第6話 マブダチ
その日を境に、私とシロはかなりの頻度で週末に遊ぶようになった。
金曜と日曜。
土曜と日曜。
そして今日も今からシロと会う。
シロは、毎回新しいナカマを呼んでは、私に会わせた。
シロが紹介してくる男は、チャラいやつばかりなので、いまいちピンとこない。
にも関わらず、シロは相変わらず私に出会いの場を提供する。
私はシロとシュウちゃんとの会話を思い出した。もしかしたら、シロは呼んだ男たちから紹介料をとっているのかもしれない。
でも、まぁいい。
今日は、珍しくシロが私をランチに誘ってきた。酒もなしにシロと会うのは初めてだ。
シロは、駅前のタワーの、女子会で使うみたいな可愛い店に私を案内した。
この店にはまるで似つかわしくない、大柄のヒップホップな男が目の前にいる。小さな座席2つ分サイズの体格のシロには、ここの椅子は小さすぎて、今にも壊れてしまいそうにミシミシと音ををたてている。
「シロ、珍しいじゃん。ランチなんて。」
「いや、なんかさ、最近俺たちマブダチだなって思って、酒なしで話してみたくなって。」
そういうと、シロはグラサンとキャップをはずした。
サングラスと帽子の下には、ワイルドな見た目とは裏腹に、小さなくりっとした丸い目と、10円では済まない、500円玉サイズ以上に丸く禿げた坊主頭があった。
想像していた"中身"とはぜんぜん違うシロの姿に、私は驚かないわけではなかったが、なにか、シロが私に素の自分をさらけ出してくれたような気がして、嬉しくなった。
「そういえば、うちら毎週あってるけど、だいたいみんなでワイワイしてるから、お互いのことよく知らないよね。」
「だろ?だから色々話したくてよ。」
「シロって不思議なヤツだよね。今まで会ったことないタイプ。」
「よくいわれる。笑」
そういうとシロは、オムライスを注文した。
「シロ、意外と可愛いもの頼むね。もっとヘビーなものいくかと思った。500gステーキとか。」
「だろ、意外とそうなんだよ、俺この体型のくせに、そんなに肉とか食わねぇんだ。」
シロは楽しそうに笑った。
私はペペロンチーノをフォークで巻きながら、くすっと笑った。
「アイカさぁ、ペペロンチーノ頼むとか、俺とキスする想定とか1mmもないのかよ?」
「は?うちら今までいつそんな雰囲気になったことあった?ないでしょ!」
「でもよぉ、アイカ、どMだろ?俺、どSだし、意外とおれとアイカ、そっちの相性会う気がするんだよなぁ〜」
シロはニヤケながら普通に下ネタを始める。
「あのさぁシロ!!ここ、レストランだから!話す内容考えてよね!」
なんでこの店を選んだんだ。こういう話しがしたいなら、バーでいいじゃないか。
この調子だと、シロは、一般的なデートの経験とかあんまりないんだろうな。
私は怖い顔でシロを睨んで、しーっ!と口止めした。
周囲のマダムが、ヒソヒソとこちらに目を向けていて恥ずかしくなった。
「それよりさ、この前聞けなかったけど、シロってなんの仕事してんの?」
いつも週末は毎日朝までジョーカーにいるシロが、いったいどんな生活をしているのか純粋に興味を持った。
「え、俺は、、、その、、母ちゃんの世話したり、バイトとか、あとはジョーカーに人集めたりとか、、」
いつも元気なシロが、急にどもったような喋り方になり、なにか私は聞いてはいけないことを聞いてしまった気がした。
とりあえず、定職にはついていないようだ。飲み代は、全て仲間の紹介料で賄っているんだろうか。
「あっ、ごめん無理に話さなくていいよ。」
そう言うと、シロは下に落とした目線を上げ、また私の方を見て、いつもの顔に戻った。
店を出る時、シロが言った。
「アイカ、ごめん、サイフ忘れてきちゃって。金貸してくんねぇ?」
「‥‥え、、、うん、わかった。」
自分から誘っておいて、財布を忘れるとは何事だ。呆れながらも、私はシロのランチ代を立て替えた。
「アイカ、上の階の映画館とかいかね?」
立て替えてもらったことも忘れたのか、シロはノリノリの笑顔で聞いてきた。
「やだ。サイフないんでしょ。無理。」
「そんなぁ。今度ちゃんと返すからさ。」
哀願するシロがなんだか可哀想に見えて、私は仕方なくシロと映画館にいった。
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