玄関ダッシュ五秒の女子高にオレひとり

第147話：下着屋さんで下着を買ってみた

　女性向け下着ショップにて。

　ちょっと騒いじゃったかな？

　店員さんに、そぉっと、近寄られてた。

　そして。

「何かありましたらお声掛け下さい」

　そう言うと、また、すぅっと何処かへ。

　あ、いや、これ。

　店内で騒ぐなよ、って、ことだろうなぁ。

　しまった。

　声質からして、あたしとレイちゃんは男だってバレてるだろうし。

　怪しげな集団として、ロックオンされてる、わね……。

　先輩たちの容姿がまた、不審者状態だもんねぇ。

　唯一、まともなエリ先生が居るとは、言え。

　固まっているとマズいと察したのか、先輩たちは。

「あっちの方見てくるね」

「先生、ウチとあっちの方、見に行こー」

「ちょっと失礼」

　そう言って、散開。

　あたしとレイちゃんのふたりは。

「本当は店員さんに色々聞くのもいいんだろうけど、ね」

「あはは、わたし達の場合は、ねぇ」

　店員さんからしてみたら、文字通り『招かれざる客』に、違いない。

　女の園に紛れ込んだ、異物、と、思われているかもしれない。

　でも。

　だからと言って、排除されては、いない。

　あたしたちの見かけや仕草の事もあるかもしれないけど。

　理解してもらえてる、と、思ってしまうのは思い上がりかもしれないけど。

　ここは、穏便に、ささっと。

　レイちゃんにいくつかおススメしてあげないと！

　と、思って再起動。

　したら、ちょうど。

「そういえば、レイちゃん、夜、寝るときはブラ、どうしてる？」

　目の前にナイトブラがあったので、聞いてみた。

「え、苦しいから、ブラは着けてないよ？」

　やっぱりー。

「そっか、じゃあ、寝る時には、こういう『ナイトブラ』を着けるのがいいよ」

「普通のブラと違うの？　なんかスポブラみたいだけど」

　あ。スポブラは知ってるんだ。

「形は似てるけど、ちょっと違うのよね」

　などと。

　今度は、小声で、ゆっくりと、ナイトブラの効能について解説。

「ふむふむ。でも、それって、中身が本物の場合、よね？」

　う。

　おっしゃる通り。

「あくまでも、女の子を模して、女の子になりきるための、って感じ？」

「真綾ちゃんはそこまで考えてるのね……わたし、まだまだだったかも、しれない……」

　ナイトブラを手に、少し思案顔のレイちゃんは、すぐに。

「わたしももっと研究しないとだね。このナイトブラは買うとして……」

「うん、じゃあ、普段使いのおすすめブラもいくつか揃えよう」

　そうして。

　あたしも欲しかった、普段使い用のブラジャーを探して。

　値段、機能、肌触り、などなど。

　検討した結果、とあるメーカーさんの、比較的お安い目の子にたどり着いて。

　レイちゃんは、柄物で、わりと濃い色が好みみたい。

　あたしは、学校にも着けていけるように、白と、淡い色のもので。

　お会計の頃には。

　先輩たちと先生は、すでにお店の外で待機。

　あたしとレイちゃんがそれぞれお会計、なんだけど。

「サイズはこちらで大丈夫ですか？　フィッティングはよろしいですか？」

　などなど。

　店員さんと、少々、恥ずかしいやりとりもありつつ。

　でも、あたしたちの他にも、あたしたちみたいなお客さんがよく来るんだろうか、って思っちゃうくらい。

　深く追求されることも、なく。

　会計を終えて、包装してもらった商品を受け取りつつ。

　思い切って。

「えっと、あたしたちが男って、気付かれてました？」

　聞いて、みた。

「あ、はい、そうですね、お声で、そうだろうな、とは」

　ですよねぇ。

「でも」

　？

「ショッピングをされてる雰囲気は完全に女の子みたいでしたから、全然、違和感無かったですよ？」

「そ、そうですか……お邪魔しました」

「いえいえ、またのご来店、お待ちしています、ね」

「あ、はい、では」

　ふはぁ。

　こうして、下着屋さんを後にして。

　先に出て待ってる先輩たちと先生の、元へ。

　疲れたぁ……。