第5話

綺麗なお店。和風で、なんかオシャレ。


「どうぞ、お座り下さい」


「…すみません」


2人用の席に案内された。


「はい、テッシュ」


いつの間にか持ってきてくれてる。でも、接客としては、その発言はどうなんだ?


「ありがとうございます」


はぁ〜恥ずかしいなぁ、何してんの私。すっぴんに近いものになっちゃってるはず。でもこのまま帰れないし拭く。その間に、店主さんはいなくなった。


その後、ゴミ箱持って現れた。私の座席横に置いてくれた。本人は前の席に座った。


「今、新メニュー開発してて。できたから、休憩に外に出たらあなたがいたんです」


「邪魔してすみません」


「いえ?…顔色悪いですね」


「大丈夫、です」


「なにか、食べますか?お腹すいてます?あ、試作のメニューで、何品かあって。これメニュー表で」


ポケットからメモを取り出して見せてくれた。頭がぐわんぐわんする。思わず目を背けた。


「え、大丈夫…ですか?」


「…読めない」


「え」


「字が、読めない」


「す、すみません!汚い字で!字、書くの下手で…」


「私…字が読めない…」


全然知らない人だから、話しても問題ない。だから勝手に話してた。こんなこと、話してもバカにされるだけなのに。


「いっぱい頑張ったのに…」


「すみません、俺、ちゃんと学校行ってなくて。文字の読み書き怪しいんです。だから、ごめんなさい」


「そうじゃないです!私、もともと…字が読めない!頑張っても全然読めないの!」


「…と、言うことは?ひらがなとか、そういう問題じゃない?」


「そうです。なんでも、数字も」


「そうなんですね。じゃ、俺が読み上げますね。えーと、赤えびのお寿司に…」


どうして、そんな、簡単に受け入れられる?

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