第135話:男子でもなく女子でもなく



 真新しい、制服。


 スラックスタイプの、ようは、男子用の、制服。


 に、しては、可愛すぎるかな?


 校長先生、いわく。


「正式には来期……来年度からの採用になりますが、皆さんには先行テストケースとして着用して頂きたいのです」


 手渡された、その制服。


 まだ、ビニールで包装された、新品。


「真綾ちゃんのサイズは把握済みだったから~、先に作っちゃったの~」


 そっか。


「ちなみにスラックスだけど~、女子用だから~、女子として着用してね?」


 え?


「どゆことですか?」


「そのまんまよ~。で、そのままこの新しい服を着てもらいたいの~」


 男子用とちゃうんかいっ!


 思わず突っ込みそうになるけど。


「男子用って訳じゃないんですか?」


 やんわりと。


「そうよ~、あくまでも~、女の子が着る、スラックスタイプ、だから~」


 あら、そうですか。


 え。


 でも、そうすると。


 来年度の、男子の募集は?


 そんな疑問もあるけど、先輩たちが。


「えー、男装しちゃダメですか?」

「男装できると思ったのに」

「ですわですわ」


 ブーイング。


 でも、校長先生は意外にも。


「それについては、特別に許可する方向で調整したいと考えています」


 との、ことで。


 大喜びの、先輩方。


 そこまでして男装したいものですかね?


 女装してるあたしの向こうを張ってる?


「みなさんの分も作りますけど~、その前に~、採寸、させて下さいね~」


 雪江さんがスーツのポケットからメジャーを取り出してるけど。


 先輩たちは。


「採寸するなら、男装状態でした方がいいような気がするね」

「そうだねー、肩幅とか、変わっちゃうもんねー」

「腰の位置も変わりますからね」


 こだわり?


「んー、そうすると~、採寸は~、日を改めますか~?」


「いえ、すぐいけますよ」

「持って来ててよかったね」

「どこでお着換えしましょうか」


 え。


 持って来てるのね、男装用グッズ……。


「この応接室で……暗幕を閉じて、鍵をかければ大丈夫でしょう」


 と、言うことで。


 一旦、先輩たちを残して応接室を出て、先生たちとあたしは校長室へ退避。


 先輩たちは応接室でお着換え、あんど、採寸。


 女の子同士だし、幼馴染だし、三人まとめてでも、問題ないとのこと。


 いいなぁ。


 あ、そうだ。


「先生、あたしもこれ、試着してみていいですか?」


「そうですね……せっかくですし……」


 と、言うことで、先生方には職員室に退避していただいて。


 校長室で、お着換え!


 なんだそれ。


 言われた通りに、下着とかは外さず、女子の状態で、ね。


 うっ。


 ベルトが無いから、スラックスがちょっと緩い……。


 これは、ベルトはオプションで別途用意しないといけないわね……。


 姿見が無いから、ちゃんと着れてるか確認できないけど。


 いったん、着用した上で、先生たちを呼び戻して。


「どう、ですか?」


 見ていただく。


「おお、園田さん、いいよ、いい感じ」


 エリ先生、絶賛。


「ええ、これは予想以上ですね」

「はい、校長、快活さの中にも淑やかさがちゃんと残っていますね」


 校長先生も教頭先生も、絶賛?


 わーい。


「エリ先生、写真、お願いします」


 携帯端末をエリ先生に差し出すと。


「了解了解」


 嬉々として、受け取ってくれて、ぱしゃり。


 以前に、撮影してもらった時と同じように。


 同じようなポーズで、何枚か撮り終えて。


 携帯端末を返してもらって、写真をプレビュー。


 ナンダコレ。


 男でもない、女でもない。


 不思議な、自分。


 でも。


 悪くない、かな?



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