第7話 ポップコーン

映画館についたシロは、「あれみようぜ、あれ!」と、流行りの純愛ドラマを指差した。

「シロらしくなっ!!」

コワモテのシロのチョイスに、私は思わず吹き出した。

「なんでだよ、いいだろ俺が恋愛映画見たって。」

「私は、ディズニーがみたい。あっちにしようよ。」

「じゃあ、ジャンケンで決めようぜ。せーの!」

ついついジャンケンの掛け声に乗せられて、負けてしまった。


「ちぇっ」

「イェーイ!!」


ビックサイズのポップコーンを買って、暗い館内の席についた。

シロは早速、ボリボリとポップコーンを食べ始める。

「ねぇ、その速さで食べてたら、始まる前になくなるから!てか、私のおごりだからね、ポップコーンも!!」

「あぁ、わりぃわりぃ。じゃさ、ポップコーン食べれないように、手ぇ繋がねぇ?」

「はぁ!?‥やだし。」

なんでランチも映画もポップコーンもおごった上に、シロと手を繋がなければならないのだ。

「あっそう。じゃ、いいよ。」

シロはまたすごい速さでポップコーンを食べ始める。このままでは、私の分まで食べ始めそうだ。

「ちょっとマジ、なんなのほんと。‥わかった、繋げばいいんでしょ。繋げば。」

私は仕方なくシロと手を繋いだ。

嫌々つないだはずのシロの手は暖かくて、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。

「序盤から食べ過ぎないでね。」

「おぅよ!」


ドラマも終盤にさしかかるころ、何やら鼻をすする音がうるさくてシロの方を向くと、シロはグラサンをはずしてボロボロと感動の涙を流していた。

(うそ!?マジで!?笑)

見た目とのギャップが面白すぎて、私は笑いを堪えるのに必死だった。


会場を出て、晴々とした顔のシロが言った。

「すげー感動したな!!また見たい!!」

「私も、すごい面白かった!(シロが泣いてて)また見たい!(シロの泣いてる顔を)」

「アイカ、ディズニーもいいけど、こっちにしてよかっただろ?」

「うん、ある意味ね。てかシロ、ほんと面白いね。シロといると、私、楽しい。」

「え!?」

シロは一瞬、ドキッとしたような顔になって黙った。

ポロっと本音を出してしまった私の方まで、なんだか恥ずかしくなって、照れ隠しをした。

「シロが、ドラマとか見て泣くんだ〜って思って、さっきずっとそれが面白くてさ。」

「なんだよ、別にいーじゃねーかよ。」

シロは不貞腐れた。


私達はそのまましばらく目的もなくブラブラと昼の街を歩いた。

人混みの中なのに、シロといるとみんなが勝手に避けていくから、歩きやすい。

「シロに昼の街、似合わないね。」

「夜の男だからな。それよりアイカ、パフェとか、観覧車とかいこーぜ。」

顔に似合わず、次々と付き合いたての高校生カップルみたいな提案をしてくるシロ。

「シロ、サイフないの忘れたの?私はもう帰るよ。」

「ま、待てよアイカ。じゃあさ、公園で夕方までブラブラして、夕方からジョーカーにいこうぜ!そしたら飲み代浮かせてやるから。」

「あ、そう。ならもう少し付き合ってあげる。」

「おし。じゃああっちのイスまで歩こうぜ。アイカ、もう1回、手繋がない?」





「え、やだ。」



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