第9話・父の愛
そうだ。京大に行こう。
思い立ったが吉日。
その次の瞬間。
俺は約1ヶ月ぶりにパソコンを立ち上げた。
高認 受け方
もう今年の第1回目の出願期限は過ぎてる。
第2回目は来月にならなきゃ申し込めない。
とりあえずAmazonで高卒認定試験の過去問集を見つけたから何冊か頼む。
届くまで部屋の隅でホコリを被ってる学校の教科書でも読んどくか。
その夜。
ためらいがちに俺の部屋のドアをノックする音がした。
やってきたのは父親だ。
また殴りに来たのだろうか。
別に構わないけど。
今日、マグカップを割ったのはわざとじゃない。
久しぶりに数学の問題に触れて。
全然解けなくなっていた自分の不甲斐なさに呆けていただけだ。
今はYouTubeの数学動画を見て自学中。
父親は俺のパソコンの画面を見つめて動かなくなった。
とくに用事がないなら出ていって欲しい。
俺の頭の中の動点Pがどこかに行きそうだ。
早く捕まえないと逃げられる。
「本当に高認を受けるつもりなのか」
なんでそれを知ってる。
まだ誰にも話してないのに。
俺は無言で睨み返した。
「昼間、Amazonからの注文メールが届いた。いつものジュースだと思ったら金額が高くて詳しく見たら問題集だったから。そうなのかと」
「そんなもん見てたのかよ。気持ち悪いな」
「親だからな」
俺は返事の代わりに舌打ちをした。
「塾に行くか?」
「行きたい」
「そうか。自分で好きなところを選んで通え」
「じゃあ、一番近いとこ申し込んで。俺、京大に行く」
少しの沈黙の後。父親は言った。
「分かった」
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