第2話 老人が語りだす

頭髪は白く変わっているところを見ると、結構な年齢を重ねている。


(この人、俺が来たのを追ってきたのか。それで俺がここで死のうってのを止めに来たのか。めんどくさいことになったぞ)


 若い男は露骨に不愉快な顔を見せた。


「あんた、ここから飛び降りるのか?」


 老人は若い男が脱いだ靴を見てそう訊いた。


「・・・あぁ、まあな」


「ここは確かに自殺の名所として有名じゃが・・・、やめなさい!」


 そら来た、老いぼれのうるさい説教が始まるぞと若い男はげっそりした。これならサッサと飛び降りてしまえばよかった。


「あなたには関係ないでしょう!」


「いや、関係大有りだ!」


 老人はカッと目を見開いた。


(ここであったが、何かの縁だ。わしの話でも聞けって昔話でも始まるんだろ。御涙頂戴話だろ)


「ただ死なれては困る」


「なぜです?」


(まさかこのビルのオーナーか?そうなると厄介だぞ!)


「死ぬのならその命、わしに預けてはくれないか?」


「……は?」

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