第10話

「電車は普段乗らないんですか?」


「はい。車ですかね」


私の方をちらりと見ては、また外に目をやる。


「ふーん?」


「あゆさん、電車って速いですね」


「…そうですね」


宮本さん、なんでモテないんだろ。ヤクザだったからかな。楽しそうにしてる顔を、ずーっと見つめていた。


水族館に着いたら、さらにわくわくしてる。行ったことなかったんだって。私がチケットを買ってあげた。


「お魚いっぱいですね」


わぁーと水槽に張り付いて見てる。


「これなんて魚?」


「鯛です」


「これは?」


「鰯です」


「すごーい詳しい〜」


は。ついキャバ嬢的しゃべりに。やだー


「一応料理したことある魚ならわかりますよ!あゆさん、あっちに大きい魚いますね!行きましょう!」


楽しそう。私も楽しい。手を勝手に繋いでも怒らない。もっともっと、触れていたい。


いつの間にか、お昼時。適当にご飯屋さんに入る。私1人ではできないけど、この適当に入ることの嬉しさ。たまんない。


「宮本さん、メニュー読めないから、読んでほしいです」


「はい!わかりました。ナポリタン、ミートソース…」


全部読んでくれるのかな。嬉しい。


「じゃあ宮本さんは、なににする?」


「イカスミパスタっすね」


「同じのにする」


「わかりました!すみません〜」


私の分もスマートに注文してくれて、キュンとした。そして支払いもしてくれた。


「さっき払ってくれたから」


だって。優しい…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る