第7話

「身近な職業でしたので…」


「あ、そういうことですか」


あまりに反応がなくて嫌なこと言っちゃった。


「はい、知り合いが運営してるんです。ここから近いとこですよ」


「え、それって…ここ?」


カバンをごそごそして、名刺を取り出しそのまま手渡す。確か書いてあるはず。


「あ!そうです。そこで働いてました」


だけど、そのお店をやってるのは…


「…ヤクザ?」


「今は辞めました」


嫌な顔ひとつせず答えた。


「そうなんですか…へぇ」


「そういえば、今は早川の兄貴の甥っ子がやってるって聞きました」


「…あー、あの人か」


履歴書を書けとかうるさかった、キャバ嬢のレーナと付き合ってたとか何とかの人。ま、どうでもいいや。食べよ。おいしいけど、一緒に食べないでじっと見てる。


「あ、まだあるんですよ!」


料理をまた取ってきては、並べる。空の皿も下げたりしてる。


「私と食べないんですか?」


「あ、食べます…。食べてる人を見るの、好きでつい」


私の前の席に座り、ようやく食べ始めた。


「このメニューいいですか?」


「うん。おいしいです」


「よかったです」


嬉しそう。


「あなたの名前、教えてください」


「え?宮本みやもとです」


「お店の名前は?」


「宮本。兄貴がそうしたらって言ってくれて。俺の名前にしたんです」


「宮本さん、私は筒井鮎つついあゆです」


「あれ、この名刺だとユアってなってますね」


「源氏名です」


「あー!なるほど!へぇ、あゆさん。お魚のあゆなんですか?」


「たぶん」


「へー、おいしそうですね」


へらへらと笑う姿が、かわいい。


「宮本さんお名前は?」


虎太郎こたろうです」


「コタロー?」


「はい」

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