第6話(最終回)
それから、私と丸岡は何度か食事を重ねた。
決まって私が仕事後に会うことにしており、私はそれが楽しみで仕方なかった。
丸岡自身が裏社会の人間だから、一般社会に生きる私とはあまり白昼堂々と会えないのだ。
「河合さんの会社にも周辺の人にも迷惑をかけられないからな」
丸岡はそう話した。
『よねや』で飲みを重ねるうちに、彼とさまざまなことを語り合った。
家族のこと、これからの人生のこと、お互いの趣味や夢のこと…など。
人生の舞台は大きく違っても、彼には何だか惹かれるものがあった。
彼はしばらく友人ではあったが、次第にそれ以上の感情を感じていった。
よく会うようになって3ヶ月後。
私は思い切って打ち明けてみた。
「ねえ、丸岡くん。いきなり悪いけど…あなたを名前で呼びたい。蓮志くん…だよね?」
「おお、いいけど。俺も…リツさんって呼んでいいか?」
「会社の先輩からは『りっちゃん』て呼ばれているよ」
「なんか恥ずかしいけど…嬉しいよ。改めてよろしくな、りっちゃん。」
丸岡、いや…蓮志との距離が少し近くなったようで、私は心が踊った。
彼は無骨な正義漢で、決して器用な人ではない。
世間一般的にイメージされているような、女好きの派手なヤクザとも程遠い。
そんな彼だが、私は蓮志が好きだ。
お互いに生きる社会が違う以上、男女の仲になるのは決して簡単なことではないのはわかっている。
いつか蓮志に、胸の中にある熱い思いを打ち明けられたら…。
そう思いながら、私は蓮志のくれたハンカチをにぎりしめて眠りについた。
ー終ー
夜のハンカチ 夜海野 零蘭(やみの れいら) @yamino_reila1104
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