第169話:女子校の真実・しの女の疑惑
エリ先生の、大学時代からのお友達。
カナさんの超高級マンションでクリスマスのひと時を過ごし。
「今日はいろいろとありがとうございました」
いや、どこが、ありがたい、の、か?
まぁ、ご飯……ピザやらご馳走になりはしましたが。
コスプレさせられて、おもちゃにされた感も、ヒシヒシ。
とは、言え。
それなりに、楽しむ事はできた、かな。
さすがに。
下着姿を晒される事は回避。
「はぁい、真綾ちゃん、お疲れ様。またねー」
カナさんに見送られ。
「ルミ、ちゃんと安全運転で送って行くのよ?」
エリ先生にも、見送られ。
何故か、ルミさんの運転で自宅まで送ってもらう事に。
「エリと違ってアタシは運転上手いから大丈夫大丈夫」
もう、夕暮れ時なので。
暗くなると、エリ先生の運転が危険、だとのことで。
ルミさん。
「じゃ、行こうか、真綾ちゃん」
「はい」
「行って来るねー」
「はーい、行ってらっしゃーい」
「気を付けて、ねー」
さて。
車は、来た時、エリ先生に乗せてもらったのと、同じ車。
やはりと言うか、カナさん所有のお車、らしい。
今日は、先生たちは夜通し騒ぐ、って事なので。
あたしを家まで送った後は、またここまで戻って来る、と。
走り出した、車内。
「いやぁ、お疲れさん、でした」
「はい、お疲れさまでした」
「ほんと、エリから聞いてた以上に女の子でビックリしたわ」
「あはは、そうですか」
エリ先生は、運転に集中しきりで、会話もままならない面もありましたが。
ルミさんは、と、言えば。
持ち主ではないにせよ、まだ、慣れた様子で。
「声を気にしなきゃ、容姿もそうだけど、仕草とか、完璧と言うか、完璧な理想の女の子、って感じ、かな?」
「あはははは、そうなんですか?」
自分では。
なんか、もう、自然にしてるだけ、なんだけど、な。
「さすがに半年以上、女子校で女子に囲まれて過ごしてますしね」
うん。
これは、大きい。
大きすぎ。
「いやいや、女子ばっかりの方が、ガサツになりがち、だよ、ほんとなら。アタシは高校からずっと女子校だけど、それは、もう、ねぇ」
「そうなんですか?」
そう言えば、先生たちも、女子大、だっけ。
「まぁ『しの女』はお嬢様学校だしなぁ、そうでもないのかなぁ」
「ああ、そうかもしれませんね。他の女子校は知りませんけど」
「普通の女子校なんて、男の目がほとんど無いから、男から見たら驚愕だと思うよ、タブン」
きょうがく?
「女子校なのに
一瞬、ルミさん、キョトン。
からの。
「あはははは、違う違う、共に学ぶんじゃなくて、驚いて愕然とする方のキョウガクね」
「あぁああ、なるほど」
ニホンゴ、ムズカシイ、デース!
「共学の女子は男の目を気にして多少はセーブしてるだろうけど、女子ばっかだとねぇ」
ふむふむ。
でも、そうすると。
あたしが真似をしている女の子の姿と言うのは。
本来の女の子とは、少しかけ離れた姿、なのかしら?
なんて疑問を、ルミさんにぶつけてみたところ。
「ふむ……それはあるかもしれないね。今のしの女も、もしかしたら真綾ちゃん……いや、園田くんって男が居るから、その目を気にして、お淑やかにしてるだけかもしんない、かも?」
ふむふむ。
だと、すると。
女子の恰好をして、女子の仕草を真似ているとは言え。
あたしの中の『男』を認識して、意識されてしまって、る?
逆にあたしは、真似ることに精一杯で、そのあたり、意識してなかったけど。
去年、あたしの居ない完全な女子校の状態でどうだったのか?
先輩や先生、それに、母さんにも。
聞いてみたいところ、だなぁ。
そうこうする内。
「おっし、着いたよー」
その、話題の東雲女子高等学校の、正門前。
つまりは。
あたしの、自宅正面へ。
「はい、わざわざ、すみませんでした、ありがとうございました」
「いえいえー、こちらこそー。忘れ物ない?」
手荷物は、ハンドバックひとつ。
中身も出してないから。
「はい、大丈夫です。それじゃあ」
ドアを開けて、車から降りると。
ルミさんも車から降りて、車体の屋根越しに。
「それじゃ、真綾ちゃん、お疲れ様。メリークリスマス」
「はい、ルミさんもお疲れ様でした。お気を付けて」
押しボタン信号機のボタンを押して、少し。
歩行者用信号が、青になったのを確認して。
「メリー、クリスマス」
ルミさんに手を振って、歩道を渡って。
ルミさんが車に乗り込んで、ウィンカーを出して。
エリ先生にはできなかった、その場での、Uターンをサクっと決めて。
あたしの前を通り過ぎる瞬間。
シートから手を振ってくれてる。
あたしも、手を振り返して。
そのまま走り去る車を、見送って。
「はふ……」
帰宅!
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