第207話:富士が峰ったミツキさんの二上山撮影会



 お着換え部屋からリビングに向かおうと、ドアを開けたミツキさん。


 案の定と言うか、おやくそくと言うか。


 過剰に出っ張った後付けの余分なところを、扉にぶつけてしまい。


「ぎゃっ! 痛っ……くない……」


「大丈夫か?」


 ドアの前で立ち止まったミツキさんを即座に気遣う、彼氏山田くん。


「うん、大丈夫でも、痛いって感じてしまうのは何故だろう……」


 身体に直接当たった訳じゃないからねー。


 でも、身体に触れているその延長上からの刺激、感覚、感触が、伝わるから。


「言った通り、でしょ?」

「そうだねー、意識してないとやっちゃうね、これ」

「ずっと着けてると慣れるけどね。今日はお試しだし、気を付けて、ね」

「ほいほい、んじゃ行きますかー」


 三人で、リビングに戻って。


「どやーっ」


 ドヤ顔ミツキさん。


「ぉー」

「おぉおっ」

「すごっ」

「ふわぁぁ」


 さすがの、インパクト。


 リビングで待機していた、面々も、驚愕。


 先に同じものを装着した森本くんや山田くんと違って。


 もともとスリムな女子のミツキさんが装着すると。


 さらには、下敷きになっている標準装備の盛り上がりもあるので。


 盛り上がり具合が、まるで違って見える。


 富士が峰ってしまった感じで、ボーン、ボーンの二上山な状態。


「ふふふ、どぅだどぅだ」


 ミツキさんは、背を反らして、その盛り上がりをさらに強調。


 その状態で、左右に、ゆっさゆっさと。


「揺れはしないのが残念だけどー」


 そう。


 素材が軽くて、ブラで固定されているから。


 本物と違って、揺れる事は、ほぼ、無いのよね。


「でも、いい感じでしょーあそうだ写真撮ってよケンゴ」


 スカートのポケットから携帯端末を取り出して、山田くんに手渡して。


「ほいほいじゃあ、撮るぞ」


「うん頼んだー」


 改めて、ポーズをとる、ミツキさん。


 シャッターの音が。


 カシャ、カシャ、カシャ、カシャ。


「おいちょっと待ておまえら何撮ってんだ」


 山田くんだけでなく、他の面々も、携帯端末を構えていらっしゃる。


「え? ダメ?」


「当たり前だダメに決まってんだろ消せすぐ消せ今撮ったやつすぐに消しやがれ」


 お怒りの、山田くんに。


「あはは、いいじゃん。ネットとかにあげなきゃ撮る分には構わないよー」


 軽い様子の、ミツキさん。


 しかし、山田くんは。


「いやいやミツキ甘いぞそれは」

「だいじょうぶだいじょうぶ。ケンゴの友達でしょ悪い子には見えないしだいじょうぶよー」

「操作ミスとかウィルスで流出とかもあるだろ」

「そかー。じゃあ、首から下で?」

「むぅ……それもヤだけどなぁ、ミツキが撮られるの」

「あぁ……まぁ、うん、そうだね」


 ミツキさんを説得して、さらに。


「って事で、おまえら、撮影禁止な。頼むから、撮ったのも消してくれ」


 半ば命令口調ながら、最後は懇願おねだりするように。


「しょうがないな、わかったよ」

「ほいほい」

「了解、と」


 他の面々も、ふたりのやりとりを聞いて、それに山田くんの懇願おねだりに素直に従って。


 その脇で、レイちゃんが、こっそりあたしに。


(山田くん、カッコイイね素敵な彼氏って感じ)

(うんうん、頼もしいね)

(いいなぁ、うらやましいね)

(う、うん……)


 どっちが? だろう。


 ここは深く聞き返さない方が、無難、だよね。


 そうこうする内。


 ミツキさんがいろんなポーズをとって、それを山田くんが写真に撮って。


「よし、こんなもんか」


 ひと段落したところで。


 ミツキさんが、また、爆弾? 的な発言。


「みんなには後で顔消した画像送ってあげるよー」


「ミツキ!?」


 また驚かされる、山田くんは、でも。


「まぁ……それくらいなら、いいか……オレがチェックして送るから加工は自分でやってくれ」


「はーい。それじゃあ、次の人にバトンタッチだねー。これ、さすがに窮屈で痛くなって来たや」


 うん、無理やりねじ込んでますからね。


 長時間は、無理でしょう。


 男装女子の先輩たちも。


 無理やり抑え込んでるから、半日でもきついっって言ってたから。


 似たようなモノなんでしょうね、きっと。


 そう考えると。


 女装男子より、男装女子の方が、ハードル高い、のかなぁ。


 なんて。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る