第22話

「履歴書も書けなかったらしいじゃねぇか。お前の字を見たが、ひどいもんだった」


「あゆちゃんは一生懸命なんす!」


「わかってる。お前、親はこのこと知ってんのか」


「知ってます…。もう、会ってません。私が、おかしいから…」


「…あゆちゃん」


泣き出したあゆちゃんを抱きしめた。兄貴はなんでこんな意地悪するんだ。


「おかしいよな。なら、一旦病院行ってみろ。金あるだろ?」


「え?」


「専門のとこ行ってみろ。そうだな…今日は客に天野様は?」


「いる」


甥っ子が答えた。天野様は、占い師?らしい。噂で聞いた。


「んじゃそいつに占ってもらえ。いい病院探してもらえや」


「でも…私が…治るんですか?」


「いや?そりゃお前の個性だ。だがな、ヒントはもらえるかもな。婚姻届は宮本に渡しとく」


「え!この紙なんすか?」


「悟流に聞いて書け。じゃあな」


「えー。おじちゃん、めんどくせーよ」


「よろしくな」


兄貴、帰っちゃった。


「…ユア、勝手に個人情報教えて悪かった」


甥っ子はティッシュを渡してきた。あゆちゃんは受け取る。


「最悪」


「あゆちゃん、占いは?」


「…本当に天野様は占いできるの?」


「うん、たぶん!」


「コタローさんも来てくれる?」


「うん」


「お化粧ちょっと取れちゃった…」


「大丈夫。かわいい」


あゆちゃんはにっこり笑った。そしてお店に行くので俺もついてく。


「お待たせしましたー」


あゆちゃんは、お坊さんの隣に座った。


「彼氏です」


こっそり話してる。俺は立ったままいた。


「へぇ、これは真面目そうな方ですね」


「あの!占いして欲しいです。お願いします」


「…なんのことを占いたいのですか?」


「私の、こと…」


「と言うと?」


他のスタッフに話さないで欲しいんすけど、あゆちゃん文字を読んだり書いたりが苦手なんす。それの病院、どこっすか?


なんてお店で聞けないよ!

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