第216話:救援に向かう金髪子先輩と残された三人



 自宅が火災に遭ったエリ先生からの要請で。


 金髪子先輩に着替えを救援に、とのことで。


「シズさんに準備してもらって、ウチはそれ持って先生のとこまで行ってくるわ」


 と、言って、ひと足早く学校を出る、金髪子先輩。


 話によると。


 下着はコンビニで調達出来た、ってことらしい。


 当面、ホテルで着る私服がいくつかあれば、って事で。


「ミリィのお子ちゃま服で大丈夫なんでしょうか?」

「サイズは確かにピッタリそうだけどね」


 ぱっつん子先輩、おさげ子先輩が心配するのもわかる。


 サイズ的には合うかもしれないけど。


 年齢的なデザイン面で合うとは思えない面も。


 しかし、緊急事態につき。


「背に腹は、ってところじゃないですか。それに、普段着って考えれば違和感は無いでしょうし」


 あたし達に出来る事は他になさそうだけど、ぱっつん子先輩は、まだ。


「ここはミリィに任せたとして、わたくしたちは……」


 そんなぱっつん子先輩に、おさげ子先輩が。


 ぱっつん子先輩の背中をぱんぱん、と、叩きつつ。


「ここで考えてたって何も出来んしとりあえず帰ろ帰ろ」


 立ち上がって、鞄を掲げる。


 でも、まだ未練ありありな、ぱっつん子先輩は。


「でも……」


 立つ気配無く。


 あたしは……。


 おさげ子先輩に倣って、鞄を手に、立ち上がり。


「サクラ先輩、あたしんでお茶でも飲んで帰りましょうよ」


 と、誘ってみると。


「あ、それならわたしも良い?」


 おさげ子先輩の方が先に反応。


 苦笑。


「ほら、行こうサクラ、真綾のお茶飲みに」

「え、ええ、そうですわ、ね」


 やっと。


 教室を後に。


 いつものルートで、あたしん


 東雲しののめ女子高等学校前、徒歩一分弱。


 含む、押しボタン式信号機。


 信号機が無ければ、本当にダッシュで五秒の、通学距離。


 中途半端な時間だったので。


 校庭グランドで部活に励む運動部のひと達を見かける程度で。


 帰宅する生徒は、少なく。


 三人。


 帰宅。


 いや、ふたりはまだ帰宅した訳ではないけど。


 寄り道。


 あたしんへ、立ち寄り。


 慣れた感じですいすいと、リビングの、定位置へ。


 いつもと違うのは、金髪子先輩が居ない事。


 あたしも、いつもの通り。


 キッチンで、お茶の準備。


 お鍋に水を張って、コンロへ。


 火を着けて。


「あぁ……」


 火の後始末。


 ガスの元栓を、確実に閉栓して、とか、とか。


 気をつけなくっちゃ、ね。


 うちも。


 他人事では、無いから、ね。


 電気系統、コンセントとかもチェックした方がいいかも、ね。


 母さんも、少しおっちょこちょいなとこあるし。


 母さんにも注意、しなくっちゃ。


「はい、おまたせしました」


 沸いたお湯をポットに入れて、お茶の葉を持ってリビングへ。


 お茶菓子も、適当に。


 三人。


 お茶しながら。


「失火原因は何だったんだろうね」

「時期的に色々と考えられますわね」


 火元談義?


 火災の原因の、あれこれ。


 逆に考えれば、その原因に注意すれば。


 火災を起こす事も無い、よね。


 なんて。


 放課後。



 放火後!?



 放火も、原因のひとつだけど。


 こればかりは注意しようが無い、か。


 自宅のまわりに燃えやすい物を置かない、とかくらい?



 お茶を飲んで、少し話して。


 落ち着いたぱっつん子先輩と、おさげ子先輩も揃って。


 じゃあまた、って。


 ご帰宅。


 エリ先生が心配なのもあるけど。


 何かできないか、考えつつも。


 自分には、自分の生活を。




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