第3話 晴人、死の「骸骨の森」を掌握する

 晴人は、突然、ミニッツや晴人タイガー、晴人フェンリルが驚くようなことを言い出した。

「俺、『骸骨の森』全部の魔獣や魔物、ダンジョン内の生き物たちの親分になりたいんだ。おい、晴人タイガー、晴人フェンリル、お前たちの力を借りたい。お前たちの呼びかけで、どのぐらいの魔物や魔人、ダンジョン内の生き物がこの大きい広場に集まるのか教えてくれ?」


 すると晴人タイガーが

「強さで言えば、私とイエローフェンリルが『骸骨の森』の中で、ツートップなのです。私とイエローフェンリルが同時に吠え続ければ、『骸骨の森』全部の魔獣や魔人だけでなく、ダンジョン内の魔獣や魔人、ダンジョン内に棲んでいる生き物たちは全て集まりますよ。」


 じゃあ頼む、晴人タイガーと晴人フェンリルが同時に吠えて、この広場に集まるようにしてほしい。ただし、野性ブタや野生イノシシ、野生ジカ、野性グマ、野性トナカイ、野性エルク、野性ヘラジカなどの野生生物は呼ばないようにしてくれ。何せ、

魔獣や魔人の食料になる動物まで仲間になってしまったら、食べ物が無くなってしまって困るからな。」


「主、お安い御用です。」


「じゃあ、いくぞ、晴人フェンリル。」


「おお、いいぞ。」


「ガオーン!ワオーン!ガオーン!ワオーン!ガオーン!ワオーン!ガオーン!ワオーン!ガオーン!ワオーン!ガオーン!ワオーン!ガオーン!ワオーン!」


 すると、どこからともなく大勢の魔物や魔人、生き物たちが広場の前を埋め尽くした。ダンジョンにいる魔物や魔人、ダンジョン内の生き物たち、そして、多くのドラゴンたちまでこの広場に集まってきた。数多くのドラゴンたちの翼の風圧で、吹き飛ばされる生き物たちも多かった。

 集まってきたドラゴンたちの中で最も大きなブラックドラゴンが晴人タイガーに何か言葉のようなことを言い出したため、晴人は言語変換魔法を用いてその会話の内容を聞いた。


「おい、ゴールデンサーベルタイガー、イエローフェンリル、全員を呼び出して一体何の用だ!緊急の用事なのか!」


「ブラックドラゴンよ、この『骸骨の森』に宇宙の支配者である『天』であるホワイトドラゴン様の使徒がいらっしゃっている。」


「何だと!それは本当か!」


「そうだ。本当だ。ここにいる晴人様がホワイトドラゴン様の使徒だ。」


「何!こんなちっこい人間がか?信じられん、証拠を見せろ!」


「おい、ブラックドラゴン、俺が晴人だ。先ずは、俺のヨロイを見ろ!」


「こ、こ、これは我々種族のブラックドラゴンのウロコでできたヨロイでは?」


「そうだ、その通りだ。いいか、俺の力を見ていろ。100km先にある、あの高さ5kmの山をてっぺんから麓まで、斬撃で真っ二つにしてやる。」


「ふん!何を言うかと思えば、あの高い山を真っ二つにするだと?人間にそんなことができるものか、冗談もほどほどにしておけ!」

 そうブラックドラゴンが言うと、


 晴人は、静かに天下無双の薩摩示現流の蜻蛉トンボの構えを取った。


「キエーイ!」


「ヒュン!」


「サクッ。」


「オオー!あの高き山が全く音もなく真っ二つに斬れたぞ!何という切れ味だ!」

 集まってきた魔物や魔人たちが騒ぎ出した。


「何てことだ!信じ難いが、このお方は本物の全宇宙の神『天』であるホワイトドラゴン様の使徒に間違いない!」


 ブラックドラゴンがヒザマズいて頭を下げると、全ての魔物や魔人、ドラゴン、ダンジョン内の生き物たちが一斉にひれした。


「お前たち全員を俺の子分にしてやる。つまり、お前たちも俺の子分になればホワイトドラゴン様の使徒になれるんだぞ。」


「ハハーッ。ここにいる全ての魔物や魔人、ドラゴン、ダンジョン内の生き物たちは晴人様の子分になります。」

 と親分格の代表である最も体の大きなブラックドラゴンが大声で言った。


「よ~し。それでは、魔獣・魔人服従魔法とダンジョン全体魔獣・魔人服従魔法を今からお前たち全員に付与する。」


 晴人はそう言うと、晴人のユニバースソードから虹色のオーラが縦に20km、横に10kmほどの広場全体に広がり、全ての魔獣や魔人、ドラゴン、ダンジョン内の生き物を包み込んだ。そして、ドーム状になった大きな虹色のオーラは魔獣や魔人、ドラゴン、ダンジョン内の生き物の頭の中や体の中に入っていった。すると、親分格のブラックドラゴンがヒザマズいた姿勢から、すくっと起き上がった。

 親分格のブラックドラゴンは、体長600m、翼を広げた長さが800m。体高が400m程の巨大さであった。ブラックドラゴンが大声で晴人に向かって言った。


「晴人様、我との絆を強固にするために我が名をお決めください。」


「よし、では、『晴人ブラックドラゴン』の名を与えよう。」

 すると、晴人と晴人ブラックドラゴンの周りに虹色のオーラが出て、グルグルと回り出したのだ。

「晴人さん、ミニッツです。完了しましたよ。」

「そうか、完了したか。」

「はい。」


主様アルジサマ、ご自分のお名前を私に頂き、誠にありがとうございました。この命を晴人様に捧げます。どうぞよろしくお願いします。」


「うむ。こちらこそよろしく頼む。だが、死んではならぬ。これは命令だ。」


 すると、次から次へと戦闘力の高い順番に魔獣や魔人、ドラゴンたちが並び始めだした。ブラックドラゴン、レッドドラゴン、ブルードラゴンを初め、ダンジョン内のメタリックドラゴンやキングゾーマ、キングナイト、キングゴーレム、キングトロールなど名だたる魔獣や魔人たちまで並び始めた。名付けだけで、丸8日間を要したのである。


主様アルジサマ、ご自分のお名前を私に頂き、誠にありがとうございました。この命を晴人様に捧げます。どうぞよろしくお願いします。」


「うむ。こちらこそよろしく頼む。だが、死んではならぬ。これは命令だ。」


「ハハーッ。」


 この姿を見ていたミニッツと晴人タイガーと晴人フェンリルは感服せずにはいられなかった。ダンジョン内の虫のリーダーにまで名前を授けていたからだ。しかも、時折、水分補給をしただけで8日間、ぶっ通しで名付けを完了させたからだ。

 晴人に名付けをされた魔獣や魔人、ドラゴン、ダンジョン内の生き物のリーダーの数は、全部で30万もの数に及んだ。全てのものたちは、大喜びで帰っていった。自分がホワイトドラゴン様の使徒の子分になれたのが嬉しいのだ。


「よし、今夜は、ログハウスの前でバーベキューをするぞ!」


「晴人さん、ミニッツです。晴人タイガーと晴人フェンリルは、生の肉しか食べたことがありません。」


「そうか、焼き肉のタレを付けたら、食べるんじゃないか?」


「面白そうですね。試す価値がありそうですね。晴人さん、晴人タイガーと晴人フェンリルは、人間の何十倍もの肉を食べるので、3D拡大魔法で大きくして食べさせた方が満腹感が得られると思いますよ。」


「なるほど、ミニッツありがとう。それから飲み水や食器はどうしたらいいんだ?」


「飲み水は本拠地であるログハウスの蛇口をひねるときれいな水が出てきます。食器は、銀の器と皿が次元収納ストレージにあるので、これも必要に応じてサイズを大きくしてください。」


「ミニッツ、ありがとうね。助かったよ。」

 そう言うと彰は、次元収納ストレージの中からドラム缶を半分に切ったバーベキュー用のセットを取り出し、炭に火をつけた。そして、鹿児島から持ってきた日本一の黒毛和牛の5Aのステーキ肉を取り出して炭火で焼いた。


「おい、晴人タイガーと晴人フェンリル、これは俺の棲んでいる地球から持ってきた宇宙一の牛肉だ。まず、3D拡大魔法で大きくするから食べてみろ。」


「ハハーッ。」


「すごくおいしいです。脂がとけて甘いです。最高に美味しいです。今まで食べた肉の中でも最高の味です。」

 そう言うと、体の2倍に拡大した生肉を10分もしないうちに食べ終わってしまった。


「お前たち、食べるのが早いな。じゃあ今度は、今、俺がバーベキューで焼いた同じ肉を焼き肉のタレに付けて、食べさせてやるからな。」

 晴人は、そう言うと、焼けた鹿児島産の日本一に輝いた黒毛和牛の最高ランク5Aの焼き肉に焼き肉のたれを付けて、体の2倍に拡大した焼き肉を銀の大皿に載せて食べさせてみた。すると、


「うまーい!なんて最高な味なんだ!生肉を炭で焼いて、焼き肉のたれというものを付けるとこんなにも美味しいのですね。うまーい!うまーい!最高の味です!」


「晴人タイガーと晴人フェンリル、そんなに美味しいか?」


「はい、生まれてきて良かったです。主、ありがとうございます。」


「おい、晴人タイガーと晴人フェンリル、お前たちにも3D拡大魔法と物体再生魔法を俺が与えてやったんだぞ。焼き肉に向かって言ってみろよ。」


「はい、3D拡大魔法!」


「はい、物体再生魔法!」


「ウワアアアア!焼き肉がこんなにデカくなった!主、超嬉しいです!」


「マジか!焼き肉の数がこんなに増えたぞ!主、ありがとうございます。」


「うむ。後は自分で好きな魔法を掛けて食べるんだぞ。」


「ハハーッ。有難き幸せです。」

 晴人タイガーと晴人フェンリルは、あまりの幸せに涙をこぼしながら、肉をバクバク食べていた。その様子を晴人とミニッツは微笑みながら見つめていた。


「よし、俺も食おう。」

 晴人も鹿児島産の日本一に輝いた5Aの牛肉を味わった。


「なあ、ミニッツ、お前は食べなくていいのか?」


「私は、晴人さんのお父上様が採りに行って下さった鉱石のエナジーが食べ物なのでお腹が空かないのです。」


「ふ~ん、そうなのか。一緒に食べたかったなあ~。」


「晴人さん、ありがとうございます。晴人さんは、お優しいですね。」


「そうか?普通だよ。」


「いいえ、とてもお優しいですよ。」


「ミニッツがいい奴だからだよ。」


「アハハハ、ありがとうございます。」


「あっ、そうだった。晴人さん、私の存在は晴人タイガーと晴人フェンリルにも秘密にしておいてくださいね。」


「うん。分かった。約束は守るよ。」


「ありがとうございます。それから、晴人さんの子分になった魔獣や魔物にルールを伝えないといけません。」


「どんなルールなんだ?」


「人を襲って、食べないというルールや近くの国に行って、村や街や城を襲わないといったルールです。」


「俺が子分にした連中って、人を襲ったり食ったりしていたの?」


「はい、だから『骸骨の森』なんです。」


「ミニッツ、教えてくれてありがとうね。明日、早速、全員を集めて注意するよ。食べ物に困らないように、野生動物に物体再現魔法をかけて数を増やしておくよ。」


「それはいいアイデアですね。大賛成です。それが済んだら、『天』からたっての願いのあったパルナ・パーニャ王国に行きましょう。晴人タイガーと晴人フェンリルを原寸大のサイズに戻して、パルナ・パーニャ共和国に行くんです。そうしたらきっと晴人さんの力を認めて下さると思います。晴人さんが、パルナ・パーニャ共和国の国王にならなければ、異世界侵略戦争を勧善懲悪するという『天』との約束を守ることができなくなります。お願いです。一緒に行きましょう。晴人さんには『天啓の瞳』があります。それで、パルナ・パーニャ共和国の国王が嘘を付いているか本当のことを言っているか見抜いてやりましょう。」


「うむ。そうだな。でも今は未だ。あまり気が進まないが、申し訳ないがしばらく時間をくれ。それから、ミニッツ、俺は結婚はしないからな。恋愛結婚がしたいんだ。第一王女だからという理由で結婚はしようとは思わないぞ。」


「分かりました。晴人さんがパルナ・パーニャ共和国に行く気になったら一緒に行きましょう。ミニッツも晴人さんの味方ですから、それでいいと思いますよ。」


「ミニッツ、ありがとうな。それから、ミニッツ、お風呂はあるのか?寝るときはベッドがあるのか?」


「温泉があります。晴人タイガーと晴人フェンリルに赤ちゃんサイズになってもらって、シャンプーで洗ってあげて下さい。体を乾かすときは、風魔法を使うといいですよ。それから、寝るときは大人5人分のサイズのベッドを用意しました。晴人タイガーと晴人フェンリルを赤ちゃんサイズにして、晴人さんが寝かしつけて下さい。首や体やお腹をさすると、すぐ寝ますよ。」


「ミニッツ、俺、犬と一緒にプールに入ったり、寝たりするのに憧れていたんだよ。だから、嬉しいよ。」


「それは良かったです。きっと晴人タイガーと晴人フェンリルも喜びますよ。」





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