第217話:コンビニでブラは売ってるの?
夜。
帰宅した母さんにも、エリ先生の状況を伝える。
「それは……とても心配ね」
「うん、でも」
「そうね、下手にお声がけする方が迷惑にもなるし、ね」
そうなのよね。
歯がゆい。
手も足も。
「でも」
母さんが、でも、と、何か?
「下着って、コンビニで買えるんだ」
そこ?
「そこなの?」
「うん。お母さん滅多にコンビニ行かないし、若い頃に行ったコンビニでも下着とか売ってなかった気がするわ」
へー。
「そうなの? 昔から普通に売ってるものだって思ってた」
何故か。
エリ先生の火事の話から、母さんと『コンビニ下着』について調べる事に。
母さんのノートパソコンを持ち出して。
ふたり、並んでその画面を覗き込んで。
「えっと、『日本のコンビニエンスストアで下着の販売が始まったのはいつ頃ですか』、と」
母さんが、目にもとまらぬ速さで、キーボードをタイプして。
話すように、語り掛けるように。
ぴこぴこぴこ、と。
文章が返って来る。
「え? コンビニが出来た頃からって、そんな前から?」
母さん、驚愕。
「あ、男性用女性用の区別ないなら、男性用かも?」
「なるほど、じゃあ『日本のコンビニエンスストアで
また、ぴこぴこと文章が返って来る。
「やっぱり。女性用はわりと後みたいね……でも、お母さんが高校生の頃にはもう売ってたのね……知らなかったわ」
「そりゃ必要がなければわざわざコンビニでショーツ買ったりしないでしょ」
「そうよね。普通に下着屋さんで買えばいいし、ね」
どういう場合に、コンビニで下着を?
「ほら、ここにも書いてるわ。旅行先に持っていくのを忘れたりとか、緊急時に便利、って」
あぁ、なるほど。
「緊急時、まさにエリ先生みたいな状況、ってことね」
「うんうん」
でも。
「あれ? でも、ショーツはともかく、ブラジャーって……」
「そうね。ブラジャーも売ってるのかしら? えっと『日本のコンビニエンスストアでブラジャーは販売されていますか?』、と」
速い速い、母さんのタイピング。
流れるように、話すように。
回答が返って来る方が、遅いくらい。
「売ってるけど、どこでもって訳ではないみたいね」
「あたしもブラ売ってるコンビニって知らないから、やっぱり珍しい、よね」
それに。
ショーツは折りたたんで小さなパッケージにできるみたいだけど。
ブラジャーは、ノンワイヤーでも型崩れとかしちゃいそうだから、小さくできないし。
サイズもショーツと違ってたくさん用意しないといけないから。
コンビニみたいにたくさん商品を並べるには、不向きな商品、よねぇ。
「あ、でも、ドラッグストアなら売ってるところもあるみたいよ」
母さんがまた、目にもとまらぬ操作で、画面を切り替えると。
「ほんとだ。二十四時間営業のドラッグストアもあるみたいね」
ドラッグストア。
薬局って。
お薬や医療品、化粧品だけでなく、日用品や食べ物、飲み物とかも売ってて、スーパーマーケットみたいなところも多いみたいね。
遅くまで開いてたり、二十四時間営業してたり、コンビニよりも便利、かも?
店舗数は、コンビニよりは少ないから、近くにあれば、便利かもね。
とか。
ノートパソコンの画面に表示された内容を読んでたら。
「それはそうと、エリ先生って」
「ん? 何、母さん」
母さんが画面を切り替えて
「ブラ、無くても大丈夫そうな気が」
「あー……」
それを言っちゃぁ、って。
気も、しなくもなくも。
無い?
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