第8話・約束

俺が中学で馴染めなくて登校拒否になったこと。

そのまま引きこもりのネットゲーマーになったこと。

エリスにだけ話した。


エリスは俺の秘密を聞いても、誰にもそのことをバラしたりしなかった。


『私は大学生です。◯☓オックスと同じ引きこもりで今年は単位を全部落としましたから、学生ではないのかもしれませんが』


ある時。

自分のことは話さないエリスが、珍しくプライベートについて話してくれた。


『大学は良いですよ。誰かと一緒にいなくても許されて』

「エリスはイイ奴だから友達がたくさんいるだろ」

『全然ですよ。私はネット弁慶なのです』

「まず、エリスは弁慶なんかじゃない。エリスの良さに気付けない周りの奴らが節穴なんだ」

◯☓オックスと同じキャンバスなら。私達は友達になれたかもしれませんね』

「なってやるよ。どこ大? 俺、こう見えて結構頭いいぞ」


中学受験、偏差値75をA判定は凄いだろ。

どこにだって行けるぜ。


『京都大学です』


エリスはもっと凄かった。


『来年の春。◯☓オックスのお誕生日の頃が入学式ですね。構内に有名な時計台があるから』


俺の誕生日は桜が咲く頃。


『入学式のあと。時計台で会いましょう。待っています』


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