水族館

第9話

「もしもし」


「宮本さん、駅にいます」


「あ、もうちょっとで着きます」


強引にデートに誘った。こんなこと初めてだから、緊張する。そもそも、私はデートなんかしたことがない。


服装は迷ったけど、結局Tシャツにダメージジーンズにした。昨日はオフショルにショートデニムだったけど、露出しすぎてたと思うから、今日は抑えた。つもり。


「お待たせしました」


「…板前さんの格好と全然違う」


私服だるだるヤンキー系!?黒系とは…ギャップあるな。


「え?板前?」


だけど、私服見れるの嬉しい!


「私、宮本さんのこと好きです」


「え、…え?そんな、ことが…?」


大きな目が私を見てる。まっすぐ、私だけを。


「だから手を繋ぎましょう」


「…!あゆさん、手、小さいですね」


手を繋いだことは嫌がってないみたい。


「宮本さんの手、大きい」


ぴったり横にくっついてみた。ドキドキするの聞こえたら恥ずかしいけど。こんなことするの初めてだから、どんな顔していいんだろ…


「お、お仕事はお休みですか?」


宮本さんはちょっと照れながら話しかけてきた。


「うん」


嬉しくって、たまらなくなった。


今日の移動は、電車だ。駅員さんに行き方を全部聞けばいいから、読めなくたって大丈夫。宮本さんは電車の中で、子供みたいに、外を見てわくわくしてる。

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