第5話 ジョーカー
啓介とのつまらないセックスは、時間の無駄だった。
こんなことなら家にいればよかった。
終電まであと1時間。
この帰るのは嫌だ。楽しい気持ちに戻りたい。
じゃないと、またむしゃくしゃして寝られずに朝まで過ごす羽目になるから。
私はシロのことを思い出した。
シロはジョーカーで飲んでいるんじゃないだろうか。少し飲んでいこう。
「もしー?アイカだけど。」
「おー?アイカ、どこにいんの、ジョーカーにいるから、こいよ!」
シロの明るい声の奥に、賑やかなBGMが聞こえる。私は、なんだか少しホッとして、ジョーカーへ向かった。
「アイカー!飲んでたんか?もう少ししたら、ヤマトとリクもくるぞ。」
「え、今から飲むの?平日の11時だよ?」
「さっき仕事終わったんだって。で、アイカこそこんな時間に何やってんだよ。」
「店で飲んでた。んで、その後一緒になった男が、自分だけよければいいヤツでほんと、腹立って。」
「そっか。寝たんだな?だいたいのヤツはそんなもんじゃね?」
慰めろよ、このやろう。
「ふーん、シロもそんな感じなんだ。」
無表情で私は問い詰める。
「いや、俺はすげぇ尽くすよ。そのかわり、相手にも同じようにしてもらうけどな。」
少し嬉しそうな顔をしてシロが言う。
「ふーん。。」
シロがどんなエッチをしていようが興味はないが、さっきの男よりはマシだと思った。
「あ、ヤマトたち来たわ。」
外の大きな通りの賑わいが一瞬見えて、2人が入ってきた。
「お!また会ったな!」
ヤマトはシロの横に座る。
「アイカ、昨日ぶりだな。笑」
リクが私の横に座る。
シロはヤマトに話しかけながら、私の顔をチラ見した。
「アイカよ、さっき変な男にひっかかったんだとよ。」
「何それ!どんな男??」
ヤマトが楽しそうにカウンターに身を乗り出してきた。
「自己中なサイテー男。(おまえもな。)」
「アイカ、変なヤツいっぱいいいるから、ちゃんと見る目養えよ。」
スーツ姿のリクが言った。
「リク、いっつもスーツだけど、サラリーマンなの?ヤマトは、どこからどうみても現場の人って感じだけど。2人が仲良いのが謎。」
「だよな!俺とリク、1年前に共通のダチ通じて知り合ったんだけど、お互いなかなか彼女できないから、フツーに友達になったんだよな!」
ヤマトとリクの出会いが、なんだか私と結衣みたいで笑えた。
「俺は、中小づとめ。でも、そこそこ年収あるぜ。」
おとなしいリクが、ちょっと自己主張している。金持ちなんだろうか。
「アイカ、終電で帰んだろ?時間少ねぇから、1000円でいいよ。」
「あ、ありがと。」
シロは私から1000円を受けとると、また何やらシュウちゃんに耳打ちしている。
私が渡した金をシロがどう運用しようが、シロの自由だ。私は、今この時間を楽しめれば、それでいい。
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