって、予算や支出の件は、ジョン、お前に全権を委ねるものとする。俺はお前を信じる。」
「ハハーッ。」
「他に質問はございませんか?」
「はい!教育省長官、メアリーです。晴人国王陛下が書かれたマニュアルを読みますと、この国の識字率は3割にも満たないため、各村の集会所に朝は15歳未満の子供たちに読み書き計算を教え、夕食後の午後9時から15歳以上の者を集め、読み書き計算を教えよとありますが、この国では子供たちも農業を担っております。集まらない場合、どのような手立てや工夫があるのか教えて下さいませ。」
「うむ。メアリー教育省長官、善い点を見抜いたな。偉いぞ。正直に申せば、俺はその手立てや工夫をマニュアルに書き忘れておった。メアリーよ、この国では銀貨1枚が1万ゼニーだ。参加者には、子供から大人まで百ゼニーコインを渡しなさい。そうずれば、喜んで学問を受けるだろう。」
「ハハーッ。」
「他に質問はありませんか?」
「はい!病院治療省長官、ハイエルフ族のリリアです。この国には30人の貴族がおられ、その30か所に病院を建設するとなっておりますが、完成の目途はいつごろになりますでしょうか?それからこの国では、晴人国王陛下もご存じのように治療魔法を使って病気やケガを治してまいりましたが、その治癒魔法は、ハイエルフとエルフにしか使えません。私は人間にもその魔法を付与し、患者の病気やケガを治す者を増やしたいと考えるのですが、いかがなものでしょうか?」
「うむ。ハイエルフ族のリリアよ、そなたはこの国の宝のようだ。俺の前に参れ。そなたに、人間にも治療ができるような魔法を付与できる能力を与えて進ぜよう。」
「は、はい。」
「そなたは、女性であるが、俺の額をそなたの額に付けて良いか?」
「は、はい。」
すると、参加者全員が興味深そうに見ている前で、晴人は自分の額をリリアの額に軽く当てた。すると、晴人の頭から虹色のオーラが現れ、リリアの頭の中に吸い込まれていった。
「完了だぞ、リリア。成功だ。副長官、エミール、そなたは人間だ。前に参れ。」
「ハハーッ。」
「リリア、エミールは人間だ。俺がそなたにした通りのことをエミールにしてやってくれ。」
「ハハーッ。」
すると先ほどと同じ現象が起き、エミールの頭の中に虹色のオーラが吸い込まれていった。
「では、ここにいる全員に尋ねる。今、病気やケガで困っている者はおるか?」
「はい!財務省副長官のマイケルです。
「では、包帯をとって、前に参れ。」
「ハハーッ。」
「エミール、右手を傷口にかざして『治癒魔法』と唱えなさい。」
「はい。『治癒魔法!』」
「スッ。」
「あれ!治りましたぞ!傷口が治りました!」
そう言って、マイケルは傷口を皆に見せた。
「オオー!あれほど深い傷が治っているぞ!」
「奇跡だ!人間が治癒魔法を使えたぞ!」
会議室の全員がどよめいた。
「ありがとうございます。エミールさん。」
「いいえ、どういたしまして。これも全て、晴人国王陛下とリリア様のお陰です。本当にありがとうございました。心より感謝いたします。」
「うむ。では、3人とも席に座りたまえ。」
「ハハーッ。」
「リリアよ、もう既にこの俺が30人の貴族の屋敷の近くに病院は建設済みだ。それに、リリアに付与した能力を使って、そなたが人間性を見極め、人間にも治癒魔法を付与するがよい。」
「ハハーッ。」
「他に質問はありませんか?」
「無いようですので、外交面の会議を行います。」
「提案者の情報戦略省長官、ジェット、説明をお願いします。」
「はい!我が国、パルナ・パーニャ共和国の上にあるロンバルド共和国と我が国の下方にあるダ・マール・オデッサ共和国、ノールランド共和国は東方諸国連合という同盟関係にあります。それをより強化するために、ひとつの国が帝国軍に攻められた場合、最低でも5万人以上の軍隊を各国が派遣することを今度の外交会議で提案したいと思いますが、いかがでしょうか。」
「異議なし!」
「異議なし!」
「異議なし!」
「異議なし!」
「では、この案を2週間後の外交会議で提案したいと思います。それでは、以上をもちまして、会議を終了します。では、解散!」
進行役のボレロが解散を宣言した途端に、晴人国王陛下の周りに各関係省庁の官僚達が集まり、晴人国王陛下に謝意の言葉を述べていた。
その後、各関係省庁の業務も軌道に乗り、1か月後に晴人が無限の力をもつ『メビウスの輪』を使って、様々な重機を運転する者、操縦するものすべてにマニュアル通りに適切に操縦できる能力を付与したことで、さらにパルナ・パーニャ共和国の内政は充実していくのだった。
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