第34話

今日は病院の日。


また聞き取りとかされるかなーって思ってた。


筒井つついさん、同じ読字障害を持っていても、人それぞれなんです。だから、定期的に集まって話をしたりするコミュニティがあるんです。行ってみませんか?」


「え、あ、はい」


病院の中で、みんな集まってるってこと?

どこかの部屋に行ったけど…

みんな、見た目は普通の人たちだ。それぞれでしゃべってる。机をくっつけて、学校でやったみたいなグループにしてある。


「こちらは筒井さん。見学です」


「あ!…あの、せ、先生!すみません、最近、結婚して、宮本になりました…」


「それはおめでたい!」


「おめでとう!」


知らない人に祝ってもらうとは。勝手に席に案内されて、座ったという感じだった。


「宮本さん、若いわねー」

「しかもかわいい」


年上の女性たちに話しかけられる。本当にこの人たち、文字読めないの?


「私…病院に来るのは2回目で…」


「あらぁ!そうなの」

「よろしくね」


「…はい」


「宮本さんは、文字がどんな風に見える?」


「…え、っとよくわからないんです…」


「そうなの。私は逆さに見えるの」


「え?逆さま?」


「そう」


「私はね、渦巻き」


「え?そんな風に?」


想像できない。


「宮本さん、字は書けるの?」


「名前、だけ」


「あら、すごいわね。なにかわからないのにどうやって?」


「わからないけど、なんとなく真似しました。今でもよくわからないけど…」


「そうなのね。宮本さんすごいじゃない!私も書くのに苦労したのよ」

「私も、見えたまま書くと変だからさ、本当名前書くの苦労した」


私は、いつのまにか泣いていた。


「…私…本当に、文字読めるように、なるんでしょうか」


「うーん、いろいろ試してみてこれならちょっとはいける!を探すしかないわね」

「でも宮本さん努力家だからね。ムリは禁物!」


「ありがとうございます」


私を私と受け止めてくれる人は、こんなとこにいたんだ。

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