第2話
2
私のまだ細い腕の方に針が刺さりはじめてから2日がたった。
「大丈夫?」の部内のグループラインは後輩の山内くんが昨日の朝遅れてしてからっきり、ひとつも来ないままでいる。
きっと、彼らは高校の夏という自由にとらわれて勉強なり海なりで精一杯頑張っているのだろう。
そう思うと私という存在がいることが邪魔物だなんだろなぁ。
そう思ってしまった。
この病室には二人の患者がいる。
小学生5年生の盲腸炎で入院していた男の子と私の二人だ。
彼は私が病院に入ってきたひの夜に手術を行って順調に成功して母親に持ってこられたサマーワークを上下ともに削られている2Bであろう鉛筆で文字を潰しながら算数の問題をといていた。
私も夏休みの宿題とかないとな。
そう思ってリュックサックのファスナーを開けてみると、汗のついたタオルがもうすぐカビが生えますよーという臭いを放って、かろうじてルーズリーフといつもなんでか持ってきている数学の青チャートとペンケースが苦しそうにそこにたまっていた。
チャートかぁ。
そういえば入院したきりリュックサックの中身変わってないんだった。
すこし汗くさくなったチャートはそのままにしておき、ルーズリーフを祐夏は取り出して、ページをめくりはじめた。
5月13日のことがかかれていて、テーマは組み立て除法。関数式を余りがないように割っていくやつだっけ。
けどページが上からしたになっていくほど文字が液体になっていって、よめない、、、
そういえばあのとき授業の後半寝つづけてて、休み時間が半分くらい過ぎたときになんとか起きて、黒板消しをする代わりになんとか急いで書き写したんだっけ。
ページをめくっていくたび、日にちとテーマだけがちゃんとかかれていたルーズリーフがどんどんと浸水していき6月の期末テスト前になれば日にちですら6と0がわからない液体へと変わってしまった。
こんなんだったらちゃんと授業聞いとくべきだったなぁ。そう思ってもあの頃のわたしにはこんなことが起きるだろうと予測するわけがないことにため息をついた。
続いて黄色の仕切り板をめくったり、赤色の仕切り板をめくったりして、授業を思い返そうとしたがぜんぶ季節の温度変化による気温上昇でどんどんと文字が液体化していく変化をみるパラパラ劇場となっていって解読ができなくなっていた。
仕方がない。
祐夏はスマートフォンを取り出してInstagramを立ち上げた。昨日とおとといの二日間で残しておいた1.5ギガを使いきってしまったので、立ち上げから画像が出てくるまで全てがのろのろとして、ガビガビだった。
そんな中立ち上がった一枚目の写真は友達の洋美が、海でボーイフレンドといっしょにすなの上でピースをしている写真。
祐夏は二分半待った努力を消去してスマートフォンをベットに投げ捨てた。
夏がまた嫌いになってしまった。
午後になると母親がやってきて、リュックサックの中身をとりかえてくれたり、向こう側の少年の退院の迎えがやってきて、昨日勉強を教えたことを少年の母親に感謝されたりと色々なことがあって、221号室の中には祐夏とルーズリーフ、そしてシャープペンシルと制限から解放されたネットの海を縦横無尽に動き回ることの出きるスマートフォンがしずかに静かな夜を迎えた。
午後七時頃に早めの夕飯として食べ盛りの女子高生には精進料理と言える夕飯がベットの横のデスクにおかれた。仕方なく祐夏はそれをたべて、相変わらず苦手なほうれん草のおひたしは小皿に残しておいたままだったが、看護師の中西さんはなにもいわずにトレーを回収していったのはいがいだと思った。
テレビでもみよう、そう思って穴が二つほど空いたテレビカードをラインがはいっているほうを右にしていれた。
いつもはこの時間なら祐夏の好きなクイズ番組をやっているはずなのだがなにか恐ろしい事件が起こってしまったらしく、池上彰が特番を組まれてニュースのことについて解説していた。
ニュースをやっていくうちにあきらかになっていったのは芸能界の一斉告発とあきらかになった芸能界の闇で、韓国の芸能事務所のアイドルタレントたちや女優が、これは本当に最悪ですね。と一方通行の非難をしていた。
テレビカードに3つめの穴を空けてしまったと後悔してしまった祐夏。
なにか幸福の情報があるかもしれないとツイッターを開いてみる。これも同じように非難だらけで、バズってツイッターに掲載されているのは生きていく上での愚痴か、幼い命を盾にした上での教育関係者叩き、はたまたは、芸能人か政府関係の揚げ足取りだ。
「ウォェツ。」
病気の症状か、病気が体を中から脆くしているのか、三十分前に飲んだミネラルウォーターと米のデンプンが胃液と混ざってスマホにかかる。
スマートフォンの軽やかな海のロック画面がそれに導電性を探知して何度も反応し、五分間はなにも動かすことができない金庫状態となってしまった。
「もうっ」
そんなこんなをしていると、時計は逆3時の五分前に、あとすこしで、病院全体が完全なる沈黙となる時間となってしまった。
ご主人様がわからず反抗してくるスマートフォンをティッシュで吹いて、ゴミ箱にティッシュを挿入した祐夏はルーズリーフのページをどんどんとめくっていき最終ページの一枚目を探し当てる。
書きかけだ全てがはっきりとそして読めるその文字の羅列の一行下にこう書き込んだ。
死にたい。
本当に死にたい。
死んでもいいよね。
みんなは余り興味ないから。
死んだとしても七日でわすれて変わらずの日常をおくるはずだから。
祐夏はこう書き込んで、窓ガラスを覗き込む。
ここは四階、一度で死ねぬかな。
その窓のロックをはずそうとしたのになぜか動けなくて、体がこわばって、目がみえなくて、さきに暗黒が体に訪れてしまった。
それなのに体は羽毛を探し当てて、そのまま私は倒れこんでしまった。
そして、闇は一段階暗くなってきがついたら、朝を迎えた。
抗患日記 @Ai-Ai_ser
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