カラーエブリデイ その1

38色 あの二人の秘密?

「ちょっと……聞いてくれるかい?」


 いつもと変わらない学園でのある日。


 ワタクシがとある用を済ませて、教室に戻ろうと廊下を歩いていると、いけすかないメガネに話掛けられた。


「なんですの? ワタクシ、ナンパメガネと話す趣味はありませんわよ」


 ワタクシはいつもの様に適当にあしらう。


「大事な話があるんだ」


 しかし、ナンパメガネはいつもと違い真剣な感じだ。


「いつになく真剣な顔ですわね」

「あれ? きのせさんとれいたくんどうしたの?」


 すると、そこに少しサイズが大きめの緑のパーカーを着た、髪の毛がくるくると跳ねている少年が通りかかる。


「あら、緑風さん。 実は、この挙動不審メガネが大事な話があるとかでワタクシの貴重な時間を奪っているんですの」

「大事な話?」

「ああ」


 ワタクシの説明に緑風さんは可愛らしく小首を傾げると、アホ面メガネが首を縦に振った。


「レディをムリヤリ呼び止めて置いて、くだらない話だったらボコりますわよ」

「大事件だ! 大・事・件!」


 メガネが気持ち悪く鼻息を荒くしていう。


「なんですの? 気持ち悪いわね……」

「なにがあったの?」


 緑風さんがキモメガネに問いかける。


「実は、今朝スゴイものを見てしまったんだ……」


 そういうと、回想メガネが続ける。




 今朝、学園教室前廊下にて、とんでもないモノ目撃してしまったんだ……。


 僕は、いつも出来るだけ早く学園に来るようにしている。 特に意味はないが、なんて云ったって僕は学園の誇るエリートだからね。 そして、今日も一番乗りで教室に踏み込もうと……


「……ね……と」

「……ん」


 この声はクラスメイトのアカリとミズキの声か?


「あの二人が早く登校なんて珍しいな」


 なんて思って教室に入ろうとした、次の瞬間、僕の眼に衝撃なモノが飛び込んできた……それはミズキの肩に手を置き、アカリが彼の顔に顔を重ねていた……



「…………」

「………………」

「?」

 

 しばらくの沈黙。


「マジですのおおおおおおおおおおおおおおお!?」

「大マジですともおおおおおおおおおおおおお!!」


 ワタクシは反射的に叫んでしまっていた。


「……そして、その後……」


 目撃メガネが続ける。


「つぎは放課後……かな」


「今日の放課後にまた……その……………………するつもりなんだ! きっとあいつら僕らに内緒で付き合ってるんだ水臭くないかい?」


 覗き見メガネが咳ばらいをする。


 痰が詰まればいいのに……。


「そこでだ、諸君」

「二人だけどね」


 緑風さんが冷静にツッコム。


「皆で決定的な瞬間をバッチリ目撃して、現行犯で彼らに自分たちの関係を自白させてやろうではないか」


 演説メガネが熱く語る。


「確かに、目撃者は多いいほうがいいとは思いますけど……どうしますの?」

「でも、あの二人に限ってそんなことはないと思うけど」


 緑風さんが少し怪訝そうな顔をする。


「緑風さんはよくあの二人と一緒にいますわよね? なにか変わったことはありましたか?」

「いや、なかったと思うよ。 みっくんはいつも一緒に帰ってるし昨日や朝も特に変わったことはなかったと思うけど」


 緑風さんは腕を組んで考える。


「いーや、そういうやつに限って裏で付き合ってるってよくある話だ」

「そうですわね」

「え、えっと……」


 困惑する緑風さんをよそにワタクシ達は話を続ける。


「来たる今日の放課後……教室の何処かに隠れその時を待つ! そして……」

「ちょ、ちょっとまって!」


 緑風さんが慌てて止める。


「ダメだよそんなの覗き見だよ!? いくらトモダチでもそんなこと……ねっ、きのせさん」


 緑風さんはワタクシに問いかける。


 しかし……


「そして、二人がキスした所でドドーンと現場を取り押さえるんですわね!」


 ワタクシはかなりノリノリになっていた。


「そうだ! 完璧な作戦だろ?」

「………………」



 そして、来たる放課後。


「うーん、もうちょっと隠れる場所があると思ったんだけど、この大きめのロッカーだけか」

「教卓はすぐバレそうですわね」


 ワタクシとヒョロメガネは教室内の隠れる場所を探す。 ちなみに緑風さんは今回は遠慮するとのことで不参加になったので、まさかのメガネと二人っきり。 メガネ割れないかしら?


「アナタ、外でホウキに乗ってホバリング出来ないんですの?」

「それこそすぐにバレるだろ……」


 ワタクシが提案してあげるが、メガネにすぐ拒否される。


「そう残念ですわね。 あわよくば、そのまま落ちて欲しかったんですけど」

「おい」


 突っかかってきたクソメガネをあしらっていると


「はやく、シアン」

「んー」

「!?」


 聞き慣れた声が聞こえてきた。


「はやくはやく~」


 二人が教室に入ってきた。


「あれ? もうだれもいないね。 もうみんな帰っちゃたのかな?」

「さあ」


 教室に入ってきた二人は帰り支度を始めた。


「……」

「……」

「…………おいっ、なんでキミまでロッカーに」


 メガネがとても怪訝そうにいう。


 反射的に同じロッカーに隠れてしまった。


「それはこっちのセリフですわ暑苦しいわよ、このクソメガネ」


 メガネの肩がワタクシの肩に当たる。


「ちょっと! こっちに寄るんじゃねですわ! また触れたらぶん殴りますわよ!」

「誰がキミの方なんかに寄るかっ! ごちゃごちゃ言ってるとみつかっちゃうぞ!」

「あっ」


 アカリさんがなにかに気づいたのか声をあげる。


「!?」


 バレた!?


 一瞬そう思った。


「アカリ」

「そうだったね、わすれてた、じゃあ、目を閉じて」

「ん」


 きた!?


 アカリさんが天海さんの顔に顔を近づける。


「おぉおおぉぉおおおお!?」

 

 ワタクシとメガネはロッカーの隙間から凝視する。


 すると


「イデデデデ」

「?」


 天海さんが謎の声を出した。


「ちょっと~シアン、ちゃんと目を開けないと見れないでしょー」

「だって、目がヘン」


 アカリさんが天海さんの瞼を開こうとしていた。


「だからーなにがどうヘンなのか見るんでしょー、ホラ、目閉じない!」

「イデデデデ」


 天海さんは、アカリさんに瞼を手で開かれて、痛そうにしている。


「お医者さんいきなよー」

「めんどくさい」


 解放された目を擦りながらいう。


「…………」

「だそうですが」


 ワタクシは早とちりメガネを見ると、メガネはロッカーの扉に触れる。


「まあ、なにもないならいいじゃないか……そろそろ出よう」

「ちょ、ちょっとまちなさいよ! 今、出て行ったらアカリさんが……」



『えーっなんでふたりでそんな所にいるの!? もしかしてもしかして……キャーー!』


 アカリさんの声がワタクシとメガネの脳裏に響く。


「……それは、かなりいや、確実にありえる」

「誰が、腐れメガネなんかと……冗談じゃねえですわ」


 とてつもなくおぞましいことを考えてしまい、ワタクシはゾクッとしてしまう。


「あっ、天海くん丁度よかった」


 そこに先生が入ってきた。


「ごめんなさいね、少し手伝って欲しいことがあるの、ちょっといいかな?」 

「大丈夫です」


 ナイスタイミングですわ! 先生!


「じゃあ、わたしここで待ってるね!」

「え!?」


 アカリさんは、天海さんを見送ると教室の椅子に座り、本を読み始めた。

 

 よりによって何でココで待つんですの!? 後は帰るだけだから、玄関で待ってればいいじゃありませんか!? ア、アカリさんのアホンダラ!


「いろのさん」

「!?」


 教室の入り口から声がした。


「あっクロロン! まだ帰ってなかったんだ!」


 この声は緑風さん!? 


「ついさっきみっくんと会ってね、荷物を持って先に玄関でまっていてほしいって言ってたんだ」


 ナ、ナイスですわ! 緑風さん!


「わかったじゃあ、クロロンも一緒に帰ろう!」

「うん、いいよ」


 二人は天海さんの荷物も持って教室から出て行こうとする。


 超絶ファインプレーですわ!


「ふう、これで一安心ですわ……」


 ワタクシ達は胸を撫でおろした。


「あっそうだひとつだけわすれもの」

「?」


 教室を出ようとした緑風さんは足を止めるとロッカーに歩みよってきた。


 そして、


「あまり覗き見はよくないよ」


 気が付いた時にはロッカーの扉を開けられていた。


「え?」


 ワタクシ達三人は緑風さんの突然の行動に唖然としていた。


「キャアアアアアアァァァ!」


 ロッカーから姿を現したワタクシとメガネをみるとアカリさんが叫んだ。


 悲鳴の方ではなく、恋愛ドラマをみている時の叫びだった。


「あっちょ、アカ……」


 アカリさんは叫びながら物凄い速さで走って行った。


「はあぁー」


 ワタクシとメガネは大きな溜息をつく。


「サイテーな一日ですわ……メガネなんかと狭い所に閉じ込められるし、滅多に怒らない緑風さんの怒りに触れてしまったみたいですし……それもこれもぜーーーんぶどっかのバカメガネが勘違いしたせいですわ!」

「何言ってるんだ、キミだって僕の作戦にノリノリでついてきたクセに! それに誰かさんが騒がしくしなければ見つかることはなかったはずだ!」


 ワタクシの言葉にクソメガネは突っかかってくるが、もう、そんなことどうでもいいぐらい頭を抱える。


「あーもーどーしますの!? アカリさんのことだから、きっと皆に言いふらしますわ! あなたのせいで! こんなモヤシメガネとウワサになるなんてありえねーですわ!!」


 一心不乱に叫ぶと、メガネも喚き散らす。


「こっちだって暴力筋肉女となんてゴメンだよ!」

「なんですって!!」


 メガネとの責任の押し付け合いが、始まった。


「あー……ちょっとやり過ぎちゃったかな?」


 緑風さんは「あはは」と頬を掻きながら苦笑いをした。

                            

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