第4話 老人が悲しむ
老人は空を仰いだ。
「古来より人は空への憧れを謳ったものだ。天使には羽を生やしたものを想像し、鳥に憧れ、ついには飛行機を発明した。空にはロマンがあるんだよ。わしもその一人だ。この歳になっても飽きずに空に憧れを抱き続けた。そして遂にこれを完成させたんだ」
そして老人は小瓶に目線を移した。
小瓶を見ながら、嬉しそうに目を細めた。
「それで、使うとどうなるかそろそろ教えてもらっても?」
若い男はそんな老人を急かすように尋ねた。
「あぁ、これを振りかけると、劇的な進化がもたらされ、翼が生える!」
「飛べるということですか!」
若い男は半信半疑ながらも興味を抱いた。
「そうだ、すごいだろう。自分の体で自由に空を飛べるんだ」
「ご自分にはお使いにはならないんですか?」
そう若い男が訊くと、老人は諦めたような悲しい表情を少し見せた。
「実は進化できるといっても、その人間の肉体が元気な者でないと十分な効果が得られないのだ。わしは・・・空を飛ぶには歳をとりすぎた」
老人は泣きそうに笑った。
「わしは、こんなにもやりたいことができるのに、体がいうことをきかん。でもお前さんは若いのに、死のうとしている。まだ色々できるのにな」
若い男は老人の小さな姿を見て、初めて親近感を覚えた。人間幾つになっても悩みはあるのだ。
「そんなことを言ってもらえるとは、飛び降りようとしていたのに」
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