第4話

「いらっしゃいませー」


「2名でお願いします」


「お好きなお席どうぞー!」


居酒屋『よねや』は、こぢんまりとした小さな居酒屋だ。

カウンター席が9つ、テーブル席・座敷席が6つだけだ。

若い大学生風の店員が2人と、カウンター席の料理人らしき中年男性で店を回しているようだ。


私と石井君は、とりあえずカウンター席についた。

生ビールを頼んで、「お疲れ様です」とひとまず乾杯をした。


20分程度経った頃だろうか。


「いらっしゃいませ!丸ちゃん、今日もお疲れさん!」


「おう大将!今日は俺と舎弟で来てやったぜー!」


聞き覚えのある声がして、私は思わず振り返った。

すると、丸岡と舎弟らしき青年が2人並んでいた。


「丸岡さん、偶然ですね!私も会社の後輩と来てましたよ」


「河合さん!まさかこんな居酒屋にいるなんて…」


びっくりして顔を見合わせた。


「兄貴、この女性の知り合いっすか?」


「ああ、ちょっと近くで通りかかったコンビニで知り合ったんだ」


舎弟の名前は森本というらしい。

せっかくだから、石井君と私は2人とカウンター席で飲むことにした。


丸岡も森本も、見た目は厳ついが気さくに話しかけてくれた。

酒とおつまみと共に、4人で楽しく話をしていた。


そのなかで、丸岡が口を開いた。


「河合さん、そして隣の兄ちゃん、黙っててごめんな。俺と森本は、山瀬組っていう極道なんだわ。一応、この街一体のゴロツキや悪いやつをとっちめる仕事している。この店の大将には、うちの組が代々世話になっているんだよ」


「そうだったんですね!すごいです。2人共、見た目からして強そうだもの」


石井君は、一瞬びっくりしたが彼らに関心を持ったようだ。

私と一緒になって、目をまん丸にして2人の話を聞いていた。


「俺も2人みたいな強い男に憧れますね」


「いやいや…俺たちは社会のクズってやつですよ。丸岡の兄貴ならともかく、俺はまだまだ見習いなもので」


しかし、横にいる丸岡が笑いながらこう続けた。


「いやいや、森本は頑張ってるよ。もし困ったことがあったら、なんでも頼ってくれよ。いつでも駆けつけるからさ」


そう話すと、丸岡は私たちに山瀬組の名刺を渡してくれた。


「またお二人の話、聞きたいです!」


「おう兄ちゃん、また近いうちに会おう。」


私たちはメッセージアプリの連絡先を交換して、その場はお開きにした。


「ヤクザって怖いと思ってたけど、2人ともいい人でよかったっすね。俺、憧れてしまいました!」


「そうか、よかった。また飲みに行けると良いね」


石井君と途中まで話をしつつ、私は自宅アパートまで帰宅した。


ふと、スマホを見ると丸岡からメッセージが入っていた。


「河合さん、今日は皆で話せて楽しかったよ。ありがとう。嫌じゃければ、今度2人で飯でも食いにいかないか?」



私の返事はもちろん



「わかりました。都合のいい日時、あとで連絡しますね」




私は心を踊らせながら。その日は眠りについた。







続く

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