第3話 可愛い後輩って自分に気があるのかな?、あ、ない?そうですか……

人間には心休まる時間というのが存在する。例えば、朝のランニングがそうだったり、朝早くから大浴場に行くのが幸せと感じるものもいる。


じゃあ僕はどうか?、ああ、パソコンネットサーフィンしながらで家居ることだね。まあそれもあの居候共スライムとゴブリンのせいでそんな時間なんて無いんだけども。どうしても必要なときはバチバチの殴り合いの喧嘩をして事を収めるしかない。


というわけで、僕はバイト帰り。いつものゲーセンにパチカスの如く居座っていた。その時間なんと30分、長いのか短いのかわからないのに居座るとはこれ如何にとは思うが君達はそう言うな、泣くぞ?。良いのか文字数残りの1500文字が嗚咽なんて、嫌だろ?。


「……ッチ、何で空振りなんだよ!、反応鈍すぎだろ舐めてんのか客を……ゴミがよ」


で、今の僕は機嫌が悪い。それはなぜか。


Qバイトの店長にイビられ、先輩にはパシリにされた僕の心情を求めよ。


A 腹立つから誰にも見られないところで悪態をつく。


定石だよね。小物?、んなことはわかってんだよ?ということなんだよね。で、家で野太い喘ぎ声か、台パンのする家に行くのは何と言うか躊躇いを感じる。その為に今日はゲーセンに行ってリラックスするわけだ。楽しいよ?ここのゲーセンは絶版しているアーケードゲームもある。


僕のオススメはドレカバトル。去年まで好きでやってたんだけど、サービス終了したと同時にどこもなくなって唯一残ってたのがここ。嬉しかったよ。ここに残ってるのが。ま、今やってるのは別のやつなんだけど。


「……ッチ、二度とやるかこんなクソゲー」


デカデカと画面にLOSEの文字が浮かび上がると、僕は悪態をつき、さっきまでやっていた台からドレカバトルに移る。あ、カード忘れた。……今日はやめとこ。


「あ、先輩?じゃないすかどしたんすか。バイト疲れたんすか?」


あまりのタイミングの悪さ、しかもカードを忘れたという格好がつかない状態で話しかけてきたため、キレ気味に後ろに振り返ると見知った顔が居た。中学時代の後輩だ。2年前、めちゃくちゃ可愛い子が僕の部活にいて、物凄くカッコつけていた気がする。そのめちゃくちゃ可愛い子がこの子だ。


「……あ~、受験生じゃない?、こんなところにいて大丈夫なの?」


「ワタシも塾がちょうど終わったんすよ」


ふとスマホを見てみると夜十時を回っていた。こんな時間まで勉強をしていたのに後にそれを言うなんて野暮だったなと感じる。


「先輩、疲れました。何でワタシこんなに勉強しなくちゃいけないんすか……赤本も地味に高いし……もう疲れました」


彼女の顔をよく見ると目元に隈が出来ていた。僕と同じで気分転換のために来たんだろう、やっぱり受験生には勉強だけさせるにしても窮屈な時期だ。病んでしまう事も珍しくない。こういうのは去年僕もやっていたため、嫌でもわかる。

…………労うのも大切か……。ああ、僕のお金が自動販売機に吸い込まれてくる。これだからかな、金づるだって思われてるの。


「お疲れ様、とりまハイ」


僕は、コーンポタージュを後輩に手渡す。彼女はキョトンとした顔で僕を見る。


「良いんすか?、先輩……」


「勉強って、疲れるからな。ただ座るだけでもやってられないのにこんな長時間座らせられたんだ。ま、労いくらいはいるだろ」


その言葉に後輩はウルッと来たのか僕に抱きついて来る。うわ!、やめろお前の顔が良いから惚れるぞ!!。


「やっぱ先輩神っす!、ワタシ少し頑張れる気がしたっす!!」


え?、当たり前だけど?、なんてことは言えずにこやかにそんなことないよと返す。何だろ、凄い妄想みたいな事が起きてる。可愛い後輩に神っすなんて言われるとは。僕の人生で言われたい言葉第52位が聞けて嬉しんだけど。


「というか、何処に行きたいんだっけ?」


「あ、ワタシ……先輩と同じ高校に通いたくて、後ちょっとなんです。目標のAに届くのが……」


僕の高校の偏差値は56位、僕は死物狂いでやっと今の学校に通った。僕は馬鹿だからね。仕方ないね。けど、彼女は違うらしい。普通に凄いな…変なことがない限り、僕の学校に余裕で入れる可能性が高い。というか、この半年でそんなに頑張ったんだ。よく頑張ったよ。


「あ、先輩。ここで話すのもなんですから、あっちのゲームで一緒に対戦しません?、負けたら、奢るのはどうですか?」


僕がさっきやっていた台を指差す。僕は少しフリーズする。彼女、格ゲークソ強いのだ。日本一を決める対戦で3位くらいになった事を聞いたことがある。


「あ、あのちょっと別のやつにしない?、ほら、エアホッケーにとかにしよ?」


「え?別にそれでも良いですけど……」


そう言って僕は、無理やりエアホッケーに変えたものの、彼女、どうやら格ゲー以外もクソ強いらしい。レーザービームと遜色ない速さで僕の方に円盤が僕の所にゴールする。……ゑ?


「どうしたんですか?やりましょうよ」


ニコニコと笑いながら不思議そうに見つめる彼女を見て冷や汗をかく。ヤバい、あの子、絶対僕にもう一つ奢らせる気だ。負けてられないと、円盤を弾く


「よし!、えぃ!」


バゴォ!!


彼女の当てた円盤は宙を舞い僕の僕の頬を掠めて後ろの壁に突き刺さる。あ、勝てない。何?あれエアホッケーが出して良い音じゃないんだよ?壊れてない?。


「………参りました」


「え?……あ、やったぁ!、先輩!ありがとうございます!!」


死ぬかと思った。後輩はどうやら僕が手加減したと思っているのか、ペコリと頭を下げるが、僕は震える手でそれを抑え、黙ってドリンクを買う。


「先輩、ありがとうございます。何から何まで、良いんですか?金欠なのに……」


「いや良いよ、受験勉強は肩が凝る。やりたいことが出来ない時期だよね?。僕達は子供で、血気盛んに遊びたいことも広がる年齢だ。そんな時期に受験って本当に辛いんだよ。けど、我慢できる子がいる。すごいよね。僕は違ったからさ、今君が本気で頑張ってるの、凄いことだと思う。けど、学校選びは大切だよ?。君の親御さんとかに、無理やり高い偏差値とかに入れられるとひどい目に合うからね。自分を持ってね」


張り切っていっちょ前な事を言うド三流の僕に、そうっすねと言いながら、目の前のコーンポタージュを啜る。ま、無理するなってことだよ。あんまり深堀りしてほしいわけじゃない。


「先輩も馬鹿っすね。ちょっと疲れたって言ったのに、ワタシにコーンポタージュいっぱいくれちゃって……けど、なんか元気出ちゃいました。頑張れって言ってくれてありがとうございます!、少し頑張れそうです。」


早速結論付けられてしまい、少し恥をかいてしまう。情けない先輩だよほんと。


「そうかい、それなら良いよ気をつけて帰ってね」


そう言いながら僕は、自転車に乗り、後輩に手を振りながら、ペダルを漕ぎ進む。ま、今日は思ったより良かった。


ん?あれそういえば、塾帰りなのに何で僕がバイト帰り何がわかったんだろ?、たまたま見てたのかもしれないな?。ま、そういうことなんだろう。

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