第129話:出し物を決める抽選会



 『東雲女子高校文化芸術祭』


 一般的にイメージされる『お祭り』とは異なり。


 生徒目線で見ると、味気ないとしか思えない、企画イベント


 しかも、体育大会が終わってすぐの中間試験のあと、矢継ぎ早に開催される、らしい。


 これは結構、忙しい!?


 さらに。


 授業終わりのSHRショートホームルームで。


 クラス委員長さまが。


「明日のLHRロングホームルームで文化芸術祭の出し物を決める抽選会が行われます」


 へー。


 出し物って、自分たちで何をやるか決めるんじゃなくて。


 抽選で決めるの、ね。


 これって、どうなの?


 生徒の自主性がー、とか。


 クラスの協調性をー、とか。


 完全にすっ飛ばしてる気が、するんだけど……。


「で、クジを引くクラス代表を決めたいと思います……が、ここは勝利のの園田さんにお願いするのが良いと思うんだけど、どうかな?」


 へ?


「異議なし!」

「良いと思うー」

「園田さんお願いっ!」


 満場一致。


 いや、満場一致じゃない。


 あたしの意見は!?


 と、言うか、あたしの意志は!?


「ね、園田さん?」


 いやいや、いやいや。


 思わず立ち上がって抗議したくもなるけど。


 ちら、っと、教室の隅でパイプ椅子に足を組んで腰かけて、腕組みする担任の先生に助けを求めようと、ちらっと見ると。


 こちらに向けて、親指を立てて、ウィンク。


 ぉおぃぇえ。


 うちの担任、こんなお茶目な人だったっけ……?


「大丈夫よ、園田さん、クジを引くだけだし、何が当たっても文句は言わないから、ね?」


 ぅう。


 クジを引くだけなら……イヤだとゴネても仕方ないし。


「ま、まぁ、それなら……」


 でも、責任重大?


 そんな訳で、翌日。


 中間試験期間が始まる直前のLHRロングホームルームで。


 『出し物を決める抽選会』なる行事が行われるとのことで。


 全校生徒。


 各学年四クラス、かける三学年で十二クラス。


 約四百名弱が講堂と言う名の体育館へ集まって。


『それでは、文化芸術祭のクラス出し物の抽選会をはじめます』


 って。


 ちょっと待って。


 この人数の前で、クジを引くの?


 ひぃ……。


『じゃあ、クジを引く順番を決めるクジを引いていきますねー』


 生徒会長さん、自ら。


 壇上で、ひとつの箱に手を突っ込んで、がさ、ごそ。


 その模様は、別の生徒会役員の人が、ビデオカメラで撮影。


『さて、最初のクラスは……』


 リアルタイムで、講堂正面のスクリーンに生徒会長の手元が映し出されて。


 取り出されたカードがズームされると同時に、生徒会長がそれを読み上げる。


『一年一組です!』


 ふぇええ。


 いきなりですかー。


『一年一組の代表者は上がって来てねー』


「ほら、園田さん、出番だよ」


 後ろから、つんつん、されて。


「う、うん、行ってくる……」


 列の間を抜ける時。


 クラスのひとたちから、優しく肩を叩かれて。


「がんばって!」

「頼んだわよ!」


 って。


 送り出されて。


 講堂の前方、壇上へ向かう。


 階段を昇ると、生徒会役員のひとりが、あたしを案内してくれて。


 生徒会長の立つ、中央へ。


 あたしの姿を観止めた生徒会長は。


『おっと、君は……みんな知ってるとは思うけど、一応、学年クラス名前、お願いできるかな?』


 少しざわめく、講堂。


 壇上から見下ろすと、ずらぁ、と、並んだ、しの女の制服の団体様。


 こちらを見つめて、ざわざわと。


 うぅ……。


 生徒会長のおっしゃる通り、ある意味、有名人だもんなぁ、あたし……。


「えっと……えっと……一年一組、園田、です……」


『うんうん、おっけーおっけー。じゃあ、この箱の中から一枚、引いて』


 ふたつある箱の、ひとつ。


 生徒会長さんが示した箱の上から手を入れると。


 カード? みたいなものが複数、入っていたので、それを。


 がさがさ、と、少しかき混ぜて。


 うぅ。


 どうなるか、わかんないけど。


 これっ!


 って感じで、一枚、手に持って、抜き取ると。


 その手元にカメラが近付いて。


 あたしは手元のカードよりも、後ろにある大きなスクリーンの方を見ると同時に。


 講堂内が、どよめく。


 そこに映し出されていたのは……。




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