第219話:エリ先生のご報告とご相談


 しの女の制服に身を包んだ、エリ先生。


 先生らしさどこ行った。


 まるで、生徒。


 と言うか、見た目だけなら、まんま、しの女の生徒。


「よりによって制服て」

「似合ってるからいいじゃんいいじゃん」

「校長とか教頭とか怒られませんの?」


 先輩たちから矢継ぎ早。


 最後のぱっつん子先輩の台詞を拾った先生が。


「それっ! めっちゃ怒られたよー」


 当たり前と言えば、当たり前。


 だよね?


 先生が、生徒用の制服で授業とか。


 想像して。


 うん、めっちゃシュール……。


 あぁ。


 でも。


 あたしが、以前、ここでやった特別授業。


 あんな感じ?


 いやいや。あれって、特殊スペシャルな状況だし。


「もう色々あって疲れまくったからみんなに愚痴聞いてもらいたくてー」


 それで集合?


「それくらいなら」

「ええ、まあ」

「聞くだけなら、いくらでも」


「吐け吐けどんどん吐けぇええ」


 最後、金髪子先輩が、そう言いながら、先生の背を撫でながら、押しながら。


 席に着かせると。


「もー、ほんと、聞いてよぉ」


 堰を切ったように。


 エリちゃんの愚痴と言うか、経緯と言うか。


 苦悩が。


 零れだして、溢れ出して、流れ出して。


 そんなエリちゃんの話をざっくりまとめると。


 大家さんから火事の知らせを受けて、アパートに戻るも、その時点でかなり燃えていたとのことで。


 すでに消防隊が消火作業中ではあったものの。


 結局、アパートは全焼。


 どうやらエリちゃんの部屋の真下の部屋が出火元だったみたいで。


 一番よく燃えちゃった、とのことで。


 もちろんのこと、部屋にあったものはほぼ全て消失。


 着替えも何も無くなったために、知っての通り、金髪子先輩への、ヘルプ要請。


 その日すぐに手配されたホテルに入れたは入れた、らしいんだけど。


「復旧と言うか、アパートの建て直しに、二、三か月かかるってもぅほんと最悪」


 何が最悪なのか、と、問えば。


「遠いのよぉ、そのホテル、学校からめっちゃ遠いのぉ」


 あぁ、なるほど……。


「さらに駅も遠くってこのままじゃわたしー」


 あぁ、崩れ落ちる、エリ先生。


 今でも結構、遠いって言ってたし。


「カナさんやルミさんのお宅は?」


 お友達のところに、居候も、不可能ではないかな、と。


「あの子たちはもっと遠いのよ……」


 なるほど。


 他にもいろいろと、不便や生活の苦労はあるにせよ。


 目下の大問題は。


 通勤時間。


 通学時間?


 それに。


「スーツはどうされたんです? 多少よれててても昨日着てたのでよかったのでは?」


 そう、あえて、金髪子先輩の予備の制服でなくとも。


「もともとクリーニングに出そうと思ってたとこだったし小坂さんが何故か持って来てくれたから着てみたくなっちゃったテヘ」


 テヘっ、て。


 可愛い。


「それでクリーニングに出しちゃった、と?」

「うん。ホテルでクリーニングサービスやってるから、えいっ、って」


 えいっ、て。


 可愛い。


「めっちゃ怒られたけど非常事態だからってことで校長にも許可もらったよー」


 さすがに校長も、そのあたり無下にはできない、よね。


「あーそうだそうだ、それで真綾ちゃんにご相談」


 ん?


「何です? 先生?」


「真綾ちゃん家に居候、できないかなー、二、三か月でよいからー」


 はいぃ?


「はいぃ?」

「なっ!?」

「何ぉっ!?」


 あたしのみならず。


 先輩たちも、驚愕。



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