決別

 壁を飛び越えてから5時間経った。時刻は深夜4時を回った頃だろうか。

 俺はドサッっと地面に胡座をかき、ふぅとため息を吐く。


「…ここまで来れば奴らも直ぐには追って来れないだろ。」


 それもそのはず、今いる場所は研究所から数十キロ離れた標高5000m程の山の頂上だ。

 いつまでも先が見えない森を走るよりかは高い所に登って周囲の情報を得る方が良いと判断し、近くにあったこの山を数十分で駆け上って来たのだ。


 そのせいで全身クタクタ…という訳でもなく、息こそは上がっているものの疲労は全く溜まっていなかった 。改めてこの身体の異常性を認知する。


 自身の異常性を再認知したところで今も研究所に囚われているであろうを思い浮かべる。

 しかしそれ以上彼らのことを考えるのを辞める。それは彼らと脱走前に交わしただからだ。


「『脱走した後は俺たちのことは気にせず生きろ』…か、無理に決まってんだろ。俺たちはあんな地獄みたいな所で互いに助け合って、支え合ってきたんだから…」


 一滴の涙が頬を伝う。次第にそれはどんどん溢れ出していき、顔はぐちゃぐちゃになっていた。


 俺が脱走できたのは彼らの手助けありきのものだった。彼らの内のひとりが研究所内の電気に接続しショートさせ、またひとりは収容されていた実験体達を解き放ち、奴らを錯乱させる。他の仲間達も俺のためだけに協力してくれた。


 そんな工程を経て、俺は今、外に出られているのだ。

 だからこそ、俺は彼らの事を気にせずに生きていけない、ひとりだけ脱走したという罪悪感から彼らの事しか考えられなくなっていた。

 だがこんな事を考えるのは彼らの協力を無に返すの同じだ。


 ぐちゃぐちゃになった顔を腕で拭い夜空を見上げる。

 俺は覚悟を決め、宝石のように輝く星に向かって決別する。


「俺は、あいつらの分まで生きる!!!」



 

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 えちょまです。

 次回から物語進んでいきます(多分)

 拙い文章ですがよろしくお願いします。

 それじゃ

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