テレポーテーション

久石あまね

次元転移

 親友の卓也と俺の家で飲んでいた。


 卓也が三本目の缶ビールを呑み終えたとき、急にトイレに行くと言った。


 卓也はフラフラした足取りでトイレに向かった。


 トイレの扉が閉まり、鍵がカチャリという音がなった。


 俺は柿の種を摘みながら、テレビを観ていた。


 うつらうつらとしてきたとき、ハッと気付いた。


 卓也はいつまでトイレに入っているのか。


 時計を見ると、卓也がトイレに行ってから一時間は経っていた。


 おかしいな…。


 俺はトイレに向かった。


 ノックをする。


 「卓也〜大丈夫か〜?」


 「……」


 まずい返事がない。


 俺は卓也がトイレの中でぶっ倒れているのかと思った。


 もしそうなら、かなりやばい。


 くも膜下出血や、心筋梗塞の可能性を疑った。


 俺は十円玉を取りに行って、トイレの鍵穴にさして、ドアを開けた。


 俺の心臓は止まりそうになった。


 俺はありえない、光景を目にしていた。


 卓也がいなかったのだ。


 卓也はいったいどこへ行ったのか。


 俺は冷静に考えるため、流しにいって水を1杯呑んだ。


 あっそうだ。


 俺に黙って、卓也は家に帰ったのだ。


 俺が寝ていたからあいつは、俺に気を使って帰ったのだ。


 「ピロロロロロロロロ」


 俺の携帯電話がなっている。


 「はい、もしもし」


 「もしもし、沖縄県警ですけど、〇〇さんの携帯電話でよろしいでしょうか?」


 「はい、〇〇です」


 「ええっとですね、〇〇ビーチで泥水している山本卓也さんという方がおりまして、身元確認でお電話させていただきました」


 「はいっぃぃ?」


 俺の頭はおかしくなりそうだった。


 卓也はさっきまで俺の家にいたはずだ。


 それなのになぜ沖縄にいるのか。


 俺の家は埼玉県だ。


 埼玉から沖縄までこんなに短時間で行けるわけがない。


 俺の頭はおかしくなりそうだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

テレポーテーション 久石あまね @amane11

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ