第15話 悲報ワイ、凸凹コンビに殺されかける

「お前……まだ魔力を感じてないんだよな?。よく考えると3時間って、魔力量おかしくね?」


 魔力の練習を始めて一週間、僕は少しずつ自身の付近に近づきつつあった。それに伴い、消費する魔力も少しずつ減っており、そのお陰で最長5時間は集中できるようになっていた。まだまだ集中できるなと思い続けていると、途中で待ったをかけられる。


「そうなの?、わからないんだけど……」


「いいか……普通はな、半径10メートルを維持するのには5分が限界だ。だと言うのに、お前……3時間って……そんなに魔力量が多いのか……集中能力が著しく低いのか……」


 こりゃエンペラーに調べて貰う必要があるなと面倒くさそうに頭を掻く。


「あ、そう言えば進捗はどうだ?、魔力の感覚よォ」


「もう少し、頑張れば感覚が見つけられる気がする。」


「……悪い。邪魔したな」


「良いよ、慣れっていうのもあるってハンターに言われてたからな。何回もやって鳴らしてかないと。」


 そう言いながら、もう一度座禅を組む。近づけば近づくほど、進みにくくなる。しかし、それも一回だけ、例えるなら歩道が整備されていない積もった雪見たいな物だ。


「無理な時は俺に言えよ。すぐに助けるからな」


「多少は無理するよ。そうしないと感覚をつかめない。」


 僕の反論にそれそうだなと少し笑い、彼もまた座ると後ろに掛けている愛銃である猟銃を磨き始める。相変わらず所々に雷がはみ出てる部分がきれいに反射し、僕に当たる。それは良いのだが、熱くなっては大変なので、避けてからもう一度座禅を組む。


 深呼吸してからゆっくりと集中する。遠くの音がよく聞こえる。下手したら何処までも聞こえるかも知れない所を巻き戻るかのように自身のところへ距離を縮めさせる。ここまでは簡単で何回もやっていた。問題は自分から1メートルを切った所である。


 そこでとたんに動かなくなる。セーフティがかかっているようだ。しかし、完全にはいけないという感じじゃない。本当に後1時間あれば感覚をつかめる。そう思ったところであった。突如なにかの音が聞こえ、咄嗟に頭を横にずらす。目を開け、何かが通り過ぎた方を見ると、弓矢が自身の通り過ぎた所で突き刺さっていたのだった。


「……うわ。マジか。こんな殺意高いのか。」


 そう吐露するとギャハハハと汚い声を出しながら、弓が刺さった所から2人の男が見える。一人はポッチャリでもう一人はガリガリ。凸凹コンビという感じだ。


「ギャハハハ!!、この期に及んで呑気なこと言ってやがる!!。こりゃ傑作だな!!」


「ギャハハハ!!、そうだな兄弟!!、こんなバカ、始めてみたぜ?」


 二人組の大笑いが山の中に響く。概ね、あのお姉さんが言っていた僕を狙う奴等であるんだろう。


「行っておくが、後ろの彼はクソ強いぞ?。引き返すなら今のうちだ?。」


「は?、何いってんだ?。引き返すわけねぇだろ?頭お花畑なんでちゅか~?」


「おいおい言ってやんなよ、自分は背後に強い仲間がいるって思い込んでるんだからwww。本当なら懸賞金だったり一流として名を馳せているわけなんでちゅよ!!。それだっていうのに、俺達がなんにも知らない雑魚相手に、ビビると思ったんでちゅか~?。可愛いでちゅねぇぇ!」


 好き勝手に人語を話すゴボウとタケノコに、そんな野菜の種類があるのかと驚く。


「なあハンター、ゴボウとタケノコがなにか話しているぞ?」


「ほっとけ、俺が余所見しても勝てる相手だ。……いや、練習相手にはなるな」


 ハンターは彼等に目もくれずそのまま猟銃を磨く。


「おい!、そこの気取ったエアガン男!。俺達は優しい、雑魚の首を狩ったらパシリとして使わせてやるぜ?」


煽りゴボウが傲慢極まりない言葉をハンターに向かって発言する。それに少し反応し、二人組の方を見る。暫く見つめると煽りゴボウの腕に銃弾を撃ち込む。


「────えっ、あ、あああああああ!!!」


煽りゴボウはあまりの速さに最初は気付いていなかったのだが、腕の痛みを感じたのかそこをみると腕が吹き飛んできたのだった。弓を使っているのにこれはとんでもない致命傷だ。腕が消えたというショックで、泡を吹いて気絶してしまう。ザマァねえな。恥ずかしくねぇのかよ。


「なんだコイツラ、銃弾撃たれた如きでピーピーと。銃弾打ち込まれた如きで叫ぶんじャねえぞ」


「あ、相棒!!、きっ貴様ぁぁ!!」


タケノコは怒り狂い、僕の方に棍棒を振り下ろす。………え?僕の方!?


「え!、僕じゃなくね?」


大慌てで、振り下ろされた棍棒を避け、蹴り飛ばす。しかし流石はデブ、肉がビヨンビヨンと鳴るだけでびくともしない。


「クソガキがぁ!!、舐めやがって!!お前如きの攻撃なんて聞かねえんだよ!!」


「ゴハッ!!」


タケノコ野郎は蹴り飛ばした足を掴み、僕を木へと叩きつける。


「後はお前だ!、エアガン男ぉ!、相棒を撃った恨み、泣いて命乞いをしても許してやんねぇ!!ぶち殺してやる!!」


「……そもそもの格がちげェんだ……、強気な口調で俺を煽るなよ?、お前の首が飛ぶだけだぞ?」


タケノコは更にキレるとハンターに向かって棍棒を使って地面を叩きつける。


「『アースクエイク』!!」


振り下ろした棍棒から先が地面を割りながらハンターの下に向かう。ハンターは、それを軽々と避け、10メートルもある木の高さをひとっ飛びで伸び乗る。


「……『アースクエイク』か……しょぼいな」


そう言うと、タケノコのところへ3弾撃ち込む。


「─────ッ!、痛ぇぇ!!、痛ぇよぉぉぉぉ!!」


腹を撃ち込まれたタケノコ野郎は、その場所を転げ回り情けない弱音を吐く。何いってんだよ。友達は腕持ってかれてないんだから、別に問題はないよ。


「ックソ、こうなったらお前だけでも!!」


僕の下へ大きく振りかざしながら向かってくる。木に叩きつけられていた僕は大慌てで避けようとするも、トラックの馬力を持っているかのように走るタケノコ野郎には間に合わない。タケノコ野郎はもうすぐ目の前だ。


死を覚悟したのだ。その瞬間、周りが全てスローモーションに感じる。死に際には実際にそうとは思いもしなかった。


その瞬間、僕の中になにかを感じた。自分の中に入り込んでいなかったナニか入り込む感覚。よくあるテンプレートだ。


覚醒したんだ。


僕は何処か笑みを浮かべる。その瞬間に魔力を精一杯に出し、ミサンガを発動させる。


身体強化魔法と、回復魔法のミサンガが同時にちぎれる。軽くなった。


タケノコに向かい思いっきり振りかぶる。目の前のタケノコの腹にメリこみ、


「ッガ………!!」


パンッと乾いた音と共に吹き飛ばされたタケノコは、白目を剥きながら気絶した。


「ッハァ、ハァ……これが……魔力……辛すぎない?」


「……最初はそんなもんだ気にするなよ……所でこいつらどうする?。殺すか?」


飛び降りたハンターは、魔力感知をしていたのか、少し笑みを浮かべなら、笑いかけたあと、とんでもない目線で凸凹コンビを見つめる。


「……いや、それはしないよ。むしろ、回復させる。……魔力の操作も兼ねてね」


「……甘い気もするが……まぁいいか……」


そう僕は言うと、腕に込める様な感覚で、直していく。ミサンガのお陰で流すだけで修復できる為、その練習をする。二人組を直した所で僕等はすぐに退却し、ラーメンを食べながら、帰路につくのだった。



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