第2話 スライムってなんでアイドルみたいなんだろう。まじで嫉妬しちゃう僕も完璧で究極のアイドルになりたい
「お前どうしたその傷」
授業中、科学の問題を解いていると、見回りのために通りかかった担当の先生が、僕の手の傷を見た。
「料理で誤って包丁で切っちゃいました」
「まあ、料理ならありえるか……具合が悪くなったら言うんだぞ」
小さく返事をしたあと、僕は問題を解く。因みに僕の得意料理はパスタだ。後、レンチンもお手の物、これがあったら大体は生きていける。
「はい、授業はここまで。予習をして予め問題を解くように」
ガラガラと音を立て、ドアから立ち去る先生を見たあと、カバンからスマホを取り出し、メモのアプリを開く。
今日は初めてゴブリンを召喚した3日目、ゴブリンが掲示版の住人と化しつつあるという大きな変化を横目に僕は次の召喚に躊躇いを感じていた。
大きな要因は塩の後片付けの問題だ。あの塩を片付けるのに1時間以上かかってしまい、その面倒臭さのせいというのもあるのかもしれない。その上、たまたま家族がいなかったのも躊躇いの拍車をかけていたのかもしれない。
(こういう興味のあることは人目を気にせず行うのが普通の人だが、趣味が趣味だしな)
趣味は何ですか?と聞かれ召喚です。と真顔で言うのも問題がある。時代が違えば丸焦げだ。現代でも思想の自由で何とかなっても世間は厳しい。
ということもあってか、心の中でやりたいと思ってもメモの中でだけしか書けていないのが現状だ。今日こそと、僕の中で考えつつメモを書く。一応準備もしており、今日から帰ってできるような状態だ。その上バイトもオフ、できない理由が見当たらない。
帰宅した後からやろうと、ニヤニヤと口を緩めていた所、隣からキモッと声がする。目だけでみると、同級生からの声であった。
「これだから陰キャは……」
隣で僕の陰キャイジりする名前は
悪態混じりに言う彼女に僕は「お前、そんなことしか言えないの?情けないねぇwww」て言ってやりたい。出来ない自分が本当に情けない。ただ、美少女だからこういうシチュも別に嫌いじゃないです。むしろご褒美です。
「自演自作で作った傷でちょっと心配されただけで浮かれてんの?、というか、カッコつけて目線だけって……キモッ」
そう言われ、情けなく目線をスマホに戻す。ただ、それも演技の一つ。こうやって悪口を美人に言われるのはただの精神回復にしかならない。僕はMじゃない。追い打ちを掛けようとしたのかダサッと声が聞こえたが、寧ろ心地が良かった。
改めて言おう僕はМじゃない。神に誓おう。何の神に誓うかわからないけど。ニャルラトホテプでいいだろ。
ーーーーーーーー
「今日の僕は気分が良い、気持ちが良い内に召喚して、気分が良いまま、レスバだ!!やるぞゴブリン!、今の俺達ならレイドボスだって一瞬で沈められる!!」
家に帰り、俺は早速自室で召喚の儀式をした。家族が居ないこの時間帯でしか、この大騒ぎを聞かれることがないのだ。
パソコンに齧りついてたゴブリンにバットを持たせ、僕は包丁を持ち目の前の燃えた紙を見る。
それは次第に大きくなっていき、高さ50センチの比較的小さく丸みのある形になっていく。火が消える頃には国民的アイドルモンスター、スライムのお披露目だ。
「ゴブゴブ!!」
「ん?、可愛いなお前もそう思うか」
その愛着のある跳ねりは僕の心を鷲掴みにし、僕悪い子じゃないよと態度で示している。
「おお、可愛い子だなぁ。こんなのなら僕を傷つけnゴボォ!!」
触ろうかと近づき、手を伸ばした瞬間スライム姿を消し、僕はドアに飛ばされた。僕はしばらく息ができず、その場でうずくまる。僕が居たところに元気よく跳ねていた。
「ゴブゴブ…ゴブ!!」
このゴブリン、コイツ危険だと伝えていたのか。この餅の食べられない劣化版の分際で僕に突進してくるとは……クソ、舐めやがって3等分にしてだんご3兄弟にしてやる。
「死ねやぁ!!」
僕はお返しとばかりに包丁をスライムに向けて投げつける。その包丁はスライムを貫通し、壁に刺さる。スライムはまるで聞いてないかのように一定のリズムで跳ねている。物理の完全耐性をお持ちのようだ。だが、俺は見抜いている。こういうのは大概、真ん中にビーズがあるか、火とかで燃やせば圧勝と言うことを。
そして、目の前のスライム。コイツ、赤い球体が中心にある。痛いのはもう嫌だが、もう一回受けるだけならなんとかなる。
「ゴブリン、僕が惹きつけて突進させる。突進した時には多分無抵抗になるはずだ。多分絶対、不安になったけど絶対。その隙にお前は中心の球体を狙え。」
「ゴブ」
首を縦にふるのを確認し、僕はスライムに近づく。スライムはアホだ。学習能力のない救いようのない跳ねる水だ。こんなゴミクズ野郎に負けるわけがない。
「グッ!」
案の定近づいた僕に向かって腹に突進をし、僕は吹き飛ばされる。目の前のスライムは、僕に突進した反動で宙に浮く。ゴブリンはすかさず、スライムの中心部に向かってバットを振りかざし、見事にそれにクリーンヒットし、赤い球体は砕け散る。
「ッシャオラァ!!、見たか水モドキィ!!突進程度じゃ死なねぇんだよぉ!!バカバカバーカ!!」
僕は、目の前に無惨に横たわり、光となるスライムを見ながら、煽り散らかす。今この文字を読んでるそこの君、汚いとか言わない。
「ありがとう。ゴブリン、君がいなくちゃ苦労しただろう。ま、勝てたけど?、圧倒的にボコボコに出来たけど?」
ゴブリンは赤い目を少し細めさせ、疑わしそうに見る。冷や汗をかき逃げるように消えたスライムの跡を足早に見る。そこには真っ二つに割れていた赤い球体の片割れと、スライムのカードが入っていた。
「球体?、召喚の媒体として使えそう。一緒に燃やせるか怪しいが……」
媒体が出るのは召喚の種類の可能性として大きく影響する。これは良いドロップアイテムだ。
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スライム
戦闘能力
6
SKILL
集団行動 2
擬態 1
ーーーーーーーー
これは、良いカードだ。ニヤニヤと笑っていると、ゴブリンから何処からともなくカードが渡された。ゴブリン自身も戦闘能力が1上がり、6になった。おお、成長するとは、初代の悪魔召喚プログラムじゃないのね。
スライムを呼び出すと、コイツはどうやら餅が好きらしくよく、食べるようになっていた。ゴブリンよくは喉を詰まらせて死にかけている。しかし、スライムが餅を食べる姿はまるで共食いのようで衛生的によくない。他に好きなものを見つけようとネットで調べていると、淫夢にハマってしまった。もっとヤバいものに手を付けてしまったらしい。おかげで家のパソコンの履歴は野獣と掲示版を行き来しているようで、この世の終わりのような内容になってきている。元々はお前らのものじゃないぞ。
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