普通じゃない人達が住むアパートの管理人になりまして

えちょま

脱走

 プアンプアンプアンッ!!


 遠くから警報音の音がけたたましく鳴り響き、灯台の光が暗闇を照らしている中、俺は全速力で異常に成長した森の中を走っていた。


 俺の名前は天宮空星あまみや そら。親は知らないし記憶にもない。物心ついた時からガラス張りにされた部屋に監禁されたいた。そこから今に至るまで数々の身体実験を受けさせられていた悲しき男だ。


 たった今、俺は警報音が未だに鳴っている『新人類開発所』から脱走してきたところだ。


 新人類開発所は簡潔に言うと、人を人として扱わないクソみたいな研究所って感じだ。主に開発しているのは人についてだが、他にも色々な分野に手を出している。例えば今走っている森は奴らの開発した薬によって異常に成長させられたものだ。


 一通り説明を終えると、僅かに後ろから声がする。

 耳を澄ませ、そちらに意識を集中させる。


「おい!居たか?!早く探し出せ!あいつは特に危険な個体だ!絶対に見つけろ!!」


 どうやら警備員のようだ。他にも声が幾つか聞こえるため、開発所の警備員総出で捜索しているのだろう。


「おいおい個体なんて言うなよ。というかもうここまで来てんのか…もう少しスピード上げるか。」


 スピードを上げ、数分程森の中を走り続ける。服が枝などで引き裂かれボロボロになってきた頃──数十メートルはある壁が見えてきた。

 立ち止まり、壁に何か仕掛けがないか確認する。


「何の変哲もない壁か…こんなもん建てても俺には関係ないけど…」


 数歩程後ろに下がり、勢いをつけて走り出し──地面が少しえぐれるぐらいの力を脚に込め、ジャンプする。


「ふっ!!…っとと!」


 壁を軽々と越え、地面に着地する。この高さから地面に脚を着くと大抵の人間は脚の骨がバッキバキに砕けるだろうが、俺の脚は骨どころか痛みさえもない。


 何故かって?それは俺が新人類遺伝子…『NH-1』に『完全適合』したからだ。

 新人類遺伝子に適合すると全ての能力が爆発的に上がり、身体が馬鹿みたいに強化されるのだ。


 どれぐらいかと言うと、世界一速い男…ボルト?の100mタイムが9.58なのに対してその半分以下のタイムで走ることができる程だ。

 片腕だけでも10t以上の重さがあるものも持てたりする。

 だから俺の脚には傷ひとつ無いのだ。

 それほどまでに新人類遺伝子は適合すればとんでもない力が得られるのだ。

 そんな最強とも言える力を得られる新人類遺伝子だが、当然デメリットもある。まず、適合しなければ身体崩壊する。適合しても、脳が耐えられずドロドロに溶けてしまうことがある。

 これらが起こらなかった者達を『完全適合者』と奴らは呼んでいた。


 しかし俺は力をそんなことには使わない。たった今使ったがノーカンだ、ノーカン。俺はただ『普通』の人生を送りたいのだ。そのために、俺はこの力を使う。


「っと、そんなこと考えてる場合じゃないな。早く逃げなければ。」


 俺は本でしか見たことがなかった美しく輝く星空を見ながら、ひたすら行く宛てもなく走り続けた。



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 えちょまです。

 こうゆう設定の書きたかったんで書きました。3月に入ったらこっちと闇隠並行して書いていきます。

 おねしゃす。

 それじゃ

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