第127話:先輩、お借りします!



 借り競争、ならぬ、借り競争。


 ランダムに指定される、学年・クラス・出席番号のヒトを探して、連れて、走る。


 なんだそれ。


 まぁ、借り物競争の結果的に、そういった『人』を連れて来るケースもあるかもだけど。


 そもそも、人に限定したのって。


 どういう意図が?


 なんて思ってしまうけれど、普通に考えたら。


 こういう大会自体が、学年やクラスを超えた交流、なんて意味もあるんだろうなぁ。


 考えすぎ、かな?


 とか、なんとか。


 そんなレースで、福富さんが二位入賞して、わが一年一組の総合順位も二位。


 この後の成績次第では……。


 それが。


 第二レースで。


 総合順位に影響の無いクラスが上位でゴールして、総合一位二位のクラスが、のきなみ敗退した結果。


「園田さーん! がんばってーっ!」

「園田さん! 頼んだわよーっ!」


 うわぁあああ。


 一年一組のみんなが、応援してくれてるけど。


 あたし?


 あたし? 責任重大!?


 えぇえええ?


 みたいな。


 うぇぃ。


 がんばるって言っても。


 うん。


 運。


 いや、洒落じゃないけど、こればっかりは、運、だよねぇ。


『第三グループのひとはスタート位置に着いてくださぁい』


 うぅ、その、運命の、時。


 やって参りました。


 もう、これは。


 なるように、なるるん!


 と、言う訳で、スタート位置。


 ずらり並んだ他の選手五名。


 うわぁ、なんか、おっきい人ばっかり……。


 ぱっつん子先輩も、わりと大きいからなぁ……。


 あたしが一番ちっちゃいんじゃない?


 スタートすると、その通り。


 おそらく、運動部のひとたちばかりなのか。


 速いっ!


 正直、あたしが三つの封筒を取り終えるよりもずっと速く。


 確認ポイントで封筒を開封している他の選手たち。


 遅れてあたしも到達して、あわてて封筒を開ける。


「二年……二組……八番……」


 うぅ。


 一年ならまだしも、よりによって、二年生の先輩。


 ウダウダは言ってらんない、か。


 二年二組の席を目指して、ダッシュ!



 こんなこともあろうかと。


 あらかじめ席の配置を記憶してたのよ。


 おそらく、この競技のため? だろうか。


 校庭の中央のトラックの周囲に配置された各クラスの席は。


 一年の隣が二年だったり、三年だったりと。


 しかも、クラス番号の順番ではなく、ランダムに配置されていて。


 二年二組は、一年一組のちょうど向かい側。


 運よく、確認ポイントからも、近い。


 その席の前に立って、大声で。


「二年二組、出席番号八番の先輩! お願いします!」


 すると。


「え? 園っち? ウチ?」


 立ち上がったのは。


 見慣れた?


 お馴染みの、金髪。


「ミリ先輩!?」

「おぅ、二年二組出席番号八番、小坂ミリィたぁ、ウチのコトだ、ぜー」


 いや、ここで男子ムーブはいいですから……。


「先輩! 来てっ!」

「むぅ、しょうがねぇなぁ。可愛い後輩のタメだ、ヒト肌脱いでやらぁ」

「いいから、来てっ!」


 前に出てきてくれた金髪子先輩の手を掴んで。


「先輩、お借りしまぁす!」


「ちょ、ま、あぁああああ」


 引きずるように。


 ダッシュ!


 でも。


 金髪子先輩の運動神経は、そこそこ?


 引きずるように走ってたのが、いつの間にか逆転して。


 あたしが。


「ちょ、まっ、ミリせんぱぁああい!」

「ほら、急げ、園っちっ!」


 ぐえー。


 速い、速いわよー、先輩っ!



 でも。


 そんな金髪子先輩のおかげもあって。


「はいっ! いっちゃーく!」


「ぜぇぜぇ……」


 うぅ。


 全力ダッシュは五秒までにしてぇえええ。



――――――――――――――――――――――――

<作者あとがき>


 夏休みスペシャル!?

 先日、数日すっ飛んだ分、連投ぉ~。

 したら、色々ミスってしまいました・・・すみません><

 微妙に修正しています。




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