第3話

「住職に頼まれて」


「なんで」


「しっかりしてるユアさんなのに、なにかおかしいと住職が」


「そう…」


ちょっと前にした話だったと思うけど、いつからつけられてたのやら。雪見は住職様の養子になったから、なにかとこき使われてるようだ。私は、しっかりしてないし、もともとおかしいんだけど。そうは見えてないみたい。


「おそらく、よくない薬…飲まされてます」


「…え?」


「なので、しばらくは、仕事休んだ方がいいです」


「大丈夫、元気だから…」


休んだら、職失っちゃう…。


「ユアさん」


住職様、なんでこんなところに。ここは、スタッフしか…


「大丈夫ですよ。心配でしたので私も様子を見させて頂きました。仕事は休んでも大丈夫です」


そんなの、だめじゃん。仕事辞めさせられたらどうしよ。ホストなんかに捕まったの私のせいだし…。


「心配ありません。そのお店について、あなたの上司にご報告してますから。だから、ユアさんは悪くないんです」


お店?上司…って、ヤクザ?


「そうですね。この辺は森山もりやま組が管轄してるはずなので、追い出すはずですよ」


…私のせいじゃない。


「はい」


「…ユアさん、俺、家まで送りますよ?」


「雪見、仕事しないとだめでしょ」


「…んじゃ、住職が送ります?」


「いいです、私1人で帰れる」


その辺に置いてあった自分のカバンの中身を見る。雪見が持ってきたのかな。荷物はあさられた形跡ないし、通帳も入ってた。


「そうですか。ユアさんには、素敵な方が現れる予感がします。だから、アンテナを張ってて下さいね」


え?


「では私はこれで」


住職様、アンテナって?

さっさといなくなっちゃった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る