第14話 修行回ってさ?、何であんなに簡単にデキる人がいるんだろうね?

 魔力、生物の中で籠もる生命の力を体現したもの。その魔力は姿形を様々に変え、霊力として、旗又は神通力として派生していく。しかし、どれも本質は同じ。追求をすればするほどより魔力の叡智に近づく。とどのつまり、魔力の練習さえすれば、自ずとそれに準じて霊力も習得できるとのこと。その方法は座禅か、死を覚悟した時に覚醒しやすくなる。


「魔法を使う才能が無かったワタシだって、マッチ程度の手は出せる。それに、ワタシ以下の人間は見たことがない。君ならできるさ」


 と応援の言葉をエンペラーに貰ったが、それでも自分ではできないのではないかと言う不安があるということには変わりない。


 しかし、やって見なければ分かりはしない。なので、まず魔力の感じ方についての練習をする。まずは魔力は感じることでやっと魔法が使える。しかし、それだけで魔法を出そうとすると、自分にも被害が及び、最悪死ぬ可能性がある。だから次のステップとして、扱い方を学ぶ。そこからやっと魔法を出す。面倒だけれども、夢のある話だ。


 誰もいない場所を探した結果森の中に突入、おかげで服は泥だらけの状態である。勿論僕も気分が悪い。


「………………」


 やべぇ……感じねぇ。よく小説とかでは、なんか熱いものが感じる的な雰囲気で覚えるのものの、全くそういうのは感じない。ま?けど僕も小説の中の人だから、楽勝だろうね!!とはいえ、それは強がりとして言われるだけだ。現にただ目を瞑っているだけだし。


「………これって意味ある?」


「知らねェよ……俺に聞くなよ……」


 近くにはハンターが僕が逃げ出さないように監視役として見張っている。こういう集中するものには直ぐに逃げると天使が言っていたらしい。……不味い、バレてる。


「……俺の場合は感覚だったけどな……」


「マジで?、才能じゃん」


「あまり私語を使うんじャねェ。雑念が入るぞ」


 そう言うと、ペシッと頭を叩く。クッソ、痛えんだけど。ま、そんな文句ばかり言っても仕方がないので、頭の痛みに耐えながら座禅を続ける。


 ……如何せん、何も感じない。


「ピーヒョロロロ」「ピー!!」「ピー!!」「ピーヒョロロ!!」「カー!」


 ……鳥がうるさすぎる。銃声が鳴り響くと同時にバサバサと鳥が離れ、再び静かになる。


 気を取り直し、座禅の仕方が悪いのかと息の仕方を整え、身体もピンと伸ばす。そして、心を無心にする。


 聞こえる物はなにもない。ただの無音。飛行機すら飛んでおらず、それが更に僕自身の心を深く更に深くへと入り込ませる。今の僕の心の中は何も見えない。息を更に整える。ゆっくりと息を吐く度に着実に近づいている。しかし、それでも果てしない。さらに奥へ沈む。この状態が続く。


「………」


 暫くすると、周りの小さな音が聞こえ始める。草の擦れる音や、昆虫が擦れる音、更に山を超えた先の人の声もはっきりと聞こえる。まるで、自身もまた日常の風景のように。暫くすると、そこで僕の体に異変が起こり、息が粗くなり、胸が締め付けられる感覚が来る。


「まずい……大丈夫か?、入り込みすぎたなァ……少し休むぞ……」


「……ハッ、ハッ……ここまで……真剣になったのは……初めてかも……」


 異変に気付いたハンターが待ったをかけた所でなんとか意識を戻す。気がつくと止んでいたはずの音がクリーンに聞こえる。


「……何で息が辛く……」


「やっぱりそこで躓くよなァ……魔力をここの中で探ろうとするときに、他の物の音が聞こえただろ?……本来なら自分だけの音、心臓の音などしか聞かない所を、お前は他の物に削ってしまった……それがお前の中にある魔力に限界を起き、それを整えるために息を大きく吐いたが、魔力の枯渇には間に合わず、辛くなってしまったということだ。」


「………そうか、通りで胸が痛くなったんだ」


 そうだなと大きく頷きながら、お茶とサンドイッチの最後の一欠片を口に放り投げる。それ僕の何だけど……。


「……ただ、それが30分以上経った後なんてほんとに凄いぞ。これは想像以上の期待が見込めると思うぜェ?」


「……そうかい……その言葉が貰えると……もっと頑張れるかも知れないな」


 思わぬ朗報を聞いて思わず笑みを浮かべる。乗ってきた。この波が静まる前に早速やり始めなくては……そう思い直ぐに座禅を組もうとすると、ハンターが止める。


「待て!すぐに再開しようとするんじゃない!!……いいか、今の魔力が万全じゃない状態じゃすぐに枯渇するぞ?それにさっき俺が言ったが自分の魔力を感じる為に自分に集中する必要があるが、自分に集中するまでには大きな時間を有する。まず魔力を回復させる為に一旦、山に下りて一服してからだ」


「一服してからじゃ遅いんじゃない?折角慣れてきたのに……」


「魔法の感覚を掴むのは1日じゃできねェ、たとえどんな天才でも、最低5日は掛かる。それに、こういうのは慣れだ。何回も繰り返してやる必要がある。……なに、今だけやるんじゃねェんだ。食べに行ってからでも遅くねェだろ?」


 ハンターは僕の首根っこを掴み、そのまま引きずる。


「イタタタ!やめろやめろ!削れるじゃないか!!」


「お前が意固地になって続けようとするのが悪い、じゃなかったら立てよ」


「分かった分かった、たてばいいんでしょ立てば……」


僕はふてくされながら、立ち上がりそのままハンターの所についていく。ハンターが行くのはもちろんラーメン屋だ。


ハンターはラーメンがものすごく好きで、休日の昼には毎回俺を連行しては食べ歩きを毎回している。最近はスープを飲んでから麺を啜るという所謂『通』の食べ方をしている。そこから、これが良いだのコレどこかの部分が弱いだのと批評をする。それがまた的確で、イライラがこれまた募る。


「ほう……あっさりとしているのに味がしっかりと残るこの味。最高だな。」


「…ハイハイ」


適当に相槌を打ちながら、次々と隣で消えていく替え玉をみて、コレ全部僕が払うのだと憂鬱な気分になったのだった。



結局の所、ラーメンをぺろりと平らげたあと、魔力の感覚を掴もうともう一度山に戻り、練習をしていたが自分の方に集中することができなかった。しかし、少しずつ近づいていっているということが自信へと繋がっている。このモチベーションを守って、練習をしておこうと思う。後もう一つ、一度僕が疲れ度にラーメンを食べに行こうとするため、ハンターはカップラーメンとお湯を持っていった方が良い。僕の食費が馬鹿にならない。

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