第6話

「こんな感じで…え?」


「ごめんなさい、全然聞いてなくて」


涙止まんなくなってた。


「テッシュ足ります?」


「…はい。読み上げるとき、こっち全然見ないんですね」


「…あ、すみません、一度に何個もできなくて…」


店主さんはそわそわした。


「違うんです。私、今まで読めないことずっとバカにされてたから…それなのに、あっさり対応してくれたから、嬉しかったんです」


「えーと、あっさり?」


「え?」


「すみません!その、あっさり対応って?」


「あ、私が字が読めないの、すぐわかってくれて、読み上げてくれたから、です」


「なるほど!あ、すみません、理解するの時間かかっちゃって」


「…ご飯、全部食べたいです。お腹ぺこぺこ」


「そうなんですか!よかった!じゃ、これから…」


「一緒に食べませんか?」


「…は、はい」


店主さんは照れてる。

その後、おいしそうなご飯をお盆に乗せてやってきた。私の前に並べた。


「どうぞ」


と言われたので早速食べる。


「おいしい…」


「よかった!じゃあ他のも持ってくるんで!」


一生懸命だな。また移動して、あれこれ持ってきた。


「…あの、私キャバ嬢なんですよ」


「あぁ、そうなんですね」


しれっとして並べてる。


「それだけ?」


「え?…なんて言えば…」


「苦労してるんですねとか」


「…えぇと、あの、自分は、ボーイやったことがありまして、その…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る